ソン・ガンホ成分たっぷり!『義兄弟』

今日は、牡蠣を食べすぎるほど食べたり、掃除したり、映画を2本観たりして、牡蠣充+映画充な一日でした。映画1本目は長らく待ったソン・ガンホ主演の『義兄弟』(@ミント神戸)です。というわけでまずその感想を書いてみます。この映画は日本では東京などでは10月公開だったので、待ちました。というか大阪での上映時に見逃したとき、もう観られないものと諦めていましたので、今回神戸で観られて嬉しかったです。
楽しみにしていながらも、予備知識はほぼ無いまま行ったので、最初の謎めいた始まりは「お、お、これはなんだ?」という戸惑いとナゾにぐいぐい惹きつけられました。なんてことないインターネットサイトを見ているようで、そこにある数字を基に暗号のように示される言葉を読み解く怪しげな男(イケメン)とどうやら警察の特殊なチームのリーダーであるソン・ガンホ。徐々にイケメンは北のスパイで、ソン・ガンホは北のスパイを追う立場と分かる。また、この冒頭のシークエンスで、ソン・ガンホ演じるイ・ハンギュは離婚して娘は元妻が引き取っていること、少々強引で豪快で感情の起伏が激しいキャラクターであることがわかる、大変効率よくいい演出&演技だなと思いました。
あと、冒頭でガッツリ心を掴まれたのは、イケメンを導く北の凄腕スパイ“影”。彼が大層かっこいいのです。ルックスは仲代達矢に似た、背も低めで、顔も大きめのおじさんなんですが、サイレンサーを銃にくっつけて、弾をパシュパシュと極めて的確に相手に撃ち込んでいく様がすばらしい。頭がほとんど動かないようにすぅっと平行移動し、相手が女であろうと無慈悲に無表情に撃ち殺す。そう、殺し屋はこういうのが本当に怖い。観ながらなぜか『童夢』を思い出した。超絶超能力バトルを繰り広げたあのじいさんは怖かった、不気味だったな…。“影”の造形に自分の脳内の古い記憶が呼び出されて『童夢』のじいさんとの共通点を見出したようです。
別のスパイが寝返ったため、そのあおりを食らってミッションに失敗する“影”とイケメン。“影”はイケメンを裏切り者認定して姿を消す。一方ソン・ガンホは“影”やイケメンを取り逃がした上、多数の犠牲者を出したためクビになる。ここから、作品のテイストは、冒頭の緊張感から若干転調して、ソン・ガンホ成分がぐっと増す。コミカルだったり、豪快だったり、ちょっと大言壮語したり、怪しげな詐欺師っぽい雰囲気をかもし出したり、という演技が伸び伸び発揮されてて…これが“萌え”ってことか?と思うほどにソン・ガンホがキュートでたまらない。半ケツになるガンホ、成り行きでイケメンスパイと同居することになって、「あ、あいつが“影”に連絡したりなんかして、オレ殺されるかも!」と思って、“影”がきたらこうしてやる!とシャドウボクシングしてるガンホ、“影”が来たら手錠をかけてこうやって動けないようにしてー、と自分でシミュレーションして手錠が外れなくなったりするガンホ。ガンホ憎めなさすぎ、アホすぎ、かわいすぎやろー。ここら辺は、大分牧歌的というかほほえましかったりする場面も多いです。緩急の緩。
裏切り者認定されたイケメンはそれでも北のスパイという自分のあり方に縛られて、潜伏を続ける。イケメンは北の家族を脱北させるための資金を稼ぐため、危険を承知で以前自分を追う立場だったソン・ガンホに近づき、ともに人探し業をする。ここで、韓国でもベトナムや中国から女性を嫁として斡旋する業者があるっていうのを知った。女性は主に農家の嫁になってるみたいで…そういう意味では日本と同じか。過酷で逃げ出した女性を探す稼業があるっていうのも驚き(実情は知らないけれど)。逃げ出したベトナム人女性が、「私は韓国人です!韓国の歌も歌えます!」って歌を歌い始めるところが印象的でした。人探し業を共にすることを通じてガンホとイケメンが段々と心を通わせ、互いの正体を明かした後、再び冒頭の続きのごとく緊張感の高まる流れに。だって、“影”が再登場するんだものな!例のサイレンサー付銃でパシュパシュやるよ。北への盲目的な忠誠の暴走。あぁこわい。エレベーターの扉がほぼ閉まっているのに、標的の姿を認めた瞬間ドアの間に銃を差し込んでねじこみ弾を撃つ!いやー、いい。いいです。ここからのスパイたちとソン・ガンホの絡みのシークエンスは大満足です。イケメンからガンホ、ガンホからイケメンへの義理の果たし方がね…ホモ・ソーシャル的な。
そうやって楽しんだこの映画なのですが、3点とっても気になる点があったのです。
その1、ソン・ガンホとイケメンの再接触の場面。ベトナム人の人材あっせん悪徳ブローカーにめっためたにヤラれるガンホを、イケメンが救う場面。イケメンが危険を冒して救う理由がよく分からない。人が傷つけられるのが見てられない、などと理由を考えられるっちゃそうだけども。
その2、ラストがまるっと収まりすぎじゃない?
その3、イケメン(カン・ドンウォン)の左耳に歴然と存在する、2つのピアス穴。
その3はアカン。せめて目立つアップの場面ではCGで消さないとアカン。北のストイックなスパイがピアス…それはちょっと冷めます。イケメンはクールでストイックな役ということで演技は割と一本調子だけど、ガンホが傍で演技力を過剰なほどに爆発させてるので無問題。そう、イケメンの1.3倍くらいあるようなガンホの素敵な顔や演技が堪能できます。ガンホがクビにされる会議の場面で「お前離婚もしているしな」と上司に言われて、その離婚話にのって話つつ、いやいやなんでこんな離婚話になってんだよ、ってノリ突っ込みをいれるガンホの演技のナチュラルさにしびれました。ほぼ、メインアクターは3人のこの映画。とりわけガンホ成分を摂取したい方と冷酷なおじさんスナイパーを観たい方にはオススメです。
『義兄弟〜SECRET REUNION』(2010/韓国)監督:チャン・フン 出演:ソン・ガンホカン・ドンウォン
http://gikyodai.com/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17044/index.html

※原題も『義兄弟』みたいだけど邦題はこれではなんだかとっつき悪い感じがしますね。ヤクザもののような先入観を与えそうな(自分だけ?)