FPM田中さんオススメの麺類TOP5を聴いて思い出したことなどメモ

TBSラジオのTOP5のpodcastでFPM田中さんの無性に食べたくなる麺類TOP5をやってたのです。以下ランキングを書き起こすと
第5位は名古屋の宮内「牛コロうどん」http://tabelog.com/aichi/A2301/A230110/23040430/
第4位は沖縄のまるやす「軟骨ソーキそば」http://okinawaclip.com/ja/detail/692
第3位は神戸のえみちゃん「そばめし」http://tabelog.com/hyogo/A2801/A280103/28024273/
第2位は宮崎の重乃井「釜揚げうどん」http://tabelog.com/miyazaki/A4501/A450101/45000034/
第1位は京都の中華のサカイ「冷麺」http://www.reimen.jp/index.html
とのこと。田中さんはうどんについては「大阪でも讃岐でもないうどん」が好きとのことで、わりかし柔らか目のが好きらしい。なるほど。自分は、というと幼いころから慣れ親しんだのはスーパーで売ってるソフトなうどんですね。それをシマヤのうどんスープ粉を熱湯に溶かしたところに投入、というパターンが定番。土曜や日曜のひとり昼飯のときに作ってよく食べた。そういうソフトうどん麺(もしくは昔のどん兵衛の平たいペラペラした麺)が自分のうどんイメージだったので、中学か高校生の頃ぐらいに冷凍の讃岐うどんをはじめて家で食べたときの衝撃たるや。びっくりしたな。讃岐風のセルフうどん屋が流行りだしてからは、もっぱらソレで(丸亀製麺など)。あとうどんで衝撃だったのは、伊勢に行ったときにたべた伊勢うどん。なんというブニブニとした食感、と驚いた。まあでも今は普通に讃岐風が一番美味いと思うかなぁ。あとはどん兵衛も結構好きです。
あと、そばめしについては、これ流行る前に自分で土日の昼飯で作ってた。十代の頃、異様に食欲が増してたから、一玉のソバで作る焼きそばでは物足りないので、残ってる冷やごはん一膳弱くらい投入してざくざくと刻むように混ぜてはソースをとぱとぱと投入して混ぜる。そら太るがな。神戸の長田が発祥、などといわれてるけど、近畿の焼きそば文化圏ではお店や家庭でそういうオリジナル猫まんま的発想でそばめし的なのが昔から作られてたのではないかな、と思う。田中さんが紹介してたえみちゃん、というお店は昔住んでた家から徒歩圏内だけど行ったことないな。駅から微妙に遠くて行くには結構ハンパな場所。ラジオでも「じゃりんこチエに出てくるような店」と紹介してたけど、たしかに高級ではないほうの意味で敷居が高い感じがあるかも(地元の人しか入りにくそう、とか)。でも近辺に行くことがあれば行ってみたいかなぁ。閉まるの早そうだけど。
冷麺といえば『美味しんぼ』の名(珍?)エピソード思い出すな。海原雄山が「冷やし中華なんざ中華料理じゃない、邪道邪道」みたいなこと言ってて。でも自分は冷やし中華、大好きです。ラジオではサカイの冷麺はお取り寄せもできて、お取り寄せの味がちゃんと店で食べるのと同じ味、ってことを言っておられた。でも京都に遊びにいったときについでに行ってお店で食べてみたいですね。

カナザワ映画祭2015に参加した記録日記(映画9本+トーク2本)

思いかえすと2011年の「フィルマゲドン」から毎年行ってて今年で5回目の参加となったカナザワ映画祭。会場が都ホテル地下セミナーホールに変わってからは都ホテルに宿を取っていたのですが今年は北陸新幹線開業の影響もあってか宿の予約状況がすごい!との情報が。映画祭のテーマ発表を待っていては宿が取れないかも、ということでテーマ発表前の段階で近くのホテルを押さえました。そして発表されたテーマは“田舎ホラー”“彼方より”あとは“爆音メル・ギブソン”“爆音カーペンター”です。楽しみしかない。そうして列車も指定席を押さえ(これも例年以上に席が埋まるのが早かった)3泊4日の映画漬けの秋の連休がスタートしました。
9月19日(土)
サンダーバードに乗車して金沢へ。しかし途中、長岡京で人身事故が発生…しかしこれもやむなし。列車が動くのを待つしかないわけで、結局1時間遅れで金沢着。一本目に予定していた『山の一家』の前売り買ってたんだけど、まぁ映画祭へのお布施、ということにして、続くプログラムの悪魔のいけにえ4K版からスタート。あえてのこだわりのモノラルでの爆音上映。ちゃんと観たのは初めてだったのですが、これが滅法面白いしちゃんと怖い。や、思いかえすとそんな直接的な残酷描写ってないんだ。でもちゃんと、ものすごく怖いし、しかもちょっと笑えるし、セットや小道具も最高だし、レザーフェイス、コック、じいさま、ヒッチハイカーの殺人一家ももちろんだけどフランクリン&サリー兄妹らも素晴らしい。爆音上映の威力がOPのラジオの音が聞こえるところから発揮されまくってて痺れました。続いて、カーペンターの要塞警察爆音上映。これまたおもしろい。アイスクリームマンのくだりとかも最高だな。何年か前にTVでやってた『アサルト13』っていうリメイク作品がつまらなくて途中で観るのやめてしまったのだけど、カーペンターのは短い尺でテンポよくどんどん進むし気持ちいい。で、このカーペンター入魂のスコアが今回の映画祭の幕間でずっと流れてて、すっかり映画祭のテーマ曲みたいになってました…いまも脳内で響き渡ってる…

この日の食事:昼は駅弁、夜は回転寿司(@すし玉)

要塞警察 アサルト・エディション HDリマスター版 [Blu-ray]

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9月20日(日)
この日は『ブラック・エース』からスタート。リー・マービンジーン・ハックマンらの主演映画。これはたしかに田舎ホラー。流麗な音楽が流れるOP、それはソーセージ加工工場で人肉ソーセージを作ってる過程なんだな。シカゴの都会代表リー・マービンvs田舎代表ジーン・ハックマンの対決の中に『キャリー』以前のシシー・スペイセクが!若くて普通にかわいい役でびっくり。それにしても途中で乳首すけすけのシースルードレスでディナー食べに行くシーンとか、いったいなんなんだ。サービスショット?や、そういや『悪魔のいけにえ』でもサリーを捉まえて家に運ぶときに、コックがわざわざ小屋の電気を消し忘れてたのを消しに行くシーンとか、ムダに思えるんだけど、なんかうまく説明できないけど、このシーン要るわ、と思わせる余剰の部分、みたいなのが映画には必要だな、って思ってみたり。続いてジョン・ヴォイトバート・レイノルズらが主演の『脱出』爆音上映。途中で出てくる衝撃的シーンもすごいのですが、ジョン・ヴォイトバート・レイノルズの関係性にしてもどこかしら“ブロークバック”感があってですね…。映画としてとてもおもしろいし、異なる秩序の共同体*1に住まう人々とは安易に分かりあえない感(バンジョー少年とのくだりとか)も空恐ろしい。続いては平山夢明先生と牧野修先生のトーク。田舎ホラーというテーマながらどんどん逸れて、平山先生のインド話など…覚えてる印象的ワードは“インド・アイ”“お薄ちゃん”ですね。続いて中国大陸の映画、『無人区』爆音上映。これは観たことある人出てるなと思ったらホアン・ボーさん。結構メジャーな人が出てます。そして中国大陸のロケーションの物凄さ、これは『マッドマックス怒りのデスロード』の撮影候補地にあがったとかなんとか…それも納得の荒地です。小道具を使って諸々の伏線を張っては律儀なまでにすべて回収していくし、バイオレンスも車のクラッシュも満載のエンタメ作品、大満足です。大陸のロケーションの抜け感、というのか、それがものすごい印象的でした。この日はぶっ続けで観たので体がガチガチになりましたね…
この日の食事:ホテル朝食、昼は駅にあるゴーゴーカレー、夜は近江町市場の近くでハントンライス
脱出 [Blu-ray]

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9月21日(月)
この日はアポカリプト爆音上映からスタート。事前情報でオチまで知ってた上で臨んだのですが、それでも圧倒されてしまった傑作でした。ディテールやちょっとした演技やエピソードの細かい演出が素晴らしい。村の襲撃のくだりやらマヤの神殿での文字通り「心臓を捧げよ!」や首コロコロなど、見せ場もすごい迫力です、凄いなメル・ギブソン。続いて宇多丸さんと高橋ヨシキさんのトーク宇多丸さんの『アポカリプト』弁護士ぶりがすごかったし、間合いを開けずオーディエンスが飽きないようになめらかに話す様にさすがプロだなぁ、と思ったな。あと客席からの質問で「映画を観ながらメモを取るんですか?」の問いに「絶対それはしない、映画に集中したいからそれはありえない」っていうのが、なんかよかった。食事等でインターバルとって、この日の最後は『パッション』爆音上映です。これまたよかったんだ、ただただ拷問されて、いたぶられてるだけの約2時間…なんだけどなんでこんなに集中して観られるんだ?メル・ギブソンは人としてはどうか、と思うようなエピソードだらけだけど、映画監督しては天才的としかいいようがないな、と思いました。
この日の食事:ホテル朝食、昼は近江町市場で海鮮丼、夜は金沢料理
アポカリプト [DVD]

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パッション [DVD]

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9月22日(火)
さてこの日は朝イチの上映から参加。クライヴ・バーカー監督の『ミディアン完全版』爆音上映です。夜の種族たちが築きあげた地下世界。いまなら結構CGでやっちゃうようなところが造形の特殊メイクでやってて(回顧野郎といわれても仕方ないけど)その質感、実体感がいいなぁと思う。コマ撮りまで駆使してますからね。クライヴ・バーカーは「おもいっきりやっていいよ」と言われて嬉々として監督したのかなぁ、などと。嬉々として、といえばクローネンバーグの嬉々として演じてる殺人鬼っぷりもよかったですね。それにしてもだいぶん近視の度がきついみたいだったな。つづいてはジョン・カーペンター『マウス・オブ・マッドネス』爆音上映です。これ、すっごいおもしろかった!こういう入れ子構造とか世界観ってある意味古典だし、それこそ中二的発想ぽいところあるから映像化するにしても超絶しょうもない「くうそうのおはなし」になりかねない。それがちゃんと面白い作品になってる。しかもラストのサム・ニールのポップコーンかかえての泣き笑いみたいな顔の秀逸さったら。
この日の食事:ホテル朝食
ミディアン [DVD]

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マウス・オブ・マッドネス [Blu-ray]

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そうして無事帰阪。でも映画祭は明日まで続いてるし、本当は今日の『ブロブ』も『霧』のモノクロ版上映も明日のトークも『SF/ボディスナッチャー』も観たかった!でも「もっと観たかったな」と思って帰るくらいがいいのかも…来年もまた秋に金沢に行けるといいな、と思いつつ、日記終了。本当、今年観た映画はすべてハズレ無し、おもしろかったな。映画祭でお会いした方々ありがとうございました、そしてかなざわ映画の会の皆様ありがとうございました、来年もよろしくお願いいたしますm(._.)m

*1:なんとなく思い出したのは『ウィンターズ・ボーン』みたいな世界

今夏の長距離踏破女性映画頂上決戦 『奇跡の2000マイル』『わたしに会うまでの1600キロ』

まずはミア・ワシコウスカ主演の『奇跡の2000マイル』
実話ベースであること、ミアちゃん主演であること、オーストラリア踏破らしい、というくらいの情報で観に行きました。これが期待以上にすばらしかった。
・自然がすばらしい 

中盤くらいまではサバンナ、というのかちょっとした草木は生えてるゾーンを行くのですが、「ハイ、ここまでサバンナ、ココからは砂漠」みたいなポイントがありまして。そのさまを表すのに空撮で大地を水平移動しながら撮るだけ。それですごい伝わっちゃうのですね。セリフって思い返すに少ないんだ。でも映像が雄弁に語るのです。また広大な水平線の向こうからやってくるのは、人?ラクダ?みたいな美しい撮影に『アラビアのロレンス』を思い起こす。
・動物がすばらしい 

相棒は犬のディギティ。この子がミア演じるロビンと心通いあったパートナーであることがひしひしと伝わるんだ。かわいいし頼れる。あとこの映画をみたらその印象も大分変わるかもしれないのがラクダ。いやー、去勢してないラクダって、すごいな!野良ラクダで発情してるやつは本当に凶暴で危険。遠い地点でまるで点のような大きさだったのがヨダレをまき散らしながらトットッと近づいてくる映像を観せられると、本当に生命の危険を感じるレベルでヤバいぞ、と思った。
・ヒロインがいい

ミアちゃん演じるロビンはなんのためにそんな旅をするのか、明確な目標や夢や自己実現、みたいなことを語らない。それがいいんだ。きっと彼女自身にも「○○のために、砂漠を横断しよう」ってのは語ることはできなかったんじゃないかな。言葉にした瞬間、物語が生まれてしまう。彼女はそういう物語化を避けようとしている。ただ、砂漠の生き物であるラクダ、ディギティとともに砂漠を横断したい!という思いがあるだけなんじゃないかと。もちろん、そんな過酷な旅をしようとするからには、彼女の人生におけるいろんな出来事や人間関係における煩わしさから離れたい、などということの集積から契機の芽がいろいろ芽吹いたってことなんだろうけど、それらのいくつもの芽吹きをひとつの物語(ストーリーライン)にするのはいかにも陳腐だ。この映画ではセリフで人生を語ることや意味付けすることが少ない。それがいかにも実話の、またロビンという女性のパーソナリティについてリアリティを感じさせてよかったな。あと、ミアちゃんの演技もすばらしくて、砂まみれで汚れて、下着だけの姿(そのパンツがまた砂まみれで汚い)で、でも個性的なファッションが素敵で、とても魅力的だった*1
エンドロール、予想通り実際のロビンさんの写真がでてくるのだけど、それをみるとやはり感動する。そしてミアちゃんの演技は実際の彼女に負けてないな!という思いもさらに強くなった。人生は簡単じゃない。旅も自然も過酷だ。道中出会う人もいい人ばかりじゃない*2けど、すばらしい人にも会える(アボリジニのエディ最高)、耐え難いほどの悲しみにも遭遇するが、信じられないほど美しい光景にも出会う。観ている自分も、そんなかなしみやうつくしさを体験できるような映画でした。

Inside Tracks: Robyn Davidson's Solo Journey Across the Outback

Inside Tracks: Robyn Davidson's Solo Journey Across the Outback

続いてこちらも実話ベースの『わたしに会うまでの1600キロ』
原作では1995年に行ったトレイルなんだけど『奇跡の2000マイル』の1977年設定とあまり変わらないような印象をうけた。それは使われてる音楽のテイストが70年代っぽいからかな。そう、ホリーズの音楽が流れたり、スティーヴィー・レイ・ヴォーンの音楽を使ったり、あえて舞台の年代をすこし前にしてるような印象。しかしこの音楽の使われ方やチョイスがかっこよくてセンスいいんだ。主人公シェリルが、自分の“間違ってしまった人生”をトレイルの道中思い起こしつつ、生まれ変わろうとする、という回想形式の映画の見せ方としてうまいし、リース・ウィザースプーンも魂を込めた演技でよかった。
けど、この映画は“主人公が過酷なひとり旅をする理由”がすごくはっきりしている。主題がはっきりしているから、映画は最初から最後までつらぬく一本の軸があって安定しているし、回想がちょこちょこ入っても混乱せずとても整理されているので明快に理解できるし、ラストにいたって成長、変化した主人公の気持ちよさを共有し、カタルシスを得られる。でも、トレイルの途中途中でアメリカの超有名詩人の詩のフレーズを書いて「Frost & Cheryl」などと署名しているところに、なんだか自意識、というか自己演出、というかそういうものもちょっと感じてしまう。結局、著名な詩などから雰囲気のある言葉をチョイスしているようなところが、ドラマティックに映画化されているなぁ、と*3。そこでちょっと入り込めなかったかなぁ、ミアちゃんの映画を観たところだったからその対比が働いたんだろうな。でもとてもいい映画だし、ローラ・ダーン演じるお母さんが、もう、最高すぎて。演出もうまいし、アルパカ*4が現れるシーンもどこか幻想的ですごくよかった。そして、トレッキングシューズはREIのを買おう、と思いましたよ*5

わたしに会うまでの1600キロ

わたしに会うまでの1600キロ

*1:実際のロビンさんの写真をみると、かなり忠実に再現しているみたいですね

*2:というか観光客マジ最悪:自分も気をつけなぁ、と思った

*3:原作があるから原作どおりといわれればそれまでなんだけど

*4:だと思うけど違う動物かな?

*5:トレッキングシューズ買う機会がこののち訪れれば、の話ですが

I am a witness of『Mad Max 怒りのデスロード』 Screaming “Mad”上映@塚口サンサン劇場

今年で62年目になる老舗の映画館、塚口サンサン劇場。4スクリーンあって話題の大型新作&ちょっと前の話題映画をかける二番館的役割のある昔ながらの映画館。塚口といわば微妙な場所で、10分ちょっと電車にのって東にいけば梅田、西に行けば神戸に出られるゆえ、地元映画館としては集客が難しいところだと思われるのだけど、数年前から、ユニークな企画上映をするようになった。「この映画なら電車にのって足をのばしてでも塚口まで観にいこか」というようなラインナップで、映画館スタッフがいかにも映画好きなんだろうなと思う。自分もたまに足をのばして出かけてました。ここ2年くらいは、『パシフィック・リム』激闘上映やインド映画のマサラ上映なんかも話題になってました。(詳しくはこちらを→東京がシネマシティなら関西にはサンサン劇場がある! イベント上映を「アイディアと手作り」で乗り切る“期待の映画館”の舞台裏
そうして今年、サンサンが“あの”話題作を何らかの形で企画上映してくれるにちがいない、と(ごく一部で)期待高まるなか公式ツイッターがつぶやく


このツイートが投下され、キネプレの記事にもなるとかなり反響があったようで、当初は劇場売りも予定していた前売りはぴあでの販売のみに切り替えられました。で、いざ販売されるとわずか4分で完売との報が。そんなチケット争奪戦を経て、行ってきましたサンサン劇場。はたして塚口のヴァルハラの門が開かれたのか…?

告知から上映までにプロの特殊メイクスタジオKID'S COMPANYさんによる特殊メイクブースの設置や南堀江のライブハウスからの音響機材提供によるV-RAMA方式上映、マッドマックスコンベンションにも参加したV-ZONEの方々の参加決定など続々決まる(詳しくはこちらの記事)。この上映を盛り上げたい、と思ったプロの人たちが名乗りを上げたんだろうな、と思った。
せっかくの機会だし、と特殊メイクブースで焼印してほしかったけど、1時間ほどまえに「締め切りました!」とのツイートが。晩御飯を食べて劇場に着くと全身コスプレの人から、一部コスプレの人たちがたくさん。20時に開場し、席につくとみなさん紙ふぶきやクラッカーの準備にいそしむ。事前のツイートで知ってたけどウーファーが増設されてるのを実際に見るとアガります。
館長が注意事項を言うため登場するとわきおこる館長コールとV8のポーズ。つづいてV-ZONEの方々が登場、みんなイモーターン!と叫びつつV8ポーズ、クラッカーが鳴り響きます。

映画泥棒の音楽にすら拍手でノッていく観客。MAD MAX仕様のワーナーのロゴが現れると大拍手で歓声。こんな調子で2時間持つのか…?
イモータンが現れると「イモーターン!」とウォーボーイズと一緒に声を上げV8ポーズっていうのは想像できたけど、これ以外は一体どんな感じになるのかな、と思ってましたが、静かなシーンはやっぱり見入るのだけど、銃撃やらカーアクションのところは大盛り上がり。何度も観てる人がほとんどだろうから、銃声のタイミングがわかってるので、みんなそれにあわせてクラッカーを鳴らす鳴らす。各キャラが登場したときに飛ぶ声援は歌舞伎の掛け声的な、待ってました!という感じ。武器将軍も大人気だし、人食い男爵a.k.a.乳首男爵が出てきたときも乳首いじりにツッコミが入る。予想以上にスリット兄さんやリクタスへの声援も多かったな。途中フュリオサとマックスの格闘シーンは「フュリオサ!」「危ない、うしろ!」「がんばれー」と、や、もう皆どうなるか知ってるのにすごい声援でクラッカーも銃撃にあわせて鳴り、タイコの音にあわせて思わず足を踏み鳴らす。
砂嵐に突っ込んだ瞬間紙ふぶきが舞う。そしてみんなが叫ぶ「what a lovely day!」。沼地を抜けたら大拍手に紙ふぶきと歓声が沸き起こる。クライマックス、フュリオサの「Remember me?」からのイモータンが絶命する瞬間の盛り上がりもすごい。気胸で意識を失いかけるフュリオサを呼び覚ますため輸血し、「呼びかけろ」とワイブズたちにいうと客席からも「フュリオサー」との声がとぶ。ラスト、シタデルに帰ってきて、群衆の中でフュリオサに視線を送るマックスの男前さに5回目の鑑賞にして改めて気づき、感動して自然と拍手をする。この映画の主役はたしかにマックスなんだと実感した。暗転し、“ Directed by George Miller ”のクレジットが出たとき「ジョージ・ミラー監督、こんなおもしろい映画をありがとうございます」という気持ちに改めてなったな。ほかの観客の方も同じような思いなのか、大きな拍手がわきおこる。
一部でさんざんに言われてたMAN WITH A MISSIONさんの日本版エンド曲もすごい盛り上がってておもしろかった*1
ロッキーホラーショー』の踊ったり歌ったりいろいろする方式の上映も観たことあるんだけど、そのときが初見だったし、上映前のレクチャーを受けて「この場面ではこうやって、ここではこうやるんですよ」というのが“お約束”として覚える感じで、なかなかハードル高かった。今回は自分が何回も観てて、とくにお約束化してない映画だから自然といろいろの楽しみ方ができてよかったな*2
それにしても、たのしくていい上映でした。スタッフの皆様と劇場にも感謝感謝。下に引用したサンサン劇場さんのツイート、本当これにつきる、みんないい顔してんな。
「ぴあ」のfacebookにあがってる当日画像https://www.facebook.com/piakansai/posts/945631898808836
Screaming "MAD"上映についてのtogetterまとめhttp://togetter.com/li/863892
※イベント名の元ネタ、スクリーミング・マッド・ジョージさん、今はどうしておられるのかな、とふと思ったりもした。
メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロ-ド

メイキング・オブ・マッドマックス 怒りのデス・ロ-ド

*1:もともと自分はIMAXで本国版のエンドロールも観てたし、MAN WITH A MISSIONさんのも他の映画でのもっと変なエンド曲に比べると、そうまで気になってなかったけど

*2:そういう意味で『ロッキーホラー〜』も何回も観て臨めば、すごい楽しめるんだろうと思う

『野火』


『野火』大阪での公開2日目にいきました。シネリーブル梅田でネット予約。いつも取る最前列真ん中…は既に押さえられていた。埋まってる席からひとつ空けてとっても、結局あとで誰かがあとでその間を埋めることが多々あるので、と隣を押さえたら最前列はよくみかける常連さん二人組と自分しかいなくて。最前列でちょこんと3人並んで観たわけです*1
塚本監督は『KOTOKO』が物凄く合わなくてかなりしんどかったので『野火』はスルーしようか*2と思ってましたが、昔原作を読んだこともあり気になったので足を運びました。
戦争が激化するほど補充兵役のハードルは低くなり、「根こそぎ動員」という状態になってしまったため、大岡昇平は昭和19年に35歳という年齢で徴兵され苛烈を極めたフィリピン戦線へ派兵されている。この従軍体験は彼にいくつもの作品を書かせている。自分は『野火』『レイテ戦記』『俘虜記』など学生の頃に一時期集中的に読んだ。なにせ昔に読んだから記憶は曖昧だけど、とにかく印象深かったのは大岡のきわめて理智的な筆致。そしてドラマティックというよりはどこか淡々と記述していること*3。しかしこの“劇的に描かない”ということが肝要で、過剰なセンチメンタリズムや反戦メッセージなどない。ひたすらその戦場の凄惨なありよう、人の死体がごろごろし、食べ物や水に飢え、飢餓状態が極限に達し、意識は朦朧とし、土やほこり等で汚れ、不衛生で、太陽の熱に灼かれ、人間性を保つのがギリギリ、いや、その極限を超えて狂いはじめる者がいることなどが、淡々と事実の羅列していくかのように描いているがゆえに、その描写は物凄い強度を持つ。上官の理不尽な命令や暴力などもただ、それをそのまま描くだけで十分。大岡には壮絶な体験だったけれども、彼が派兵されたことで稀有な戦争文学が生み出されたんだよな。
さて、塚本監督の映画化はどうなっていたか、というと、この大岡作品のエッセンスが生かされている、と思った。戦争反対メッセージやお涙ちょうだいの人間ドラマも皆無。ひたすらに極限状態や生者が一瞬でモノ=死体にかわる瞬間、そして人間の本能=飢えているのがツラい、ひたすら食べたい、という最終的な本能だけが研ぎ澄まされ、人の行動原理がそれだけになっていく様子を描いてる。これだけで十分なんだ。もう十分。低予算の映画だけに最初は録音や画質が気になったけど、そのうち気にならなくなる。本能vs本能の対峙場面、ものすごい叫び声をあげる現地住民の女もすごい迫力でした。リリー・フランキーのひたすらにいやぁな感じもよかった、本当に観ているだけでこちらの生理的にいやぁな部分を撫でさするような演技だな、あれは。リリーさんの持ち味を悪いキャラの方面に生かすと、すばらしくいやぁな演出ができるんだよな、と感じる*4。低予算と思えぬ迫力のある死体や人体損壊描写。また予算がないからよりシンプルな表現になっているのも奏功していると思う。ポスタービジュアルを見ればわかるとおりロケーションハンティングがすばらしい。足をつかってロケハンし、無い予算でも工夫して、ここまでできるんだな、と思った。凄惨だけど、目をそらすことができず、でも、そうやすやすと再見することはできない強烈さをもつ映画でした。

野火 (新潮文庫)

野火 (新潮文庫)

塚本晋也×野火

塚本晋也×野火

*1:2列目以降もパラパラと入ってましたけどね

*2:KOTOKO』同様塚本さんが出演しているのもちょっと引掛って

*3:『野火』はわりと観念的だったような気がするけど他の作品ことに『レイテ戦記』はことさらこの印象が強い

*4:例『凶悪』

『フレンチアルプスで起きたこと』

予告をみて、たいそうおもしろそうだと思って公開週に足を運びました。緊急事態に陥ったとき取る男女の行動の相違*1が夫婦仲に亀裂をもたらすというおはなし。
フレンチアルプスでヴァケーションを過ごそうとやってくる一家。ゲレンデを眺めながらの優雅なランチ、のはずが、人工的に起こす雪崩が予想外に大きかった。「これはプロの仕事だから大丈夫」と人間のシステムや技術の知識がありそれを信頼し、これはちゃんとunder controlなんだから大丈夫なんだという“男”。それに対し、目の前に起こる事象インパクトに突き動かされ衝動的/感情的に行動する“女”。劇中の男=トマスは劇的なことや自然災害はTVや報道の中でしか起こらず、自分たちはそういう例外に陥らないと思ってるのな。でも自然は人間なんかの予想を超えてくるのが常でして。男は「あ、これヤバいかも」と自分の理性の臨界点を超えた瞬間我を忘れて、でもiPhoneだけは忘れずにまっさきに逃げ出す。でも、人は記憶を書き換える(無意識にもね)から、夫は逃げたけど、そんなに早くなかったよ。走ってなかったよ。家族を気遣うためにすぐ様子をみにもどったし。と自分なりストーリーを作ってる。逃げた云々、ということより「まっさきに逃げてしまった自分」という事実を認めない夫を目の当たりにして、不信からだんだん夫に距離を感じる妻。
事実はひとつでもストーリーは人の数だけ生成されるというのはあたりまえのことで。自分は神戸で阪神大震災を経験してるんですが、そのときのことは自分にせよ、親にせよ、経験したすべての人がそれぞれの物語を作ってる。時間が経つと記憶を整理する。また、人に語るうちにその物語はさらに完成されていくのだ。それは起こった事実からそれぞれの人間の眼や経験を経て物語へ生成変化するわけで。その過程で自分の都合良く書き換えたり、より劇的にするために話を盛ったりしてる。もちろんあくまで無意識にね。だから夫にとっては自分が言ってることは全部真実。ボクは、客観的事実を述べているのだよ、という夫。どうも見解に相違があるようだね、なんていう夫。そんな夫にこんな嘘を平然という人だったっけ、とまるで知らない人のように感じはじめる妻。
この夫が、よりによって自分のiPhoneでその一部始終を録画していたのをつきつけられると、これは認めざるを得ない「客観的証拠」だから、申開きはできない立場に追い詰められ、どうすることもできずうわわーんと泣きだすところがおもしろい。理智的であろう、事実は事実として認めるという立場だから、こういう動かぬ客観的証拠をつきつけられると逃げ場がなくなるんだよな。だから妻はこの録画の存在を知ってたのに、あえてしばらく本人につきつけることをしなかった。しかしどうにもこうにも認めない夫に対して妻も残酷になってしまう。その追求を第三者を呼んでいる場面でやるのだよな*2。逃げ場なし!しばらくはなんとか“自白”させようとしてたんだけど、それがかなわぬとなったら、容赦なく追い詰めていく。妻も最初は波風たてまい、と穏便にすませようとしたんだよね。しかし、心に一度芽生えた考えは、それまではスルー出来たようなささいな言動も養分にしてどんどん成長する。「アレもコレもソレも、夫の家族への愛が浅いことの証左じゃないか」と。だから一縷の望み「夫が自分の行動を認め、あやまる」ことに賭けたんだけど、それがまったくかなわぬとなると、妻のガマンの臨界点を超えてしまい、ここまでやっちゃ、だめだろうな、というところまで追い込みをかけてしまう。
さて、最後は和解したみたいな感じ。いや、でも人間には幸か不幸か「記憶」能力があって、これはなかなか厄介なヤツなんだな。しかも「記憶」は時間とともに盛ったり、自分の都合のいいように生成変化していくのだからこのフレンチアルプスでの記憶がどうこの夫婦の中でそれぞれに生成変化していくのか…一度生じた亀裂はそれ以上深くなることはないのか…この夫婦、そして家族に幸あれ。
『フレンチアルプスで起きたこと』

*1:統計データでもこの夫婦のような行動を取るケースが多いとか

*2:この第三者として巻き込まれる側のもらい事故感もおもしろい

8月1日映画の日に観た二本『ボヴァリー夫人とパン屋』『進撃の巨人』

毎月1日はほとんどの映画館で映画の日。1本大体1100円で観られます。8月1日は土曜で映画の日だったのでハシゴしてきました。作品チョイスは前々から絶対観る予定作品だった『ボヴァリー夫人とパン屋』、あと一本はスルーしようかと思ってたけど試写の評判や諸々で観たくなった『進撃の巨人Part1』です。
『ボヴァリー夫人とパン屋』はジェマ・アタートンとジェイソン・フレミングがイギリス人夫婦役で、この二人がフランスのノルマンディーに引っ越してくるところから始まります。その田舎の古い家の向かいに住んでるのは人の好さそうな、でもその実、妄想力が人並み以上にたくましいパン屋のおっさんなのでした。この妄想おっさんが語り手となって進みます。ジェマが演じるのはジェマ*1。そしてその姓はボヴァリー…となればあのフローベールの大傑作『ボヴァリー夫人』を想起してしまうわけで。しかし妄想おっさんはその超絶美人、というわけではないけど、物憂げな表情やどこか物足りなさそうに宙を眺めるさまが男を引き寄せてしまうジェマに「こんな美人が田舎で充足するわけない!きっと男絡みでトラブルが起こって…『ボヴァリー夫人』と同じ末路をたどるに違いない!」と勝手に妄想。彼女が小説のエマのような悲劇的末路を迎えないようにアレコレ手を尽くそうとするお話。
とにかくジェマ・アタートンが最高でして。『ビザンチウム』の彼女がすごく好きなんですが、スレンダーというよりは迫力ある成熟したボディとすこし乱れた後れ毛がとても似合う彼女は、感情ゆたかで、理知的というよりは、生きることを精いっぱいでより良き生をつかみたい、と常に前を向いているという感じ*2。そんな彼女の雰囲気を十分生かしたキャスティング。彼女が愛犬を散歩させていたら蜂に背中を刺されて、とおりかかった妄想おっさんに毒を吸い出してもうらうため服をはだけ、息も絶え絶えにあえいでるとこ、とか、もう、これ監督、これ、わかっててやってるよね!すばらしいな、まったく!

あと年下の愛人の家に逢引きにいくのに、トレンチコートを着て出かける。愛犬を外の柱にくくりつけると、コートのポケットからハイヒールを取り出し、ゴム長靴から履き替える。そしてその恰好で家に行き、トレンチコートを取ると中は黒のセクシー下着姿!そのままふたりは情事にふけるのでした…

って、ここまで書くと、ジェマって男の夢の結晶か、と思えてくる。実はこの話、映画冒頭ですでにジェマが亡くなっていることが分かる描写から始まってる。ジェイソン・フレミング演じる夫が亡くなった妻の遺品を燃やしてるところから、ジェマが生前につけていた日記を妄想パン屋おっさんが盗み出してきて、それをおっさんが読むことから回想がはじまるのです。だから観客はジェマの日記+妄想おっさんのジェマをのぞき見しては妄想膨らませていたときの記憶がないまぜになった物語をみてるわけで。ということは全部が事実とは限らないよね。日記の行間をパン屋おっさんの妄想で埋めてるのかもしれない、とふと思いました。
出てくるパンもめちゃ美味そうでパンを愛する自分にとってはそれ眺めてるのも至福。オチもイカしてて『(500)日のサマー』のラストを思い起こしました*3。しかしこんな映画が4週連続興行成績1位の大ヒットとなるフランス…さすがだな*4…と改めて思いましたね。
『ボヴァリー夫人とパン屋』


妄想おっさん出演作、これもおもしろい

さて、つづいては『進撃の巨人』アニメは未見、原作は既読です。これはかなり観ていてしんどかった。原作の改変云々以前に、冒頭から繰り広げられる三浦君の演技に藤原竜也さん的な絶叫や間合いと似たものを感じて。三浦君の舞台を一度観たことあるけど、舞台での彼はとてもかっこよかった。しかし、今作での彼は映画のなかで舞台の演技してるみたいですこしオーバーアクトという感じ。観ていて『進撃の巨人』て映画じゃなく舞台化したらすごくいいかもしれないな、と思いはじめる。こどものころは円盤を吊ってる糸がみえても「特撮ってこういうものだから」と脳内で吊り糸を消した体で受け止めるという受容の仕方でOKだったけど、いまは技術の発達でそこらへんクリアできちゃうからなぁ。その「映画内の世界で現実にあるように」「映画内リアリティのしっかりあるもの」として特殊撮影がなされていないと、いまや受け入れられない。でも今作では特技パートがしっくりいってるように見えなかった。違和感を感じてしまった。…でも舞台なら糸がみえても脳内で「糸な無いものとして受け止める」というメソッドが観客側で繰り出されるから。それに巨人のデカさも生の舞台だとすごい迫力だぞ、きっと。
女性の役回りのいかにもお色気要員とか、そういう役割付与的なキャラ設定が空々しくて…エレンもシキシマもミカサのキャラも地面から数センチ浮いてるみたいに物語内での現実感がない。あと、みていてドキドキやワクワクがなかったのが自分のなかで決定的にダメだった。映画を離れたとこから眺めてるような距離感があって。きっと10代の頃なら「巨人きもちわるい!」「人の捕食シーン気持ち悪い!」となっただろうけど、もう、歳も取って、感受性がフレッシュではないのだな、と思いつつ劇場を後にしたのでした。こういうのよりはジェマ・ボヴァリーのほうにワクワクドキドキさせられる歳になったということか、そもそもこの映画に合わなかったのか。どっちなんだろうな。
進撃の巨人

進撃の巨人(17) (講談社コミックス)

進撃の巨人(17) (講談社コミックス)

*1:偶々?同名

*2:あくまで個人的感想です

*3:サマーのあとはオータム来たり、みたいな

*4:なにがさすが、なのかうまく説明できないけど