クラスの人気者の兄と目立たないその弟の運命『マイティ・ソー』

マイティ・ソー』を上映二日目に観に行きましたよ。ちょっと客席はさみしかったです。3D上映でハコが大き目だから余計にパラパラ感が目立ったかな。しかし、コレ、3Dの必要性あるんかな。3D効果はほとんど感じられなかった。あえていえば、前半のちょこっとと、エンドロールですね(『グリーン・ホーネット』も同じ感想だったな)。単に客単価あげるためなら3Dなんて止めなはれ、と思いました。ちなみにTOHOシネマズで観たのですがマスターイメージの偏光メガネにクリップタイプがありましたのでそれを購入しました(次回からは持ち込めばいい)。きっとそのメガネをONした姿は松方弘樹的な絵面かと思いますが、軽くて観やすかったのでメガネ者の自分としては助かりましたよ。
映画については冒頭からしばしはソーさんの住まう星でのお話なのでCG全開パート。ここで気になったのは、人間がミニチュアみたいに観えることでした。壮大な神話的+宇宙世界を表現すべく大きい画/背景にしているのだと思いますが、人(ていうか神さま?)たちがミニチュアの人形的に見えてある意味マンガ的というか、正直ちょっと、ちゃっちく感じた。だからソーさんが地球に落っことされてからの方がノって観られましたね。登場人物がある異世界に放り込まれ、その世界と登場人物との間に生じる摩擦に物語のおもしろさが生じることって多々あるから、ソーさんが「美味い!もう一杯!」ってコーヒーカップを地面にたたきつけるところとか、妙に現代になじんでフェイスブック用の写真に笑顔を作ったりするところとかかわいかったですよ、むちゃくちゃだけど。
物語はシンプル。ある強大な力を所与で授けられた者がいるが、その力に見合うだけの精神力が彼には備わっていない。その未熟さゆえ、力を取り上げられ、艱難辛苦を与えられる。イニシエーションを経て精神力がアップした暁に再び(以前よりさらに大きな)力が授けられ、めでたしめでたし。この“力”の象徴がこの物語においてはハンマーなんですね。ハンマーは強大な力を秘めているため、それを持つにふさわしい者に属する。ほかの者はその重さゆえ持つことすらできないわけです。しかし、ソーは人間的未熟さゆえその能力を取り上げられ、地球のニューメキシコ≒流刑地?へ飛ばされ、同時にハンマーも放り出されてニューメキシコの岩に刺さってる状態。さぁ、このハンマーは、抜き取ることができたものに属することになろうぞ…、洋の東西を問わずこういう類型はあるなぁ。魔法使いの杖とか、聖剣とか、車田正美先生とか*1
落っこちてきたソーはナタリー・ポートマン演じる研究者とひょんな出会いを果たすわけですが、この偶然は運命、出会いは必然、それは恋…なんですが、まだ恋を自覚する前の初期段階において、2人でハンマーを取りに出かけます。その道中で野宿するんですが、これが重要でして、ここではたき火効果が発揮されるのです。吊り橋効果と同じようなたき火効果、これは日中の道中はいろいろあっても、夜のたき火を囲むと人の距離感が一挙に縮んで親密になり、打ち明け話をしたりなんかもする、という効果です(勝手に名付けた)。あぁ、そういえば『ハングオーバー2』でもたき火効果がありましたね。いいな、たき火効果。
さて、ハンマーのもとへたどり着いたソーが、いざ引っこ抜こうとしても、まだイニシエーションを経ていないのでビクとも動かない。ソーの能力が回復しない+弟のロキの謀略によりソーにとっての危機的状況がどんどん深まっていく。ロキの造形はソーの明るい金髪と陽性のキャラに比して、暗い髪色にどちらかといえば陰性のキャラ。神話世界だけに二項対立で、能天気と悲観的、楽天家と皮肉屋、天真爛漫と深謀遠慮、自信家と小心者、肉食と草食、無精ヒゲ面と眉毛整い面、太陽と氷、ポジティブシンキングとネガティブシンキング、クラスの人気者と班を好きなもので組むときに生じる余りものグループの一員、リア充と非リア充*2。おにいちゃんは元気で活発なのに弟はおとなしいのね、てな他者からの何気ない言葉に傷つく弟、みたいな。「なんだよみんな、ソーみたいな暴れ者、せっかく追い出したのに、ソーを呼び戻せって言いに来たりしてさ、ぼくが王様代理なのに、みんな口を開けばソーソーソーソー…」、ってロキ、おまえの気持ちわかるぜ、でもそんなにイジけて妬みそねみで、がんじがらめにならなくてもいいじゃん、と思う。そんなんじゃ、どんどん負のループにはまっていって、ダークサイドから抜けられなくなるよ…まぁそうなるんだけれども。
ダークサイドのはかりごとは真正面からのポジティブパワーにぶち破られる運命にあります。そのストレートな直球一本勝負みたいなキャラを演じるにはクリス・ヘムズワースは最適だったですね。しかもオーストラリア出身、言うことなし!ワイルドを人の形にしてみたらこんなん出ましたよ的な。アタマ良くなさそうなところとか*3、ハンマーをぐいっと突き出して、アトムみたいに空を一直線に飛んでる姿もなんともいえず趣深かったです。マンガだな、って、いや、マンガだからいいんだよ、これで!日本のアニメみたいにぐるぐる螺旋状に飛んだりせず、一直線飛びだし、トンカチふるって、叩き割ったり。力技やの、おまえ!それも愛嬌。
ナタリーはいつものナタリーポテンシャルを発揮してました。生真面目で賢そうでちょっと一本気な危うい感じ。
あと、カメオ出演のジェレミー・レナー。一瞬でしたが、やはりいい男。アヴェンジャーズのホークアイ役なんですねぇ。ジェレミー観たさにアヴェンジャーズの予習をしようかな、と思いましたよ。『マイティ・ソー』は『アヴェンジャーズ』への布石としては、観ておくべきなんだと思う。クリス・ヘムズワース演じるソーのことが好きになると思うし、顔見せ的にはこれくらい安定感のある典型的お話でよかったと思う。そして、次作、ロキの運命はどうなるのか…。これから劇場で観る方は、エンドロール最後まで席は立たないように。
マイティ・ソー(2011/アメリカ)監督:ケネス・ブラナー 出演:クリス・ヘムズワースアンソニー・ホプキンスナタリー・ポートマントム・ヒドルストンほか
http://www.mighty-thor.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD17860/index.html

※ナタリーの隣にいた彼女がアンジェラ・アキ一派だな、と思い、アンジェラと心の中で呼んでました。
※浅野さんも出ておられて、彼が「THOR」と発音する前は、こちらまで緊張しました。発音難しいから、THって。

*1:うろおぼえイメージです

*2:リア充”て人はリア充なんて単語すら知らないわな。非リアの人は自分の立場を客観的に判断してしまう。ロキはそんな非リアの目を持ってるともいえるような

*3:あくまでイメージです