『堀川中立売』

おそいひと』を観に行ったこともあり、同監督の『堀川中立売』も観に行きましたよ。観ながら思ったのは、「よくもまぁ、こんな変てこな映画撮ったなぁ」ということ。過剰な内輪感とか、作り込みすぎの箱庭感や、小ネタの盛り込みが過剰なものなんかはニガテ気味なんですが…さて、この映画はどうだろう。
ダイヤモンド・ユカイとハイキング・ウォーキングの目立つ方の人を足して2で割った感じのルックスの人が主人公…ですが、本当の主役は京都の町でしょう。京都の町において、力を蓄え跋扈せんとする“悪い感じの勢力”が、一見普通っぽい人に見えるけれど内面をゾンビ化した連中を増殖させてる。これはヤバい。で、それを駆逐すべくたちあがる陰陽師とその使いのものの争い、というストーリー。…ですが、これじゃなんのことやら分からないよなー。それに自分も、観ながら、なかなかストーリーが理解できなかったもの。公式HPみたら、あぁそんな設定だったかな、と。
《公式HPより》ストーリー
大妖怪・加藤 the catwalk ドーマンセーマンは、長年地球侵略を画策していた。それを察知し、密かに地球に降り立ったギャラクシー・フォースのリーダーは、京都と呼ばれる地で安倍さんと名乗り、陰陽師として人々に畏れられる存在となった。安倍さんは加藤の「ドロップアウトを許さない 人類補完計画」を阻止すべく、社会の片隅で遁世する信介(ヒモ王子)とツトム(ホームレス男爵)の二人に白羽の矢を立てる。遂に動き出した加藤の計画の鍵を握るのは、過去に「正義感殺人事件」と呼ばれる犯罪を犯した寺田。寺田の存在が世界の人間の“悪意"を呼び寄せ増幅してしまうことで、人々は我を失い、次々に妖怪化していってしまうのだ。そして、安倍さんが式神に仕立てあげた信介とツトムは、たった二人で妖怪化した民衆を相手に出陣する。
メインのストーリーは悪い勢力VS陰陽師なのですが、もうひとつ重要なポイントがあって、それは「人を殺した罪を抱えて生きる」ということ。理由もなく人を殺した少年が、出所して社会復帰している。彼はひっそり生きようとするけど、人殺しの過去は、今も噂され、仕事もクビになる。彼の罪は消えない、どんなに悔いたとしても。なんのために生きてるんだかわからないような混迷の度合いが深まっていく元少年。生物としての生命活動が続いてるから生きているだけ、みたい。そんなぽっかりとした虚無を抱え込んでしまった彼の存在が、どうやら“悪い勢力”の欲しい鍵みたい。彼の抱えた虚無は、ヒマをもてあまし、ウォッチして消費するネタを探している連中の関心や興味を吸い寄せるから、“悪い勢力”はその吸引力を利用しようとする。虚無&虚無で、邪悪な気が満ちてくる。ネットや動画や、スマートフォンや、ケータイやらで、その邪悪なものの増幅/拡大スピードは半端じゃなくなってる。
観ているときや観た後もよくわかってなかったけど、書いてみたらなんかぼんやり整理されてきた。現代文明への批評的視点とか、あったわ。でも、ヒモ&ホームレスが陰陽師の使いでバタバタしてる様とか、原色の色使いとか、オブジェとか造形とか諸々の印象が映画内に横溢してて、観ている間中それに幻惑されてる感じでした。だから「よくもまぁ、こんな変てこな映画撮ったなぁ」と思ったわけで。小ネタとかには、正直ちょっとノリきれないところもあったのですが、ラストの大量のゾンビ(妖怪)退治、元少年:寺田がいたシーンが陰陽師の使い二人に置き換えられる総ふりかえり場面、逆回転映像(『おそいひと』のラストもこれでしたね)のところがなんだか気持ちいいんだよな。そこが憎みきれないヘンテコな映画でした。公式HPのコメントがいかにもな人たちばかりで、なんだか腑に落ちましたよ。

『堀川中立売』(2010/日本)監督:柴田剛 出演:石井モタコ、山本剛史、野口雄介、清水佐絵
http://www.horikawanakatachiuri.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17317/index.html

※古澤監督がカメオ出演してはった
※『おそいひと』に出ていた堀田直蔵さん、住田さんも出ておられて、この二人観るだけでも価値あるかも。住田さんの喋る機械(トーキング・エイド?)が、断然進化していた。
※大阪にある「立売堀」という地名がアタマの中にあるもんだから、ずっと『ほりかわいたちぼり』だと思い込んでおりました。大阪近郊の人は、こういう勘違いしてた人もいたのでは。