『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』舞台挨拶つき鑑賞記

土曜日はオーサカへ行き映画充デーを過ごしたのですが、その日のシメはシネリーブル梅田で大阪の初日だった『神聖かまってちゃん』レイトショーでした。入江監督の舞台挨拶もあるとのことだったので、カンテでチャパティ定食を食べてから、レイトショーに行ってまいりました。それにしてもチャパティ定食は多いな、あのチャパティをちょっと小さくして料金100円引いてほしい(どうでもいい話すみません)。満員立ち見まで出たのですがいい席を確保できました。
神聖かまってちゃんというバンドの存在は、個人的に大変信頼できるなーと思っている方の個人webサイトやtwitterなどで「なんだかすごいバンドがいるようだ」「ライブ行ったらすごかった」というような記事を見はじめたころから、名前のインパクトで存在だけは知るに至った、という感じ。そのうちナタリーでインディーながら大々的な特集記事が組まれたり、様々な対バンやイベント、流血ライブなど記事を見てるだけでおなか一杯、という感じでした。ニコ動を使ったり、警官と絡んだとか、ひきこもりがなんとか、とか、現代の若者になんとか、とかでニュースにも取り上げられる感じが、もやもやと消化しきれなくてひっかかり続けていました。はじめて動く彼らを見たのはNHKでperfumeが司会してる音楽番組。見ながらなにか懐かしいような気がした。「事故」「アクシデント」な感じ。「現場で何かが起こるんだ」という感じ。きっとこれは昔からあったろうな、と思って。の子はTVのなかで縦横無尽に歌って、カメラの枠からはみ出しそう。それでも、スターリン(リアルタイムではほとんど知らないけれど)とかの伝説ぽく語られる感じとかと、自分のなかで同じ感じがして懐かしくて。
この映画は群像劇…とまではいかないけれど、母子家庭の親子、プロ棋士を目指す女子高生、そしてバンド本体らを取り巻く環境を横断的に描きながら同時進行し、かまってちゃんのライブの日に向かって時間が進んでいく。この映画に出てくる人たちは、多かれ少なかれ、かまってちゃんの電波を受信しちゃった人たち。正直、観ている自分はそんなにかまってちゃん電波を受信できないんだけどもね。かまってちゃんに限らず、音楽はたかが音楽で、それが人生左右することなんて、そうそう無い。でも、音楽がないと日常のどこか、体のどこかの器官に、隙間があるっていうか、欠落というか、さみしい気がする。あるタイミングである音楽を聴くと信じられないくらい響いてしようがないことがある。人間性もちょっと変わるような、思考方法も変わるような…気がするような(や、人間そんなに簡単には変わらない、けど)。この映画は、かまってちゃんの映画なので、かまってちゃんの曲で、どこかに隙間にピースがカチっとはまる瞬間が描かれてるわけで。
つまらない業界人は金儲けにかまってちゃんを利用することしか考えてないし、ただ単純にかまってちゃんの音楽に興味が湧かない人もいっぱいいて(劇中では棋士を目指す子の友達ちゃんとか)、そんな人たちには全然響かないかもしれないけど、別の一部には強烈に響いてく…まさにかまってちゃん電波を受信する感受性の持ち主たち(別にスピリチュアルとかキチとかの話ではありません)。そんな色々な受容のされ方が劇中には描かれてました。
途中で(睡魔に負けて)継続視聴を挫折したドラマ『モテキ』。挫折する前に見た回で、満島ひかりちゃんがカラオケで『ロックンロールは鳴り止まないっ』を鬱屈したあれこれを爆発させるとともに絶唱する場面があって、それを見たときに、かまってちゃんの音楽を聴いて初めて「おぉっ」と思った。の子が歌ってるのより「おぉっ」と思った。それはあの歌にある、青いような、でも抑えきれないような思いの塊がひかりちゃんの演じる役、ストーリーなんかと絡まってたすごい相乗効果を発して響いたからのような気がする。かまってちゃん電波を受信したひかりちゃんが、さらに増幅した電波を放って、それが自分にも響いた、みたいな。
この映画もすこしそんなとこがあるかな。プロ棋士を目指す女子高生。のちの舞台挨拶で入江監督がおっしゃってたけど、外へ外へ広がるロックンロールと、内へ内へと力を集中していく将棋の世界がリンクして化学反応みたいのが起こる瞬間の記録。あと、特筆すべきはかまってちゃんマネージャー劍さん。おもしろいし、ナチュラルすぎ。森山未來君が嫉妬したのもわかるような(監督が言ってはった)。ベタなんだけど、旧態依然な業界人とのバンドの間に挟まれて苦悩したり。でも今の彼らを守ろうとする。そうだよなー、かまってちゃんから今の出来事性を取ったら、アカンやん。
かまってちゃんに興味なくても、響くんじゃないかな。興味あるほうが絶対より響くとは思うけども。ヤラしい業界人を演じる堀部さんは、本当に嵌ってましたよ。ヤラしい業界人だけど、憎みきれないっていうね。彼らみたいな商売の論理もあって、社会は成り立ってるトコあるしなー、とか思ったりもするわけです。

『劇場版神聖かまってちゃん ロックンロールは鳴り止まないっ』(2011/日本)監督:入江悠 出演:二階堂ふみ森下くるみ神聖かまってちゃん
http://www.kamattechan-movie.com/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18132/

※の子以外のメンバーも結構ナチュラルな演技でした。の子はラストのライブとニコ動の画面の中にしか出てこないから…でも監督の話では、の子も撮影現場に来たりしてたようです。ニコ動のシーンは彼の家に撮影に行ったとか。メンバーはマジメでかなり話し合ったりしたようです。
※の子については、エヴァ初号機みたいに膝かかえて、みたいな演技プランだったとか。初号機…
※劇中の劍さんが、業界人に放つ言葉、10年後云々…監督自身の思いもあるようで。なるほど。
※の子、ライブシーン、裸足&スカート。なるほど。