『ランナウェイズ』

関東、大阪に遅れること数ヶ月。レイトのみながら神戸でやっと上映開始になったので『ランナウェイズ』を観にいってきました。音楽映画は楽しいなぁ。ましてその主役が可愛い女の子たちなら。
ダコタ・ファニングがランナウェイズのvoシェリーを演じるのですが、噂どおりの体当たり演技。シェリーが初潮を迎えるところから始まるので、彼女が主役のように思っていたんだけど、ジョーン・ジェットを演じるクリステン・ステュワートのほうがクレジットは先なんですね。ジョーン・ジェットがこの映画のエグゼクティブ・プロデューサーを務めてる、というのもあるかもしれないけど、音楽映画、バンド映画としてみたら、たしかにジョーン・ジェットが軸かもな、という気もする。
冒頭のシェリーの場面からもわかるように、身体的にも大人の階段一段のぼった的な、思春期真っ只中の女の子の物語。初潮を迎えたら、自分の性やら大人に近づいたことを意識せざるを得ない、ましてシェリーのように背伸びしたい女の子にとっては。シェリーがやりたいこと、なりたいものはよくわからない。デヴィッド・ボウイみたいになりたい?グラムロックの酔わせるような音楽に酔っていたい?目立ちたい、親にかまってほしい、遊びたい・・・。将来の夢はぼんやりしてるけれど、ウエイトレスでは終わりたくない、自分は「特別な何者か」であるように思っている、そんなどこにでもいる女の子。
一方でジョーンはギターに夢中で音楽に自分のすべてを賭けている。音楽業界の人間であるキムの顔を見かけたらすかさずコネとチャンスの手がかりを掴むべく声をかけにいく。音楽をやるチャンスに必死に喰らいついていく、だって彼女にはロックンロールしかないから。ジョーンのような、自分をしっかり持っている、夢中になって自分のすべてをささげてもいいほどの対象があり才能もあるような人が、むかしからちょっと羨ましかった。自分はどれも中途半端、そこまで入れあげる対象も才能もない・・・そんなふうにジョーンみたいな人への憧れはあるけれど、ドラマ的にはシェリーが魅力的なんだよなぁ。彼女は、流れに流されちゃったりして、どこか不安定なんだけれど、ある瞬間ものすごく輝くことがある。一方ふとしたコトで、ドンと落ち込んだり。いいときは調子に乗っちゃうけど、ダウンなときには自分の力で立ち上がることもできないような波がある。そんな彼女を観てると応援したくなる。
ティーンだからアタマの中がすぐ目の前のことや、大好きなものでいっぱいになってしまう。ハイになったりダウンになったり。痛々しいけど、一番キラキラしてる時期をランナウェイズのメンバーとして過ごした彼女らのドラマを映画で観るのは、観客という立場だとすごくたのしいことだけど、実際の彼女らの運命を考えると複雑な気持ちにもなる。ラスト、シェリーはショップで店番をしている。バンド時代のブリーチしたプラチナヘアじゃなくナチュラルな金髪で、アイメイクもしていない質素な普通の女の子。一方のジョーンはロックに賭けて、成功の契機を掴んでいる。このコントラスト。たしかにジョーンが言うとおり、『ランナウェイズは自分のバンドであって、シェリーは歌ってただけ』だ。でも、ガチガチに出来上がった手堅いバンドだったとしたら、ランナウェイズはセンセーションを巻き起こさなかったろうな、と思う。どこか危うかったり、脆いところがあってこそ、バンドとして魅力が出てくるような気がする。アイドルグループだって、ちょっと、お?って思うルックスなり性格の子がいて、グループとしての個性が出てくるような気がする。美少女or美青年集めれば売れるってわけでもなくて。ランナウェイズというバンドはジョーン・ジェットという背骨があるから成り立つんだけど、背骨の上にのっかってる顔はシェリーっていう喜怒哀楽くるくる表情のかわる魅力的な子だったから、あんなに人々を魅了したんだろうな。あやういバランスはあっという間に脆くも崩れるけれど、そんな風に儚いから、人は強烈に引寄せられるのかも。お肉だって、腐る手前が美味しいとかいうじゃん(例え、間違ってる?)。しかし日本のシーンの熱狂ぶりはすごかった。昔はたしかに洋楽アーティストを売るのに日本先行で人気に火をつけるってあったよな。(日本だけで火がついて終了パターンもありそうだけど)。しかし、マジ怖かったです、劇中の日本のファンの熱狂・・・今で言うとレディ・ガガが超人気、みたいな感じかなぁ、案外女の子のファンが多かったし。
しかし、字幕で「girls」を「女子」と訳されるのがちょっと違和感でござった。なんだろう、「女子」って言葉に罪はないけど、最近の多用のされ方がちょっと気になってるんだな、自分。

『ランナウェイズ』(2010/アメリカ)監督:フローリア・シジスモンディ 出演:クリステン・スチュワートダコタ・ファニングマイケル・シャノン
http://www.runaways.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17642/

最後ショップ店員の質素なダコタをみたら、妹とやっぱり似てるなーと思った。かわいい。