そろばん塾備え付け恐怖マンガのトラウマ

今日は憂国忌だったようですね。三島由紀夫氏がなくなったのは1970年なので今年は40周年ということでニュースで取り上げられたりしたんだな。
三島氏といえば、憂国とか自衛隊との絡みとか写真集とかナルシストとか右の人とか、そういったイメージが強い方ですが、自分にとっては全然違う印象なんです。なんといっても昭和の流行作家の筆頭でしたから、あらゆる媒体に文章を書きまくってるし、雑誌の三面記事みたいな短編書いたり、嫉妬やら偏愛やら見栄っ張りやらないまぜになってて、そういうところがおもしろい。ただ、最後は自刃で亡くなってますからね。当時の朝日新聞に盾の会の森田氏に介錯された三島さんの首が転がってるところが写真で出たとか。すごい、昭和のメディア。そういうことも許された時代だったのかー…。
さて、首ころりん、といえば自分のトラウマとなって(ここでいう「トラウマ」は厳密な心理学用語ほど厳しい意味あいではございません。)いるマンガを思い出します。こどもの頃に通っていたそろばん塾に備え付けてあった本棚にはいっていた、楳図かずお先生の『恐怖』です。たしか、半端な感じで1冊置いてあったと思う(うろおぼえ)。なぜだかああいう備え付けマンガって、全巻揃ってるもののほうがレアでしたね。怖いものが物凄く苦手なくせに、気になってちょっと見てしまう。『恐怖』は短編集だったのですが、その中でひとつだけよく覚えている話があります。今年東京まで聞きにいった平山夢明先生と町山智広さんの「恐怖」をテーマにした爆笑対談で、平山先生があげておられたお話と一緒だったので、「おぉっ!」と思ったのですが、それがサンタおじいさんのお話です。
ストーリーはほとんど覚えていませんが、大体次のような感じです。
家族とおじいさんがいる。おじいさんと孫は仲良し。おじいさん亡くなる?(おじいさんの生死はこの辺りであいまいに…。記憶力悪くてすみません)。孫がかわいいおじいさんは、霊的存在ながらも、夜になると孫の部屋の窓にサンタのコスプレでやってきて、袋からプレゼントを出してあげる。孫と思っているのは実は、大きくなった孫のこどもなのだけど、霊的存在のおじいさんはその辺りの区別がつかない。可愛い孫のため、とおもってせっせとプレゼントをもってくる。しかしプレゼントもある日、底をつく。プレゼントくれるじいさんならウエルカムだけど、そうじゃないじいさんなんて、ノーサンキュー、とばかりそっけない孫(実はひ孫)。でもじいさんは孫がかわいい。孫、かわいいよ、孫、連れて行きたいよ、孫、と孫を引っ張る。家族が気づいて助けに来る。じいさん、孫の頭もって引っ張る。家族、足もって引っ張る。引っ張り合い、大岡裁きの逸話みたいな思いやりの心を知らないかのごとく、お互い譲らない模様です。と、…孫の頭抜ける!抜けた孫の頭を大事に袋にいれて持って帰るじいさんサンタ…。ああ、なんだこれ!こわい!でもなんか変だよ!
なんでこの話だけ覚えているんでしょうかね。きっと、孫の引っ張り合いとか、首が抜けるところの描写とサンタじいさんが袋に頭をいれて帰ってしまうのインパクトがあいまって心に刻まれたようです。
ちなみにこのそろばん教室には『ベルサイユのばら』も備え付けられていたので、なぜだかこれは全巻揃っていたので全巻読破いたしました。しかし、当時の最新マンガがなぜだか無かったなー。これは喫茶店とかの備え付けマンガと同じ宿命ですね。
怖いマンガって“こわいこわい”、と思いつつ開いてめちゃめちゃ後悔していました。美内すずえ先生の『妖鬼妃伝』もこわかった。雛人形怖いトラウマの元凶。ほかには高階良子先生の『赤い沼』。かごめかごめの童謡にこんな裏怖いテーマが、なんつって。ザクロは血の味、とかっていうのもこのマンガで植えつけられた間違った恐怖情報。あと見開きの恐がらせページどーん!っていうのがあって、それ見てしまった日は夜眠れなくなって親んとこ行ったっていう。
こわがりでそんなに積極的にホラーマンガはよんでなかったのに、たまたま目に入った数作品がトラウマを植えつけるっていう。でも、いま、別に読んだこと後悔してないんですよね。それはそれで、いい経験だったと思う(当時は泣いたけど)。恐怖は原初の感覚だし、興味と恐怖は表裏一体。怖いものを乗り越えてちょっと成長するっていうこともあるでしょう。『スタンド・バイ・ミー』だって、原題は『The Body』(→死体)、で死体探しにいく少年たちのイニシエーションの物語でしたね。このお話がこんなにスタンダードになったのも、皆が共有しやすい感覚だからじゃないかなー、恐怖と興味と冒険と成長って。
というわけでそろばん塾のおかげで、数学はからっきしながらも、二〜三桁の計算くらいは頭の中のそろばんイメージでできるようになったし、ステキなトラウマ体験も得られましたので、よかったかなーと思ったりしたのですが、今日はまあ
こんなところで。

楳図かずお『恐怖』第2巻
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美内すずえ『妖鬼妃伝』
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高階良子『赤い沼』
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