『私だけのハッピー・エンディング』

ケイト・ハドソン主演。不仲の両親の様子を見てきた主人公マーリーは、そんな親に嫌気がさして距離を置き、対人関係で傷つくことを恐れて恋愛でも深く入れ込むこともない。ひたすら仕事をバリバリこなして、明るく、サバサバ、友人付き合いも心地よいところでキープし、遊びも楽しんで過ごしてきたが、ある日大腸がん末期と判明する。余命を知って、これまでの自分の人生を見つめなおす、というお話。

突然の宣告に混乱しつつも私は平気!平常心だ! ⇒ 落ち着いてきて、やっぱ死ぬの怖い…みんなは結局生き続ける人だから私の気持ちわからないよね…と周囲にあたったり諍いしたり ⇒ 限りある生と死にゆく自分の受容・周囲との和解

こういうのは定型ですよね。ここのところ余命モノ映画を観る機会が続いたせいか、自分のなかで「またこの設定」という気持ちがむくむくと湧くのは抑えられなかったです。昔友人が、思い入れのある主人公が死んだらどうあっても悲しいんだから、そんな映画は卑怯や、と言ってましたが、まぁそれもそうだな、と。ただ、このジャンルの映画がつくられ続けるにも理由があると思うのだけど、たとえば…
・人が死ぬシーンで涙を流させられることで満足を感じる客層がいる
・人は必ず死ぬ運命にあるから、人の死は観る者の胸に迫る一大テーマでありつづける
・人の死に様は人の数だけ存在するから、その映画の死にゆく主人公のキャラを多種多様に設定することで、深くなったり浅くなったり良かったり悪かったりいろいろな出来栄えの映画が生み続けられるので飽きない とか。
さて今作についてですが、ストーリーはよくあるものなので、鍵はケイト・ハドソン演じるキャラクターが魅力的かどうか、ですよね。これについては、自分とは百万光年ぐらいかけ離れたキャラだなー…と思いつつ観てました。明るくて陽気でサバサバしてモテて仕事もできて…病院のドクターにも気軽に声をかけファーストネームでよびかけアプローチできる。自分のようにあだ名ハードルが高いような人間*1には、彼女は戦闘能力が高いっていうかポテンシャルの高い人だよねぇ、とどこか他人事のように感じてしまうのです。そういう意味では『50/50』のJGLのほうが自分にとっては共感できるキャラでした。
でもそんな地力のあるように見えた彼女でも、やっぱり不安や恐怖を抱えきれなくなり、ポンっと爆発させてしまう。彼女といえど、ものわかりのいい陽性な人間ではいられなかった。このあたりの展開はありがちといわばありがち。ただ、父を冷たい人間と断じていたけれど、彼女自身もこどもの頃に父を傷つけるコトバを発していたことを父に告げられ、ふと自分を省みる、というのはちょっといいエピソードだったな。そうやっていったん落ちたのちは、和解と平和にみちたラストにむけて上げていくのみ。最後の音楽と色と笑い声に満ちたセレモニーは、自分もあんなのがいいな、と思った。そもそも灰を海に撒いてもらってもかまわないと思ってる人間なんで…*2。神様がウーピー・ゴールドバーグっていうくらい明るい天国の一部*3が再現されたかのようなお別れは暖かなシーンでしたね。『永遠の僕たち』でも黒の正装をしているヘンリー・ホッパーに対して、普段着のミアちゃんが「最近は明るく死者をおくる傾向があるから、明るい服着ることがおおいのよ」とかって言ってたけど、アメリカ式に黒づくめじゃない、お菓子や音楽があふれるセレモニーがいいな、と。ニュー・オーリンズを舞台にした意味はあの明るい音楽にあふれたラストのためだったのかな。
全体には特に斬新な感じもないオーソドックスなお話でしたが、やっぱり自分をわかってくれる人、心配してくれる人、愛している人がいるっていうのは本当にしあわせなことだ、そして、その人たちに思いを伝えるには言葉や行動が必要なんだな、とあたりまえのことをあらためて感じましたね。ただ、余命モノには自分は暫くは観なくていいかな…(たまたま同じようなテーマの映画の日本での公開が集中してしまったんだろうけど)。
『私だけのハッピー・エンディング』(2011/アメリカ)監督:ニコール・カッセル 出演:ケイト・ハドソンガエル・ガルシア・ベルナルキャシー・ベイツローズマリー・デウィット、ルーシー・パンチ、ロマーニー・マルコ
http://happyending-movie.com/index.html
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19986/index.html

※あとやっぱり自分にはアメリカン・ジョークはよくわからんなぁ、というのも感じた。会話において洒落た小噺が必須ってたまらぬよ。アメリカ人に生まれなくてよかった…。

*1:相手を“フランクに”あだ名で呼ぶことすらなかなかできない

*2:そのほうが墓参りとか不要でいいかな、とか

*3:原題『A Little Bit Of Heaven』