『エル・トポ』

今公開されている映画でいろいろ観たいのがあるなか、旧作で名前はよく聴く、でも中身よく分からん、という映画『エルトポ』を観てきました。なんだか、“カルト作品”、だとか“ジョン・レノンが誉めたみたい”、とかっていう周辺ぼんやり情報のイメージで、「うーん、なんかすごいのかも」と思い、ぜひこの機会に観にいってみようと思っていました。これを逃すと、わざわざレンタルしてまで観ることもなさそうなので、映画館に缶詰になって観るのがよさそう、と思ったこともありました。
ひとことでいうと、“変な映画”!・・・さて、事前情報はほとんどないまま観にいった自分の、予備知識なしの感想を書いて、その後にグーグル先生にこの映画について訊ねてみることにします。以下《》→このカッコでくくったところは自分の感想。
荒涼たる砂漠に少年と黒づくめ(革パンが熱そう!)のヒゲもじゃ男が馬に乗って登場。「7歳になったから、一人前だから母の写真とおもちゃは捨てなさい」。それはいいけど、少年、帽子だけかぶって裸。“ぼかし”がぼんやり入ってる。《あぁ、昔はこどもの下半身はTVですらそのまま放映されてたけど、最近はやっぱりぼかしなんだな》さて、続いて、集落にたどり着いたら、柱に人が突き刺さってたり、家畜も内臓掻き出されているし人はバタバタ死んでるし。《昔の映画って、血が絵の具の赤みたいなんだよな。『ワイルドバンチ』もそうだったけど、昔の西部劇とかの血は朱じゃなくて赤なんだな》砂漠を行く男と少年に襲い掛かる3人組。《馬に乗ったまま器用に振舞うな、しかし、少年は裸で馬はきつそう》3人組をやっつけた男と少年、3人組の仲間んとこへ。《ああ、復讐か》修道院で狼藉をふるう連中をやっつける男と裸の少年。《どうもなんか変だね、これは寓話か前衛か?》連中をやっつけた男と少年が立ち去ろうとすると、女がかけよってきて、少年を小突いて、自分が男についていこうとする、男も少年を置いていくことにする。男と女、馬に乗っていく。汚い池の水が苦いのに、男が枝でかき回すと甘くなる。女、4人あんたより銃のうまい連中がいる、そいつらを倒してイチバンになってヨ。イチバンの男が好き。男、了承し、砂漠を行く。修行者みたいなのを順番に落とし穴におっことしたり、鏡の砕いたのをこっそり撒いて足裏を傷つけたりしてやっつける。そのうち自分にそっくりな装束の女がもう1人増えてる。なんだかんだで4人全員倒したけど、裏切ったり汚い手つかったり、なんかこんな自分がもうヤになっちゃって、死のうかな、なんて思って橋から飛び降りようとしたら女に撃たれるし。《・・・なるほど、これは前衛か!!
その後の展開はもっともっと前衛です。目覚めたら洞窟でフリークスばかり《というか、目覚めた変な化粧のお前は誰なんだ?死んだはずの男?》『21世紀少年』のトモダチのマークみたいな三角形に目玉のトレードマークの町があったり《うーん・・・わからん》。そこの教会?にふらっと現れた男(冒頭の男に似てるけど違う人)が、洞窟で目覚めた人と会った瞬間「おまえか!」みたいになったり《えーっと、最初に出てきた男と、男に捨てられたのち大人になった少年、かなー?
合間に“詩篇”とか“黙示録”“預言者”との文字が挟まれたりするあたりや、男の容貌がイエス・キリストぽかったり、男が中盤で撃たれるのが、両の手のひらと両足の甲だったりする点からも、キリストの受難と復活かぁ、とか、ソドムとゴモラとかパンドラの箱(これはギリシャ神話だから違うね)なんか、そんな感じかな?と思いつつもキリスト教に関する知識が圧倒的に不足しているので、そのあたりの寓意は分かりかねたのが正直なところです。
ただ、現在の映画製作では絶対に(特にハリウッドとかでは)許されないだろう、たくさんのリアルな動物の死体の山とか、たくさんのフリークスの登場とか、現代の禁忌がスクリーンに映し出されていることに圧倒されました。あとデジタルリマスターのおかげもあるのかもしれませんが、砂漠と空と血のコントラスト、その色彩イメージも鮮烈。むかしにがんばって寺山修司の映画を観たときの感じを思い出していました。意味?なんて分かんないよ。むしろ眠くすらなるよ。ただ、その訳わからなさと映像のインパクトだけはなんか残るやん。ていう。うさぎとカラスのアップに遠く人物が映りこんでいるカットとか、悪い賊が鳥の毛のふわっふわした首巻してピンクの鮮やかな服着てたりとか、ヒゲ面おじさんが女装してたり、女性なのにアテレコで男の声あててたり。砂漠と集落とどぎつい化粧の美しくない人々、死体・・・いろいろと感覚に訴えるのな。
うさぎの死体の山とか、うさぎ年だし縁があったのかも。うさぎがぴょんぴょんしていて、その首に繋がった縄を辿ると3人目の敵?にたどり着いたり、金稼がなきゃ、っていきなりやるのが大道芸とか、意味わからんすぎるやん。あ、寓話?突飛すぎて教訓のわからない寓話(キリスト教知識がないから殊更意味を掴みかねる)って思った。うん、一回は観られてよかったよ。70年代のフラワームーブメントとかの中でこの映画があったんだろう、というのもぼんやりわかった。ヨガっぽい師(インドイメージ)とか、アジアっぽい悟りのイメージの取り込みとか。カウンターカルチャー。既存へのアンチ。大人はわかってくれない(ちがう?)。
じゃ、グーグル先生にちょっとだけ訊ねてみよう。
まずwiki http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A8%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%88%E3%83%9D
アレ、結構合ってるんじゃない?しかも寺山修司が誉めたって、ちょっとリンクしてるじゃん。
http://www.el-topo.jp/
へえ、あの主人公、監督がやってるんだ。なんかヴィンセント・ギャロっぽいね。ギャロも自分大好きな感じがするけど、エル・トポの主人公(名前がエル・トポっていうのを今公式HPをみて知った)もナルシストぽいじゃない(私見)
ともあれ、これは観てよかったですよ。『ホーリー・マウンテン』はもっとすごいオチで相当有名みたいなので、より楽しみです(このまま予備知識なしにいける幸せ)。今日行ったのと同じ元町映画館で上映されるとのことなので、観に参ります。でも、その前に『アンストッパブル』とか『エリックを探して』とか『彼とわたしの漂流日記』って意味がわかりやすそうなのを観てからね。

『エル・トポ』 アレハンドロ・ホドロフスキー:監督、主演(1969年/メキシコ)
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=3111

※ちょっとゲームっぽいとこも感じた。なにかをクリアして次のステップに進む:一人目の師を倒して更なる敵へ、ついにはラスボス(4人目の師→拳銃の弾を虫取り網で跳ね除ける能力を持つ白髪長髪で半裸のじいさん)と対決するんだけど、ラスボスの強さ最強!みたいな。
※音楽も印象的でした。公式サイトをクリックした瞬間流れます。
※砂漠と原色といえば『バグダット・カフェ』も今ちょっと思い出した。