大地震の夜に

驚くと共に、こればかりはどうしようもない、という無力感に襲われる。かつて大地震のただなかに居た自分は、ニュージーランドでも、中国でも、どこでも大きな地震が起こったというニュースを見ると心がざわざわしてしまう。阪神淡路大震災は自分にとって大きな出来事だった。直下型地震で激震地といわれた範囲に住まう自分の家は大丈夫だったけれど、ごく近所で起こった広範囲の火事(延焼で自分の家も燃えるかと不安で不安でしようがなかった)の影響で、電線がヤラれて、電気の復旧が8日後になった。ガスは2ヶ月以上後だったっけ。水道も遅かった。NTTの電話が電気より早く繋がったっけ。生存に関わるライフラインは間違いなく水。飲み水は絶対必要。カセットコンロがあればお湯を沸かして暖かいお茶、これが何よりの滋養。トイレを流すにも水(風呂の残り湯等ちょっとずつ使用)。重い水を運び上げるためにタンクが重宝されてた。
でも、精神生活に大きな影響を及ぼすのは、電気でした。地震の只中にいる者が一番の情報弱者になる。TVでは物凄く報道をしているらしく、ヘリコプターはバタバタと飛び回ってる。TVカメラやレポーターは“かわいそうな”“被災者”“悲惨”な“壊れた建物”“被災者の涙”を探して撮りまわってるらしい、けどそれらの映像を自分はリアルタイムではまったく見ていない、というか見られなかった、だって停電だから。情報が入ってこないことにイライラする。孤立しているように感じる。寒い。夜は暗く、日が落ちたら寝るしかない、って前近代の古来からの人間はこんなだったんだろうか、と思ったりする。乾電池も貴重だけどラジオだけが頼りだからラジオを聴く。懐中電灯をつける、それも必要なだけに限るようにして。だから地震直後数日間に必要なのは、PCなり、電話なりを充電する機器と電池。それがあれば繋がれるし、情報も得られる。それがないと孤独で疎外感があって、ものすごく辛い。停電の日数が長引くにつれ、自分はそれが辛くて辛くてたまらなかった。一番情報が必要な人々が一番情報に遠い、っていう矛盾はどうしても起こってしまう。でも、今はソーシャルメディアスマートフォン、ustにニコ生、スカイプがある。本当に素晴らしいな!と思う。これらのツールを生かすためにも絶対に電源や充電機器等が必要、被災地にこれらのツールが行き届いてほしい…。停電の街は暗い。明るい箇所があるな、と思うと火事で燃えてるからで、その火が燃え広がってる様が恐ろしくてたまらなくなる。だって火事の炎の下には人がいるかもしれない。また、人の生活の大きな部分を占めている“すまい”が目の前で燃え尽きるのを見るだけしか出来ない人々がいる。
神戸での地震のときはあとで友達に「TV見られなくってもよかったよ、だって、神戸の惨状を報じるのが飽和したら、すぐに“この地震が東京で起こったら”とかそんな話ばっかりになって、何報道してるんだ、ってすごい腹がたったから」と言われました。人口やメディアのヴォリュームが大きいところに話の主題の偏りが生じるのはしようがないのかもしれない、けれど、今も地震津波の被害の一番大きかったところの情報の報道が少ないと感じる。東京の交通途絶も大変だけど、家族を失ったり、家を流されたり、住まいが壊れたり、今後の仕事や収入の道がどうなるかわからなくなったりしている人たちが本当に辛い。そこを報道することを、光を照らすことを忘れないでほしい*1。東京のメディアにそれを求めるのは難しいかもしれない。本当にこういうときこそ、地域密着、地元メディアが頼りなんだよな。でも東京やその他地域もちゃんと自分達を見ててくれると思わせてくれることもとても大切。今、ここで起こっていることは“ニュース”じゃないの?と思うから。きちんと取り上げられることで見捨てられていないというか、些事じゃない、って他者から言ってもらえたような気持ちに少しなれるから。死者の数が単なる数字の累積に感じられないように、きちんと丁寧に報じてほしいな、と思う。
神戸では、ある程度時間がたってから、ラジオは亡くなった方の名前を延々と読み上げる放送が頻繁に放送されるようになった。あとは水道や炊き出しの情報を言うようになった。それも大事、でもネットで自分の知りたい情報に直でアクセスできるように電気を供給されることも必要。一番つらい、苦境に立たされた人々がちゃんと救われるように、生き延びた人は、それでも生きていかなければならないのだから、生きる気力を保てるようにすることが、必要。そして人間は苦境にあればこそ、頑張れるし、助け合えるし、秩序を保てると思う。危ないのは、地震からちょっと経ってからなんだよな。いつまでこんなのが続くんだろうと不安がちょっとずつ増し、報道は減り、っていう時期が…。そこもメディアは、学んでるよね?大丈夫だよね。自分も神戸から、できること(って寄付くらいしかないか…)はする。メディアもそうだし、個人もできることで支援するしかないしな、きれいごとみたいだけども。
しかし、今日はtwitterの力を感じたな。twitterがある時代でよかった。

3/12追記:はてなポイントでの寄付もできるようになってます。
街角の怪しげな募金はスルーして、確実に寄付が公に届く手段を選ぼう。
http://d.hatena.ne.jp/hatenacontrib/20110312/1299904670

*1:まぁ、まだ被災地の中心にジャーナリストが入れない状況もあるだろうけれど。それにメディアが阪神のときみたいにネタ集めに殺到するのもアレだし…