『ザ・ファイター』には“ザ”が必要

今日は朝はやく起きられたら、映画を3本観に行こうと思ってたのです。朝、なぜか平日仕事に行くのと同じくらいの時間に目覚めたため、掃除まで片付けて出発。移動に満ちた一日でした。『道』(@西宮北口)⇒『ザ・ファイター』(@尼崎MOVIX)⇒『making of LOVE』(@ナナゲイ)。作品の質もバラバラ、立地もバラバラというなかなかカオス!な一日でした。まさに映画充デイ(映画しか充実してないとも言う)。
さて、『ザ・ファイター』ですよ。188席くらいのスクリーンで10人くらいでした。観やすい真ん中すこし後ろでその列には自分で一人だけしかいなかった。おかげで、大層楽しめましたが、空席がもったいないかったー、それくらい、いい映画。“過剰反応性質”を持っている自分は、急に大きい音が出たり、急に声をかけられたり、急激な盛り上がりなどに遭遇すると、自分でも驚くほど反応することがあります。この映画ではラストの試合のシーンで盛り上がりすぎて、「うわぁ」とか「おぉ」と声がでたり、「やった!」と手が思わず動いたり、と相当イタイ観客になってましたが、周辺にお客がいなかったので事なきを得ました。『イップ・マン 葉問』でも最後イエーイと手が挙がりそうになったのですが、今回もヤバかった。なんなんだ自分。
舞台はマサチューセッツ、ローレル。ホワイトトラッシュの住まう地域。兄はヤク中、姉ちゃんはなんだかよくわからんが大量に家にいる。家族の過干渉のもと、次のボクシングの試合にむけて調整するミッキーが主人公。彼がカーステで大音量で流してるのがホワイトスネイクの「HERE I GO AGAIN」(後のラストファイトで流れる入場曲もコレ)。選曲が絶妙すぎる。オリックスのT岡田の入場曲がケツメイシなくらいの絶妙さ。この絶妙さはうまくいい表せない。オープニングのかっこよさ(曲・カメラワークも含め)を観て、ディレクションしてる人はセンスいいな、と思ってたところで劇中流れるホワイトスネイクが、イイ(実際のミッキー・ウォードの入場曲なんだろうけど)。ホワイトトラッシュの生活や感覚が表れているような感じがした。
しかしこの映画の主役って、マーク・ウォールバーグだっけ?チャンベールとメリッサ・レオとミッキーのお姉ちゃんたちじゃないの?というくらい主人公周りの人物群がすばらしすぎた。ディッキーのヤク中演技、ヤク中の体や顔つき、ハゲ、歯、ボクシング、禁断症状…。や、アヴァンタイトルのとこだけでもお腹いっぱい、ディッキー写真撮ってよ!と言われて舌を出し、目を見開いてポーズするところとか、すべてのシーンにおいて、おめーの演技+役作り、すごいよ!と言いたいけれど最後エピローグ的にくっついてる短いシーンにとりわけグっときました。地味ながら素晴らしくディテールにこだわった演技。ママの演技も素晴らしくて、二人のアカデミー助演受賞は本当に順当だね。あと特筆すべきは、姉ちゃん軍団。彼女達が揃ってるところが映るたび(たまに声が出るほど)笑ってしまった。母親といい、姉ちゃんどもといい、キメッキメの髪型が日本のバブル期のときの女性どもみたいに前髪立てたり、カーラー巻いたり、盛ったりってどういう感覚やねん。服装も完璧。姉ちゃん集団がザザザッと動くさまだけでも観て損はない!ディッキー出所おめでとうサプライズを準備する姉ちゃん、ママに場を外すように言われてすごすごと撤収する姉ちゃん、ミッキーの恋人をボコりにいく姉ちゃん、等など…おもしろすぎる、顔面博覧会。あぁいうルックスは現代アメリカにおけるリアルなんだろうな、素人つかってる…?と思うほど。誰か一人、顔のパーツがかなり寄ってて額がやたら広いギョロ目の人、いたよね?ツボでした。でも、主役がしっかりしてないと脇がいくら良くてもダメだってことで。マーク・ウォールバーグは体もがっつり作ってたし、ボクシングシーンもよかったですよ、元々の役柄もあって地味だけれども。
ボクシングシーンも実際のTV中継映像的に撮るシーンを織り込むことでリアリティが付与されてましたね。ラストファイトでスローを使っていないところも、大層好感を持ちました。スローでドラマティックさを増さなくとも、説得力のある演技と演出で十分。based on a true storyという点では、この方がいいってね。
家族からの必要以上の干渉、ヤク中の兄、兄をつい可愛がってしまう母の論理に苦しむ弟、家族至上主義からの脱却、彼女もゲットしたい、ボクシングで勝ちたい!などなど…主人公ミッキーは幾多の悩みを乗り越え、欲求を如何に達成するか、という成長譚ともいえるけれど、最後には、Win-Win-Winの関係なんですよね。八方丸く収まるという。あー、気持ちいい。そんな上手くいくんかい、と思うけど、これはスポーツの映画だから気持ちよくおさめてナンボでしょう。タイトルも『ザ・ファイター』じゃん。『ソーシャル・ネットワーク』ではショーン・パーカーが「『ザ・フェイスブック』の“ザ”は取れ、ダサイから」って言ってたけど、この映画では、『ファイター』には“ザ”が付かなきゃいけない。ダサいくらいの、クサいくらいの感じがいいんだな、としみじみ思いましたよ。
『ザ・ファイター』(2010/アメリカ)監督:デヴィッド・O・ラッセル 出演:マーク・ウォールバーグクリスチャン・ベールメリッサ・レオエイミー・アダムス
http://thefighter.gaga.ne.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17845/

エイミー・アダムス可愛かった。けど、(姉ちゃんたちと違って)やさぐれ感はなくて、どこか上品だったな。大学に行った経歴がある設定だから、かな。エイミーは下着は死守する!脱がないよー。