M・ナイト・シャマラン原案・製作『デビル』

日劇サマーナイトロードショー」と銘打ったシリーズの第一弾として『デビル』が上映されるので、TOHOシネマズに出かけましたよ。この「日劇サマーナイト(略」とはTOHOシネマズが“夜限定”の大人向け新レーベルとして立ち上げたもので、“会社帰りの映画ファンをターゲットにした話題作を、夕方以降のみ上映する”というものらしいのですが、ラインナップを見ると
第2弾『ドライブ・アングリー3D』(8/6〜)
第3弾『ピラニア3D』(8/27〜)
となっていて、どうやらB級アクション/ホラー的なものをやる枠なのかな。ともあれ全国展開のシネコンで公開されてよかった。
シャマラン愛好家が世間には結構いるみたいですが、自分はあまり観てないので、彼の作風とかクセとかよくわかってない。そんな非シャマラニストの自分はどう思うかな、設定はおもしろそうだけどな、と楽しみにしてました。
“ソリッド・シチュエーション・ホラー”と銘打って宣伝しているとおり、とある超高層ビルのエレベーターに閉じ込められた男3+女2の5人を、恐怖が襲う物語。その恐怖の源は悪魔。悪魔は人間の姿をして地上に降りたち、罪深き人間を一箇所に集めて、順番に罰するがごとく殺していくことがある。題して“Devil's meeting”!このミーティングは、映画冒頭の掴みのアレからスタートするのである…ということなんですが、悪魔はなぜこんなにも手間取るやり方をするのでしょうね。ひとりずつ任意の順番で殺していくほうがラクだろうに、環境も仕事も世代も違う人々を一箇所に偶然かのように集めるのはかなり困難なミッションですよ。でも、この面倒くさいコトを悪魔がやる点こそが重要なポイントなんだと思う。
この映画の世界観では、悪魔は神に敵対するものじゃなくて、神の仕事の補佐役みたいです。エレベーターに閉じ込められた5人は、それぞれに罪を負っている。ウソ、詐欺、殺人etc。彼らは、それぞれの罪にみあった恐怖を悪魔によって味わわされることになるわけですが、本来ならそれは神のやる役目じゃない?けどその罰部分を神はどうやら悪魔にアウトソーシングしてるらしい。ふむ。そこで悪魔は、わざわざ罪深き連中を集めて、各々の罪深い人間性ゆえ生じる疑心暗鬼を激化させ、より精神的にも苛んで殺す、という方法をとる。ふむむ。途中で、アレ、どうも悪魔的な、そういうこと?と信じ始めた刑事が、信心深い警備員に「どうやったらそのdevil's meetingを解決できるんだ?」と訊いたら「それは簡単ではないのだが…各々が罪を認めることが必要だ」と。告解をすれば神はその罪を許す、さすれば悪魔は告解したものの魂には手をかけないで引き下がる、と。神様のほうが圧倒的に悪魔より優位にある、というか神総体を構成するものの一部が悪魔、という世界観に近いような。それでラストはああいう展開になるのだろうな、と思う。ものすごくおさまりがいい。あの世界観の中で破綻なく完結してる感があるから。因果応報、信ずる者は救われるというような、ある種の教訓譚とか道徳的物語として収束しているなぁ、というのが若干物足りなかった(というか自分はこういう映画にバッドエンドを求めがちなのかなぁ)、もう一ひねり来るかな、と思ってたので。
でも、伏線をちゃんと張ってるし、はったりもキッチリとかましてるし、密室内での展開はドキドキするし、音でビクっとなったりするし(自分は些細なことにも大げさに驚く“びっくり病”のきらいがあるので)、かなり楽しみましたよ。来るぞ、来るぞ、と分かってて、来た!というショックシーン、監視カメラの利用の仕方、照明<光と闇>の効果、閉鎖空間での人間関係のこじれと疑心暗鬼、人間不信の積み重ねで不満が爆発する瞬間、など。展開も早いので、飽きずに観られるし、伏線、ミスリード、伏線の回収のテンポもよかったし、撮影もよかったな。あとアヴァンタイトルも不穏な感じがしてよかったです。
このシャマランが原案・製作するシリーズはまだ続くようなので、ちょっとたのしみにしてまいろうかな。
『デビル』(2011/アメリカ)原案・製作:M・ナイト・シャマラン 監督:ジョン・エリック・ドゥードル 出演:クリス・メッシーナ、ローガン・マーシャル・グリーン、ジェフリー・エアンド
http://devil-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18581/

※「ヨブ記」みたいに理不尽に災難に襲われる、っていうほうが、自分としてはグっとくるような気がする。だから『デビル』にちょっと収まりのよすぎるところを感じたのかな。