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アナログ心をくすぐるのです『リアル・スティール』

おもしろかったですよ。脚本や設定、とくにボット・ボクシングのルールについては、もうちょっと事務的にでもルール説明やっちゃえばよかったのにとか、少年が拾うロボット、アトムの他のロボットと違う特別さもよくわからない、とか、ラストファイトは燃えるけどシャドー機能使ってるわりに、アトムがチャーリーを全然見てない、とか、気になる箇所はあげればキリがない。でも、そこらの矛盾や齟齬も認めたうえで、シンプルな物語ゆえの強さがあります。とにかく今のCG技術でもって、実在しているとしか思えないほどに映像的に作り込んだロボットを戦わせる!その一点を盛り上げるべく人間ドラマをつくり、しかるべきキャスティングをしていて*1、それは成功していると思う。
しかし2020年の近未来のはずなのに、映画全体になんだか懐かしい空気をまとっているのですよね。ヒュー・ジャックマン演じるチャーリーは元々はボクサーだったけど、人間の肉体ではなくロボットを使った格闘技が隆盛をきわめて引退した…と。まさに体を鍛え、人間のカンや経験がモノを言う、という時代から、コンピュータのプロセッサとか、ロボットの材質等がモノをいう時代へのシフト。アナログからデジタルへのシフトですな。ラストファイトでは、デジタル世代のカリスマロボットデザイナー・マシド*2がその頭脳を振り絞った結晶のゼウスと、チャーリーがボクサーとして自分が体得したスキルをシャドー機能で教え込んだアトムが戦うことになる。最新システム搭載ロボットとマニュアル的な旧式ロボットのどっちが勝つよ?と、なれば物語上、後者のほうが勝つに違いないわけで(車に例えるとオートマvsマニュアルみたいな感じ)。人間、“カン”とか“職人的な感じ”って好きだものね*3。そしてラストファイトで、音声認識が壊れ、最も肉体感覚にちかいシャドー機能を生かすあたりもアナログ心をくすぐるな(このタイミングで敵役もコンピュータ制御からマシドのマニュアル制御に移行するのがいいですね)。
人間がデジタル技術を進歩させてきたけれど、人間が経験で体得した感覚に人間の感情が結びついたときのマジック*4が最後の砦だと思ってる。これだけはデジタルに移植できない…はず。だから『ロッキー4』でもロシア人ボクサーは機械っぽく描写されてたし、そんな殺人マシンなドラゴはロッキーの人間のド根性の前に敗れ去ってしまうのです。最新鋭の科学的トレーニングができない時代遅れなアナログ負け犬が、己の限界を超えて根性で勝利をつかむ、ってベタながらやっぱりカタルシス感じるのですな。だからそんな定型を踏まえた今作も観てて気持ちよくなる。アトムが煙をしゅうしゅうあげてショート寸前になりながらも立ち上がるところは、ものすごく人間ぽくて感情移入しやすくなるし、そんなアトムが相手が疲れるまでボディを打たせて、疲れたタイミングを見計らってガンガン反撃するところはアガりますよな。
内容の違いはあれど、アナログからデジタル(もしくは古いデジタルからより進化したデジタル)への移行って広い年代の人が体験していると思うので、そういう心のツボを突かれると思うな。一種のノスタルジーかもね。そんな移行をまだ経験していないこどもたちにとっては、自分がリモコンでコントロールできるロボットのバトル!てだけで超アガると思うし劇中のマックス少年に感情移入するよね。この映画とコラボしたおもちゃとかゲームを作ればこどもは夢中になりそうだな。
リアル・スティール(2011/アメリカ)監督:ショーン・レヴィ 出演:ヒュー・ジャックマン、ダコタ・ゴヨ、エヴァンジェリン・リリーアンソニー・マッキーケヴィン・デュランド
http://disney-studio.jp/movies/realsteel/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18983/index.html

・映画の世界観によると、近未来ではヒューレット・パッカードがデジタル業界を制するみたいですね。
アウトローな連中はモヒカン。近未来といえばモヒカン。
・アトムかわいかったですな。彼のちょっと下がり気味の眼に哀愁、とか、人間っぽさ、とかを読みこんでしまいますな。
・敵役は情に薄く、強欲で勝ちさえすりゃいいキャラ造形にしてヤな感じに終始させて、こんな敵ならやっつけていいやと思わせてる。そんな敵役はわかりやすく外国人。それもアジアと共産圏…。この設定も『ロッキー4』の時代的ななつかしさ。

*1:子役重要

*2:って日本人?韓国人?

*3:だから、チャーリーがアトムを人間的に取り扱ってボクシングを教える場面をもちっと長く観たかったな

*4:火事場の馬鹿力的な/根性とか?