『ホーリー・マウンテン』を観た

アレハンドロ・ホドロフスキーの代表的2作品のHDリマスター上映が先月神戸にやってきたので観にいったのでした。『エル・トポ』の感想は以前に書きましたが、今日は『ホーリー・マウンテン』について、(観てからしばらく経ったけど)ちょっと感想を書いてみます。まさにうろおぼえ。
『エル・トポ』を経由していたので、心の準備はできていました(前は、ストーリー云々じゃない映画だと気づくのにしばらくかかった)。とにかく『エル・トポ』と比較して飛躍的に予算が大きくなっていることがわかりました。前作といい、とにかく動物がたくさん出てくるのですが、最初のほうに登場するカエルとイグアナのサーカスがありましてですね。これが全員(全匹)小さい衣装を着てるのですよ。カエルくん、イグアナさんがイチイチ。しかも、カエルくんは長い撮影にともない弱っていく。弱ったカエルくんが積みあがっていく。さいごはそのステージがドカーン、て。また、冒頭に男が、キリスト的ルックスで登場して、それが容器にいれられて、液をたぷたぷと注がれて人型を取られ、キリスト像の鋳型みたいのをつくる。そこからキリスト像の大量複製をつくる(大量生産の現代社会批判なの?)という場面があるのですが、この複製の量がまたアホほど大量で。これまた予算がかかってるな、と。で、突然キレた男が暴れまくって一体を除いて壊しまくる。
たくさんの動物とか、たくさんの像とか、替えのききそうなものが大量にあふれているこんな世の中だけど、でもそうじゃないやん、みんなオンリーワンやん。そんなオンリーワンな自己を求める旅へ出かける男は、車の行きかう道路にはさまれたぽっかりした空き地に聳え立つ塔へ上る(ヘリコプターも飛んできたり着陸したり、綱1本で吊り上げられたり、このあたりの映像はカエル君サーカスに続き見ものです)。そこで出会ったのはなんと頭を変な感じに剃った錬金術師(ホドロフスキー)。原色の壁の部屋で、男に「金(gold)がほしい?じゃ、お前の排泄物すら金に変わっちゃうよ」つって、その技を見せるわけです。このあたりの悪趣味にはすごい本気を感じた。本気で悪趣味やってんのな。排泄物を燃やしてそれのスチームサウナ的装置で汗を収集とかナニコレ、しかも結構な予算もかけてるのな。
ウィキを見たら、ホドロフスキーはパントマイムにも傾倒した時期があったそうなので、前半のカエルサーカス、錬金術のあたりは特にパントマイムぽいです。意味の有るセリフはほとんどない。中盤にこの映画のストーリーのガイダンスがある。聖なる山にいる聖者は永遠の命を得ているという。永遠の命の秘密を知るために聖なる山へ旅にでよう。それには世界でアートや生産業などで力を持つ実力者たちを8人伴っていかねば、と。このあたりからちょっと説明的です、とはいっても集められる8人の実力者たちの描き方はホドロフスキー節で、しかも予算かかってるんで、とにかくこんなイメージ撮りたいねん、という本気をビシビシ感じる。人もセットも金かかってる!けど、8人集まってからの修行だか旅のあたりで、ものすごく眠くなって気持ちよく寝ました(正直申告)。
気づいたら皆あたまを丸めてて、聖なる山のある島に上陸してました。で、壁を通り抜ける男とかに出会いつつ聖なる山を目指す。壁抜け男が壁を通りぬけるときに変な効果音がついてて、コミカル。で、壁通りぬけられるんなら聖なる山にも何度も行ったことあるの?と聞かれた壁抜け男の答えが「縦移動はムリなの!」ってギャグやん。そう、段々となんだかコミカルさが増しているのですよ。
聖なる山を目指す一行は、一人ずつ裸で蜘蛛にたかられたり、動物となんかしたり(うろおぼえすぎてすまんです)、とりあえず皆、軽いイニシエーションがあって、いよいよ聖者のいるてっぺんにやってくる。ここからが超有名なラストですね。ははー、こうきた。うん、なるほど。ここに記録を残さなくとも、あのラストは覚えていられるから、書かない。まかり間違ってあの映画を観ていない人の目に触れないようにね。ラストではホドロフスキーの用意した答えがちゃんと示されてて、そういう意味では『エル・トポ』ほどの抽象性(説明を省いて観客にスキマを埋めさせるような)は無いのです。でも、『エル・トポ』を経て、『ホーリー・マウンテン』を作ったというのは分かる気がした。よりメタな視点から、自分なりの解釈を示してみたくなったのかな、と感じました。この世界のリアルを感じな!自分のリアルは自分のすぐそば、っていうかもう既にあって、それは深刻ぶって探されるようなもんじゃないよいうふうに自分は感じました。人それぞれだと思うので、“カルトムービー”(かな、『エル・トポ』よりわかりやすいと思うけど)という語感に惹かれた人、その原色で彩られた色彩イメージや観たことのないイメージを求めたいな、という人は観てみてもよいかと。映画館で観られてよかったですよ、途中すやすや寝たのも含めてね。まさしく映画的体験@元町映画館
ホーリー・マウンテン』(1973/アメリカ) アレハンドロ・ホドロフスキー:監督
http://www.el-topo.jp/intro_holy.html
http://www.allcinema.net/prog/show_c.php?num_c=21367
※お金を燃やす人々

《その他追記》
※途中で女の人軍団が現れるんですが(2枚目画像参照)、一人猿を連れてて、それを心の中で「バブルス」と呼んでました*1
※やっぱり冒頭でフリークスが出てきた。あと、女の人軍団のくだりで、老紳士が近づいて、小さい女の子に義眼を目から取り出すところがあって。それがもうダメでした。目はアカン、目のああいう描写は・・・。
※動物のもろもろの描写も時代ゆえ、と思いました。カエルのいっぱいいるステージの爆破もアカン・・・

*1:マイケル由来