阪急電車のマルーン色の車体に乗って2001年の懐かしい未来へいく試み

今日は、今年やっている午前十時の映画祭(赤の50本)の中でも最も楽しみにしていた一本『2001年宇宙の旅』が始まる週だったので、早めに起きて西宮北口のTOHOシネマズまで阪急電車に乗ってでかけました。
神戸〜大阪間を結ぶ鉄道は1、JR 2、阪急電車 3、阪神電車の3本が走っていますが、山手を走る阪急電車阪神電車は浜側を走る最も庶民的な電車、JRは阪急と阪神のちょうど間くらいの山と浜の中間くらいをずっと走る一番速い電車。極めて庶民的な地区に住んでおりましたが、たまたま阪急の駅が家から一番近いため幼い頃から阪急電車に乗ることがほとんどでした。阪急電車はすべての電車がマルーンカラーです。この“マルーン”という名前を知ったのは大人になってからだったので、こどもの頃は“こげちゃ色”と認識していました。こげちゃ色の車体の中に入ると中は、苔色のシート、車体内部の壁は木目調。JRや阪神はいろんな色の電車が走っているのに、阪急は特急でも普通でも急行でもこげちゃ色のあいつのみ。でも、ほとんど阪急電車にしか乗らなかった自分にはそれが普通でした。
(…余談ですが、はじめて東京へ行ったとき、東京のタクシーの色が多様すぎてかなり驚きました。神戸のタクシーはほとんど黒。黒以外では、白か薄グリーンくらいしかないんで。東京で見たストライプとか2色使いなどはすごい衝撃でした。)
さて、阪急電車は通勤でも毎日使っていたのですが、昨年から勤務地が変わったので今は人生で初めてJR定期を持つ身になりました。JRは早くっていいけど、たまに阪急電車に乗ると安心するんですよね。マルーン色の扉が開くと木目調の壁面、肌色が濃くなったような茶系の床と苔色のシート。車体はどんなに最新型にかわっても、液晶のパネルがついても、色調構成が変わらない。基本が暖色(+ふかふか柔らかみが感じられる暖かそうな苔色)だからかなー。
今日、阪急の駅には来年公開予定の中谷美紀さん主演の『阪急電車』ポスターが貼ってありました。阪急電車の車体が大きいスクリーンに映し出され、かつ、自分も通勤でずっと使用していた今津線が舞台ときけば観にいくしかないやん、とあらためて心に決めて、西宮北口へ向かうべくマルーン色の車体に乗り込みました。
午前十時の映画祭には毎週行きたいくらいなのですが、如何せん若干遠い、そして朝早いのでなかなかいけずにおりました。前に行ったのは『ワイルドバンチ』で、これも8割方埋まっていましたが当日の朝ギリギリについても大丈夫だったので、今日も開始20分前には着くように行ったのですが、チケット売り場の『2001年宇宙の旅』の表示の横には“×”が…。前を歩いていたおじさんも「満席か…」と絶句してUターンしていった。そんなおじさんの様子を見てもどうしても諦めきれず、売り場の人に「満席ですか?」と再確認、「立ち見も不可?」とシネコンなら絶対に「不可」っていうに決まってると頭で分かりきってるのに、聞いてしまいました。はい、予想通りの答え。うん、わかった、折れた心を抱えてとぼとぼ駅へ引き返したのでした。
がっくりきつつも、余計に、絶対観てやる!と思い帰途、ネットで明日の座席予約をすることにしました。見てみると、恐ろしいほどに残席少ない。驚きつつもなんとか座席を確保いたしました。『ワイルドバンチ』でもあれほど埋まっていたというのに、『2001年』なんてもっとネームバリューがあるんだから満席でも当たり前!なのに座席の確認すらしなかった自分が悪かったなー、とつくづくいい教訓を得ましたよ。来週の『ミクロの決死圏』も予約してから行こうと固く決意しました。
『2001年』は以前にビデオでは見たのですが、なによりでっかいスクリーンで見たい。そして町山智広さんの『映画の見方が分かる本』を読んだ今の自分がどこまでわかるかなーというのと。最後のスターチャイルドにいたる手前のLSDの幻覚表現みたいなのを見たいのと、素晴らしすぎるオープニングとツァラトゥストラかく語りき、が鳴るところと…とにかく小理屈はともかく“観たい”、ということです。キューブリックの名作、老若男女問わずあの映像だけでやられますよね(最後の解釈は訳わからんけど、映像はすごかったな、みたいな)。そりゃ満席になりますよね。
2010年の現在でも、映画の中で描かれる宇宙の旅はいつまでも憧れの未来です。到達できない未来の姿。映画の中時代設定は、現実の時間の進行では追い越したことになっている過去です、もう9年も前の。でも到達できない未来が焼き付けられている。なんで『2001年』はいつまでも未来なんだろう?『2001年宇宙の旅』公開時のインパクトがすごかったようなので、この映画は未来像のスタンダードな類型にまでなっているかもしれませんね。懐かしい未来。最近の映画の未来像の類型っていえば『マトリックス』みたいなのかなー。あんまり現在の現実と乖離してないような。最近ではそのほうがリアルな未来に感じられるのかな。でも、たまには昔描かれたような憧れの対象だった懐かしい未来に触れてみたいような気がします。車は浮かんでて、チューブの中を走ってほしいものです(『フィフスエレメント』…なのか?)。でも、懐かしい未来といっても『スペースバトルシップ ヤマト』という選択にはならないので、明日は『2001年宇宙の旅』観にいきますよ!
…こんなところで。

阪急電鉄
http://rail.hankyu.co.jp/
午前十時の映画祭
http://asa10.eiga.com/theater/17.html ※来年はシリーズ2「青の50本」もあります
『映画の見方がわかる本』町山智浩
http://www.amazon.co.jp/dp/4896916603/