『ミツバチのささやき』を元町映画館で観ました

昨年の今頃、いつものように「今週末は何の映画観ようかな」とmovie walkerサイトの地元の映画館一覧のページをひらくと、見慣れぬ名前が加わっていました。その名は「元町映画館」。クリックするとなんとこのご時勢に新規に映画館がオープンするとのこと。あの商店街の中にミニシアターが?と驚きつつも、ラインナップも頑張ってる感じだし、足を運んでみたいな、とオープンをたのしみにしていました。その後何度か出かけましたが、イスもふかふかしているし、手作り感と映画愛のあるいいところだなと感じつつも、お客の入りは厳しそうで…。行ってお金を払うことが応援することになるだろうと思って、タイミングがあえば元映(略称)に足を運びました(とはいえそんなに行けてないけれど)。
そんな元映が無事1周年を迎え、記念上映でビクトル・エリセの作品を1週間限定上映するとのこと。『ミツバチのささやき』と『エル・スール』の2本なのですが、両作ともむかしビデオで観て以来再見の機会がないまま。今回『ミツバチ』は是非ともスクリーンで観てみたかった。主人公アナのかわいらしさは映画史に残ると思ってきたし、映画も詩のように芸術的だったなぁ、とうろおぼえの自分の記憶に残っている印象の確認もしたかったのです。
今回スクリーンで観たアナのかわいらしさはやっぱり最強でした。一切の説明セリフは排されていて、正直すべてのシーンの意味を掴みとれてないとは思う(wikiによるとあえて明確に描いてないところもあるようです)。でも、ある人間の原体験となる幼少期の断片を切り取った映画といえば、先日観た『ツリー・オブ・ライフ』も大きい意味では同じジャンルかもしれない。映像のクオリティもお話の壮大さも段違いだと思うけど、やっぱり素朴な今作に惹かれる。少女の不安やよろこび、おののきなどの表現の今作におけるみずみずしさは、時代を経ようともまったく減じることがないな、と思いました。小さなエピソードを切り取るその手つき、夜の闇の暗さ、窓からさしこむ自然光の美しさと部屋の陰とのコントラスト、こども同士のいたずら、そして怪物フランケンシュタインとの邂逅。それらを見つめるアナの大きな目に引き込まれてしまいました。
1週間限定上映の初日とはいえ朝イチの回でしたが、これまで自分が行った中ではかなり席が埋まっている方でした。そしてこの映画の上映のために高価なヨーロッパビスタのレンズを買ったとのこと(自分は素人につきわからないけどなんだかすごそうだ)。
映画の幕開け、移動巡回映写トラックに子供たちが群がる。「映画がきた!あたらしい映画がきた!」とワクワクする子供たち。荷台から運び出されるフィルムに群がって、主人に「これおもしろいの?」と質問責め。「あぁ、おもしろいよ!」と自信たっぷりの主人。そして次々に椅子を手にやってくるお客さんたち。おどろおどろしい見世物的映画が始まる、そのタイトルは『フランケンシュタイン』。アナは姉とともにじぃっと見つめてます。そのアナたちを見つめるスクリーンのこちらのわたくしたち。
街の小さな映画館の開館1周年記念上映にふさわしい映画を観られてよかったなぁ、と思いましたよ。

ミツバチのささやき (1973/スペイン)監督:ビクトル・エリセ 出演:アナ・トレント、イサベル・テリェリア、フェルナンド・フェルナン・ゴメス、テレサ・ジンペラ
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD13982/index.html

※元町映画館HP→http://www.motoei.com/ 
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