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『ラブ・アゲイン』を観たよ

“中年の危機”を迎えた夫婦がその危機を乗り越えるというのが軸になったドタバタのラブコメなので、そういう意味では邦題どおり“ラブ・アゲイン”でも間違ってないのですが、内容からすると、原題の『Crazy,Stupid,Love』がしっくりくる佳品でしたよ。loveのためにcrazyになったりstupidだったりするのは男も女もおなじ、ということで、そんなふうな傍から見てたらおかしな人々がいろいろ出てまいります。
一番おかしなヤツはスティーヴ・カレル演じる主人公キャルの13歳の息子でしたね。4歳年上のベビーシッターの女の子に恋をしてしまい、「ソウルメイト」を連発し求愛。運命論者ゆえに一途で思い込みが激しい…冒頭で彼がひとりで部屋でゴソゴソしてるのを彼女に見られてしまった後、「あの、あんなことする時いつも君のこと考えてるんだ」と彼女に直接言っちゃうんだから、ちょっと…いやだいぶイタイ。そりゃベビーシッターちゃんもドン引くよ。息子の担任の教師ケイト(マリサ・トメイ)もおかしなヤツ。妻に離婚を申し出されてヤケになったキャルはバーでナンパ待ちしていたケイトに声をかけ一夜を共にしてしまう。そんな彼が保護者面談の日に別居していた妻に久々に会って二人そろって教師のもとへいくと、なんとアノ夜の彼女が…お互いに驚きつつも必死に取り繕おうとするキャルと違ってケイトは「なんであれ以来電話くれなかったのよ、バカヤロー、キーッ」って。オックスフォードまで出た秀才の教師が自分の体面も考えずにそんな行動するかよ、と笑いながら観てました。彼女も観客がドン引きしかねないキャラだけど、マリサ・トメイが明るくキュートでラブコメな雰囲気にぴったりだからOKなのです。
妻エミリー(ジュリアン・ムーア)に離婚を切り出されたキャルはたまたま出会ったライアン・ゴズリング演じるプレイボーイのジェイコブに、LEON的な雑誌っぽい伊達男に改造*1されていくのですが、その過程でキャルが履いていたニューバランスの靴を「お前は高校生かスティーブ・ジョブスか?そうじゃなければスニーカーなんて履く資格ないんだ」と切って捨てられるところとか、GAPのジーンズはダメ!と全否定されたり、あと個人的にはバリ財布(マジックテープで留めるサイフ)をイケてない時のキャルが使ってるのがツボでした。アメリカでもアレはダサいと思われてるのなー…。ほかにもジェイコブのオシャレな自宅にあるアイテムが悉く通販アイテムだったりっていういちいちのディテールが楽しい!ジェイコブが女の人をオトすときの決定打が『ダーティ・ダンシング』のラストシーンで女性をリフトしてクルクル回すのを再現することだ、とか、倦怠期を感じたエミリーが夫には残業とウソをついて『トワイライト』を観に行ったんだけど全然おもしろくなかった、とか、こういう固有名でクスッとさせるのがアメリカのラブコメには多いですね。固有名を含むディテールで観客が物語をグッと身近に感じられるという効果があるのかな。こういう会話劇がとても楽しかったです。
幼い息子の恋はひたすら自分勝手、自分の思いだけでいっぱいいっぱいのcrazyでstupidなだけの段階。プレイボーイのジェイコブは女性とはうわべだけの気軽でその場だけの浅い関係を色々経験してきたけど、エマ・ストーン演じる弁護士ハンナの人間性に惹かれて生まれてはじめて、きちんと恋をする。そしてキャルは息子のstupidだけど一途な恋に触発されるところもあって、妻との高校生以来の絆を再確認する…などなど、loveがゆえにcrazyになったりstupidになったりしている色んな態様を観られますし、それらのキャラもあたたかく描いているので気持ちよいです。人物相関図の恋の矢印はあちこち向きまくって結構複雑なんだけど、それらの糸が一挙に交差するクライマックスのところも混乱しないようにうまく作られてるし、伏線や小道具のつかいかたもこなれてる。テンポもいいし、中年男に感情移入してきもちよくラブコメを楽しみたい方にはぴったりだと思われます。あ、でもケヴィン・ベーコンがいい人そうで実は悪いヤツ…とかっていう捻りがなくってちょっと残念。せっかくのベーコンなのに…(笑)
ラブ・アゲイン (2011/アメリカ)監督: グレン・フィカーラジョン・レクア  出演:スティーヴ・カレルジュリアン・ムーアライアン・ゴズリングエマ・ストーンマリサ・トメイほか
http://wwws.warnerbros.co.jp/crazystupidlove/index.html
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19670/index.html

※しかしアメリカ人のいう「ソウルメイト」の意味はどんなもんなんだろ?運命論なのかなんなのか…和書で書名に“ソウルメイト”て単語が入ってると、大概、精神世界系の本のようなイメージなのですが、そこまでトンデモな語感はないのかな。
ライアン・ゴズリングはイケメンで肉体も鍛えてて、プレイボーイで自分が女のあしらいがうまいことを自覚した石田純一ぽい(?)役なんですが、どうしても『ブルー・バレンタイン』のダルっとしたのイーグルトレーナー姿がチラついて…これもある意味『ブルバレ』トラウマか。
ジュリアン・ムーアはさすがの安定感!エマ・ストーンも自然でキュートでした。

*1:TVの企画っぽい…