ジェイソン・ステイサム主演『メカニック』

72年にチャールズ・ブロンソン主演で製作された映画のリメイクだそうですが、オリジナルは未見でしたので、まっさら且つ軽い気持ちで観に行きました*1。超絶スキルを持った暗殺仕事人(?)をジェイソン・ステイサムが演じるお話です。『トランスポーター』シリーズなんかで作り上げたキャラを踏襲した造形なので、小細工は不要、ひたすらかっこよく派手に演出し、観客が期待するものを満たして気持ちをアゲられるかにかかった映画といえましょう。結論ぽいことを先に書くと、今作はきわめて典型的なパターンに則って作られた奇を衒わない安心のフレームなので、そんなにドキドキハラハラはしません。なによりステイサム演じる主人公は完璧すぎる。観る側としては、ステイサムは今作ではどんなプロの仕事をするのかな〜、というのが楽しみなわけで。
冒頭でスマートに仕事をこなす手際を描いて華麗に主役のアーサー(ジェイソン・ステイサム)を紹介。さて本編。アーサーは組織のトップから、アーサーの恩人でもあるハリー(ドナルド・サザーランド、超シブイ)が組織に対する裏切り行為をしたので殺せ、とのミッションをうけ遂行する。ここまでステイサム演じるアーサーのプロの完璧な仕事っぷりを見せつけといて、ついで師匠と弟子パートのスタートです。今作では師匠はステイサム、弟子は自分が殺したハリーの息子スティーブ(ベン・フォスター)です。親父を殺された復讐心を持つスティーブに事実を隠して暗殺のプロになるための教育を施す…よくあるパターンのヤツや!この伏線がいつ回収されるかな*2、という楽しみも込みで、先へ進みましょう。素人のスティーブがプロになるためのトレーニングの描写はあっさりでちょい残念、ちょっとの描写で気付いたら弟子もかなりのテクニックを取得してましたよ。でも、その訓練の成果を試そうと挑む任務でスティーブがプロの洗礼を受けるくだりはよかったですね。アーサーがスティーブに理由を言わずに「犬(それもチワワ)を飼え」「毎日この喫茶店に何時にいけ」などと指示することがすべて任務遂行のための準備になっている*3。若い男の子好きのターゲット(男です)の好みのタイプに近いスティーブに白羽の矢を立てる必然性もちゃんとあるし、スティーブが本番で師匠のいいつけを守らずに片意地張って背伸びしようとして破綻してアワアワするさまもよかったです。
しかし女の出てこない映画だな、と思ってたら『ラスト・ターゲット』よりもさらに薄い感じで女性が出てきてました。仕事のできる男には商売女でもちゃんといい女が寄ってくるセクシャルな魅力あるねん、というキャラのセックスアピール紹介のための飾りですな。すべてはステイサムを輝かせるために…
ラストパートは、うさんくさすぎるスピリチュアル霊媒師みたいなカリスマぶったエロいおっさん*4の暗殺からラストまで畳み掛ける感じでよかったです。プロのお仕事手法のバリエーションも楽しめたし。前半からの伏線もきれいに回収されていきますよ。
スティーブは、仕事を終えて爆発炎上する車をバックにすたすた歩き去りつつも、ちょっと振り向いて確認してしまう、というキャラで、それがなんだかベン・フォスターの顔にうまいことはまってたと思う。一方のステイサムは自信に満ちた顔で、泰然自若としたオレ、と思っていても表情に出さないあたり、さすがです。完璧すぎて一分の隙もない(ステイサムなら炎上する車を背に絶対振り向かないね)男っぷりに観る者は気持ちもアガりましょう。捻りや意外性はないけれど、ここ押してほしいな、ってお願いしたツボを安定して押してくれる映画でしたよ。

『メカニック』(2010/アメリカ)監督:サイモン・ウエスト 出演:ジェイソン・ステイサムベン・フォスタードナルド・サザーランド、トニー・ゴールドウィンほか
http://mechanic-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18907/

ステイサムは見ればみるほど三島由紀夫に似てるなーと思ってました。ちょっと小柄な点や、顔と体のバランス、頭のかたちとか、筋肉とか。

*1:スタンド・バイ・ミー』を観てまだ時間の余裕があったので行ってみたのです

*2:スティーブが実は親父殺しはステイサムだと気付く

*3:無関係に思えたトレーニングが実は…みたいな『ベスト・キッド』感

*4:形容詞つけすぎすみません