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『探偵はBARにいる』

twitterやブログでの評判に背中を押されて観に行ってみました。もともと松田龍平が出ているっていうので気にはなっていたのです。『まほろ駅前多田便利軒』での便利屋のバディ的存在の演技も印象的だったし、今作でタッグを組む相手が大泉洋というのもなかなかいい感じそうじゃない、ということで。
舞台は北海道は札幌ススキノ。とあるBARに電話をすればつかまえられる「探偵」の“俺”(大泉洋)の語りで物語は進みます。“俺”は助手兼運転手である高田(松田龍平)と共にやっかいな依頼を片付ける日々。そんなある日、一本の電話がかかってくる。身元を明かさない女性は、とある依頼のためにお金を振り込んだ、という。その依頼を受けたことから、裏社会が絡む陰謀めいた厄介事に巻き込まれていく…。
自分にとってのこの映画の一番の印象ポイントは“昭和の大人世界のイメージの記憶”でした。今作を観ながら、子供の頃に学校から家に帰り着いてTVをつけて何となく観ていた再放送の刑事モノや『探偵物語』みたいなドラマから得た印象を思い出しました。すこしざらざらと粒子の粗いフィルム感と子供には立ち入れない大人の夜の世界の感じというのかな。その映像やストーリーから得る質感は子供だった自分には、殺人や感情のもつれ、金、陰謀、エロなどのドラマの構成要素全部ひっくるめて“大人の世界”のイメージと直結していて、ちょっと怖いような感じがあるとともに、“大人になったらなりたい職業に就いて夢は実現できるんだよ!”という、学校で教えられるような“大人になることがファンタジーである世界観”とは異なる“清濁*1ぐっちゃぐちゃな現実の大人の世界”を覗き見ているような気分になったものでした。昔覗き見た大人の世界の雰囲気:大人はタバコを吸い、酒を飲み、水商売的世界があり、男女の関係がなんだかあったり、色恋や情で行動してしまったり、いい加減だったり、どんな職業でご飯食べてるんだかわからないような人間がいたり、いかがわしかったり、暴力があったり、金次第だったりする世界…今作は、子供の頃植えつけられた、昭和の猥雑な大人世界のイメージの記憶が脳の奥深くから呼び覚ますように再現されていたのでした。小道具やロケーションも大変こだわっているのがわかりましたね。小雪の経営する高級クラブ、BAR、電話、オセロ、喫茶店、喫茶店のメニュー*2、ボーリング場etc…。そんなふうに映画の空気感としては懐かしいんだけど、出てるメンツは今現在脂がのっている俳優陣で、それが新鮮だったな。
あと、“いい顔”=“味のある顔”がたくさん出てくるところもよかった。主役と準主役級には美男美女を揃えて、脇に申し訳程度の個性派俳優を置くのが最近よくある作りな感じですが、今作ではいわゆるイケメンではなく、大泉さんにしても浪岡一喜、田口トモロヲ松重豊…なにより注目を集めた高嶋弟!すばらしい怪演でしたね。日本にだって韓国に負けない顔面力があるんだな、と思いましたよ。
ストーリー的にも最後までナゾで観客を引っ張っていけているし、大泉さん演じる探偵がどんどんナゾのめり込んでいって、その過程で犠牲が生じてしまったことで感情を爆発させるところもよかったな。フィクションにおいて人は簡単に死にます、ましては脇キャラはね。でも、普通の世界なら主役も脇役もないんだから、人ひとり死ぬって重大事。劇中起こった犠牲のその重さにショックを受け、どうしようもない怒りだかなんだかをぶちまけるところに、“あぁ、普通はそうだよな”と思うと同時に劇中の「探偵」は自分と同じような日常に生き、普通の感覚を持っていて、エモーショナルな性格である点がよく表れていてとても印象深かった。大泉さんの普段のキャラと「探偵」の理で割り切れずについ情に引きずられるキャラのリンクもあいまって、大変いいキャスティングだなぁと思いました。松田龍平はとにかくかっこよくて、トボけたような飄々とした役のはまりっぷりは『まほろ』からの流れもあって、本当に厭味にならずしっくりしているな、と思いました。彼は偉大な父の面影も継承しつつ、オリジナルなあり方をきちんと獲得している。あ、小雪さんもよかったですよ(あっさり)。
キャラの色付けのために古い古い水色の車*3で尾行とかするのは、さすがに目立ちすぎるがな、とか、明らかに現代の設定ながら小道具の昭和感をマッチさせていくのはなかなかバランスが難しいだろうな、とかまぁいろいろあるけど、懐かしいフィルムの画質の手触りとユニークなキャラ、情に流される探偵の行動など、映画トータルがかもしだす、新しいけど甘くてなつかしいノスタルジーに気持ちよく身をゆだねてみましょう。エンドロールのカルメンマキの曲を流すあたりまで含めて、製作陣はわかってらっしゃるな、と感じた映画でした。

『探偵はBARにいる』(2011/日本)監督:橋本一 出演:大泉洋松田龍平西田敏行小雪田口トモロヲほか
http://www.tantei-bar.com/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18215/

松田龍平の演じる北大の助手?の役柄にどこかしら『動物のお医者さん』を思い出したのは自分だけかな
安藤玉恵演じる喫茶店店員よかったですな。彼女は『松ケ根乱射事件』がすごく印象的だった。あとマギーはあとでキャスト確認してわかったくらい別人な感じでしたね。
※北海道いってみたい。

*1:濁成分多め

*2:ナポリタンとか

*3:ワーゲンかな?