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右往左往するユアン『ゴーストライター』

大阪での上映開始初週にロマン・ポランスキー監督の『ゴーストライター』を観てきましたよ。小さめの劇場ながら珍しくも満席!やっぱりポランスキー監督のネームバリュー効果なのかな?客層は大人な感じでした。
ピアース・ブロスナン演じる英国首相アダム・ラングの回想録のゴーストライターをしていた者が謎の死を遂げたことから、後を引き継ぐこととなったライター(ユアン・マクレガー)が、前任者の残した原稿に隠された秘密を追い始めることで危険に巻き込まれていく。端正で、ある種クラシックな物語を丁寧に演出した映画なのですが、その中にあっておろおろ困った顔をするユアンを楽しむ物語なのかもしれませぬ。とにかく右往左往、翻弄されていくユアンを愛でる感じ…劇中のお天気はひたすら曇天のこの映画、観ててちょっとうつうつとしてきそうだけど、ユアンのチャーミングさや適度なユーモアでバランスがよくなってる気がした。
○ユアンはとにかく終始困ってる  最初から困ったなぁという顔をしてます。仕事がなくて困ったなぁ。仕事のチャンスが訪れそうだけど政治家の回顧録ってまたおもしろくなさそうな題材で困ったなぁ。仕事が決まって帰る道でいきなり殴られるし痛いなぁ。やっぱ前任者の死ってなんか不審だしこわいよ不安だなぁ。首相が政治スキャンダルだの戦争犯罪だので糾弾されだして困ったなぁ。やっぱり前任者の死には首相の過去が関係ありそうだな、どうしよう困ったなぁ…などなど。不安なまなざし、眉間にシワ、すこし高めの声、困っちゃった犬みたいな顔がはまってるユアン・マクレガーはいいキャスティング
○困り顔キャラのディテールにぬかりがない  首相の滞在する海辺の家から、自転車を借りて出かけようとするユアンに使用人が「客人用の車があるよ。雨が降るからどうぞ」って言ったのに、不審死をとげた前任ゴーストライター氏も愛用してたと知ると、なんだか薄気味悪くなって*1「や、やっぱりいいよ」と若干うろたえつつ自転車をチョイス。使用人のおじさんが「寒いから帽子と手袋どうぞ」って自分のを貸してくれて受け取り、自転車を漕ぎ出すも車輪が砂にめりこんでヨタヨタ…。なにこの一連の萌え感。走り出すと案の定本気の雨が降ってきてなおさら困るユアン。あんまり寒くて貸してくれた帽子をかぶろうとするも、匂いチェックして若干イヤそうな顔をするユアン。この細部の描き込みこそキモ!ユアンが困れば困るほど観る側としてはユアンに肩入れしたくなりますよ。
○動けば動くほどますます困った状況にはまっていくユアン  首相としっくりいってないアピールからの“わたしさみしいのオーラ”を出す首相夫人。風呂上りのバスローブ姿で夜中にユアンの部屋へ。洗面所に行き「やっちゃダメだぞオレ」と鏡の自分に言い聞かせ、部屋に戻るとベッドにて全裸で待っている模様の首相夫人。おっ、という目の表情をしつつ落ち着きをよそおって、ベッドに入る前にバスローブを脱いじゃうユアン。尻まるだしの情けない感じを見せといて…からの、ベッドにもぐりこんで結局夫人と抱き合っちゃうユアン。思わず客席からは笑いが漏れますよ。古いタイプのハニートラップにまんまとかかるユアン。以下、ずっと観客の予想通りの“そっちに行っちゃダメだろ”という方に行ってしまいます。せっかく得た地元民からの情報とか前任者が秘密裡に残した資料の存在をあっさり明かすユアン、資料に書き残された気になる電話番号に無防備に自分の携帯電話ですぐかけちゃうユアン、カーナビの音声案内で前任ゴーストライター氏が入力してた目的地についつい行っちゃうユアン。…結局ラストまでそれが続き、結果としてあぁなるわけですな…。
最後のショットも決まってますよ。物語に目新しい斬新な要素があるわけではないけれども、ユアンをはじめ役者陣の演技といいポイントを押さえた演出といい、とても楽しめました。観ながらついこの間までのイギリスの首相とか対イラク戦争へのアメリカへの協力体制とか思い出させるあたりもいいし。ただ、google検索で出てくる程度の情報で真相に迫ることになるって、もうちょっと早期にできたんじゃないの?とかは思いましたがね。結論:とりあえずユアンの困り顔とgoogle無双ってことか。

ゴーストライター(2010/フランス=ドイツ=イギリス)監督:ロマン・ポランスキー 出演:ユアン・マクレガーピアース・ブロスナンオリヴィア・ウィリアムズトム・ウィルキンソンほか
http://ghost-writer.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18596/

*1:このあたりの小心な感じもナイス