『新少林寺/SHAOLIN』

ジャッキー・チェンアンディ・ラウニコラス・ツェーというスターが顔を並べるポスターに惹かれて観に行ってきました。まず冒頭に馬を駆るニコラス・ツェーらが少林寺になだれ込むところから始まります。馬はサラブレッド的な種類じゃないのがよかったな。脚が太くてかわいらしくてたくましくて。劇中たくさん馬は出てくるんですが、ひっかけられたり転がされたり蹴られたり散々な目に遭いますので、丈夫な脚を持った馬じゃないと耐えられないわな。
そんなふうに傍若無人に馬を駆るニコラスたちに対してウー・ジンをはじめとする少林寺の師兄たちのカンフーがまず冒頭で観られますよ!アガる!…けどここの格闘はあっさり終了。続いてアンディ演じる将軍が信頼していた部下のニコラスに裏切られるシークエンスになり、命からがら逃げだしたアンディは冒頭で自らが蹂躙した少林寺に駆けこみます。瀕死の重傷を負った娘の命を助けてくれ、と転がりこんだアンディが、ついに息を引き取った娘の死を受け入れられず「助けろったら助けろ!助けないならお前らみなごろし!」と暴れまくるところのダダっ子っぷりが甚だしくて、あそこまで大人気ない八つ当たりは久々に観た。まぁ、こういった人間のできてないっぷりを見せつけといて、後半アンディが少林寺の僧として仏門に入り、悟り、自己の執着を断ち切り、他のために生きることができるようになる、という“人間ができていく過程”を描くためのコントラストのためなんだと思いますが。
ジャッキー・チェンはゲスト程度?と思いきや、結構ちゃんと出てました。厨房担当でちょっと自信のない、でもほんわか癒し系という彼のためのような役でした。アテ書きなんだろうな。ちゃんと後半に見せ場もありましたよ。動けるなぁ、ジャッキー。その姿とにこにこした笑顔に「南無阿弥陀仏」と思わず手を合わせたくなる…ジャッキーこそが仏のようでした(実は仏の世を忍ぶ狩りの姿だったとか)。あとジャッキーの作った饅頭が美味そうでした!アンディがジャッキーに作ってもらって貪り食う麺も美味そうだったな…観ながらすごくお腹空いてきた。
ニコラスは憎々しい表情がよかったな。アンディほどのベテランを向こうに回しても一歩を引けを取らない…ケド、謀反を起こしたあとの、無精ひげ、ヘアセットの崩しよう、シャツのボタンは上から三つほど外す*1とか、お前は中学生日記の不良か、とつっこみたくなるステレオタイプさもほほえましかったです。ある種のわかりやすい物語ですから、わかりやすく敵役な造形がベタに必要なのです。ただ、本当の敵はニコラスにあらず…というあのラストの展開もカンフー映画のある種の定型ですね。
少林寺の僧たちの修行っぷりをもっと描いてほしかったけど、木の柱の上にY字バランスで立ってるところや、型の練習のところをみられただけでもうれしかった。修行とか練習風景は最高ですな。あとアンディとちびっこ僧の冬の夜の練習風景も忘れ難い。ちびっこの自信に満ちた演武っぷりが最高。アンディは彼に引っ張られてたかも…(とはいえ、彼もああいう型をやってサマになるところはさすが)。ラストの『太陽にほえろ』ばりのベタな殉死シーンの連続と大破壊の派手さ、アンディのあのラストはすごかった。やりすぎやがな…いや、一見の価値はございましょう。ぜひ大スクリーンにてどうぞですよ。そして観終えた後は、ことあるごとに少林寺の僧ばりに「あーみーとぁーふぉー*2」と手を合わせて言いたくなるに違いない、かな。
『新少林寺/SHAOLIN』(2010/香港=中国)監督:ベニー・チャン 出演:アンディ・ラウニコラス・ツェージャッキー・チェンファン・ビンビンウー・ジン、ユエ・ハイ、
http://shaolin-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19309/index.html

※アンディの愛娘の名前が「勝男」。最初はものすごく頭の中で混乱しました「え、勝男だけど娘で、えっと…」

*1:イタリア伊達男コーディネート?

*2:阿弥陀仏:発音はヒアリングにつき不正確