三本立て鑑賞『トレインスポッティング』『ラン・ローラ・ラン』『ロック、ストック&トゥースモーキングバレルズ』

平日に思い切って時間をひねり出しました。そして、映画を観るために久しぶりに湊川へ出かけたのです。老舗の名画座パルシネマ40周年記念その1、12/16〜21の“欧州カルト3本立て”を観たのでそのことについて書いてみます。※その2は今日観た
パルシネマは座席に白カバーをかけた列とカバーなしの列があって、概ね白は男性が、カバーなしは女性が座る感じになってます。清潔で明るいし、上映の合間には館主の挨拶および袋をチリチリ鳴らしたりしないよう、っていうマナー注意のアナウンスまでなされるという、行き届いた映画館。朝イチに行って、『ロックストック』(98年)『ランローラ』(98年)『トレスポ』(96年)(以下すべてこの略称)の順番で観ました。どれも昔に1度観たことがありました。
この3本の共通点は、「若者」「ドラッグ」「金」そして「音楽」です。では観た順に。
『ロックストック』はマドンナの元ダンナとしても有名なガイ・リッチー監督の作品ですが、ほとんど覚えてなくてかなり新鮮に(というか初見のような気分で)観られました。スティングが出てることもすっかり忘れていて、「うわ、スティングじゃん、若っ」と思ったくらい忘れていました(彼は主人公の親父役なんですが、ルックスが致命的なほど似ていない)。お話は、ポーカーには自信のある若者がまんまと胴元にハメられて負けたうえ、多額の借金を負わされる。その借金をどう返すかを巡り、5〜6個の要素がビリヤードの玉みたいにお互いに(知らぬ間に)響きあって思わぬ影響を与え合って、思いもよらぬストーリーが転がる。うんうん、なるほど。ストーリーの転がりはマンガみたいに伏線をめぐらせてそれを回収し、パズルのピースをカチカチ嵌めていく作業。ですが、その醍醐味よりも、自分が一番面白くて、そういえばこんな要素あったあった!とぼんやり記憶がよみがえったのは、イギリスのパブリックスクールのお坊ちゃん達が大麻を栽培してるところ。髪が長めで、まぶたが重そうなヘナヘナした感じの坊ちゃんたちが大麻を栽培して、ちょっとハイになったり、ベッドに皆でもぐりこんで自堕落にTV見たりしてるところ。あー、こういう具象が面白い!あと、オープニングの音楽はめちゃめちゃ覚えてるのに誰の曲か思い出せなくて、エンドロールでオーシャン・カラー・シーンって出て、ああそうだ!ってスッキリしました。
『ランローラ』はドイツ映画。バイクを盗られたローラは恋人との約束に遅れてしまう。そこで恋人から電話が鳴って彼が葉っぱの取引のお金を失うという深刻な危機的状況に陥って、このままではスーパーマーケットに強盗に入るしかない、と告げられたローラは「20分待って!」といって走り始める。恋人のもとへお金を用意して駆けつけることができるのか?ローラが走って走って、でもダメで、また20分前に戻ってリトライ、の繰り返し。ゲームのようにやり直せるとして、別の一手、別の一手とツールやタイミングなどを替えるとどうなるのか?ローラがすれ違う無関係なような人物にも、ローラが別の一手を取る度に違う未来が訪れるんだよ、というのを示す・・・このあたりは、公開当時にも言われていたかもしれないけどかなりミュージックビデオぽいテンポでカットを割って進んでいく、アニメも使ったりして。うん、それもおもしろい。でもこの辺のくだりは全然おぼえてなくって、とにかく覚えていたのは、ローラの走りっぷり!これに尽きる。ローラは赤く染めた髪が鮮やかで、肉付きもたっぷりしていて、下半身もしっかりしているダイナミックなボディの持ち主。タンクトップでブラ紐もへそも見せて、タシュタシュと走る。その様だけを描きたかったんだな、監督は、うん、それはいい志。ストーリー云々は(とくにご都合なラストは)置いといて、赤い髪の子が走りまくる様がドイツのテクノにのって描かれる様だけで十分!
『トレスポ』はダニー・ボイル監督のイギリス映画。これでユアン・マクレガーという存在を知ったので、未だにユアンというとこの映画が思い浮かびます。この日観た3本の中では一番よく覚えていました。ドラッグ(主にヘロイン)に依存しまくったユアンとその仲間。悲惨な末路を辿る者もいたり、赤ん坊も亡くなったり(赤ん坊が亡くなって、悲しみから逃避するためにまたドラックという出口なしのループ)。一番覚えていたのはドラッグで幻覚だか現実だかのあわいに行ってしまったユアン演じるレントンの描写。下剤で流れちゃった阿片入り座薬を取るためにトイレの便器にずるずる入り込んで、トイレの奥の海の中をくわくわと掻いていく様、オーバードーズで絨毯ごとずるずると床下に沈んでいく様、亡くなった赤ん坊が天井をハイハイして、エクソシスト的首回転をするところを幻覚で見ておびえる様。あと、ユアン以外の役者の顔も超いい。上手く説明できないけど、「イギリス映画に出てくる顔だよな!」という腑に落ち方が物凄くしてね。あとはエラスティカとかルー・リードとかニューオーダーとかの音楽がよいのな。製作当時の風俗とかファッションとかも流行も取り入れてて・・・それってこの「若者映画」には必須だと思うのですよ。どうしたって舞台となった時代を反映するものだから、当時の若者を描くのに適切な当時の音楽があてられることは絶対に必要だと思う。普遍性を目指してそのあたりをあいまいにするとインパクトに欠けるように思います。若者を具象・具体的ディテールを描くところにファッションや音楽は必須要素だから。
ラストにレントンが「これから変わって、あんた達と同じようなライフを送るんだ」
I'm going to change... I'm cleaning up, and I'm moving on,going straight, and choosing ife...I'm looking foward to it already,I'm gonna be just like you
とズンズン歩きながら観客に語りかけるラスト、高揚するかのようにアンダーワールドの「ボーン・スリッピー」がかかる。内容的にはちょっと苦いんだけど、すごい爽快感があるんですよね。これでもうOKでしょう。サントラも持ってますが、この映画、好きだなーと再認識しました。
これら3本の映画は90年代後半に、音楽とのリンクで宣伝されることも多かった。タワレコbounceで『トレスポ』の特集記事みたなー。そんな時代でした:90年代後半。
『ロック、ストック、&トゥースモーキングバレルズ』http://www.kinejun.jp/cinema/id/31499

ラン・ローラ・ランhttp://www.kinejun.jp/cinema/id/31482

トレインスポッティングhttp://www.kinejun.jp/cinema/id/30017

※ただ、これら3本とも公開当時も相当メジャーで、カルト、ではないと思うよ