午前十時の映画祭『夜の大捜査線』(1967)、『ストリート・オブ・ファイヤー』(1984)

2011年の映画納めはこの2本でした。30日までに掃除などをすませ、大晦日に観にいきました。
夜の大捜査線
シドニー・ポワチエ主演。
黒人への人種差別の根強く残ったアメリカ南部を舞台にした映画。その差別っぷりに観ながらイライラしていました。昨年観た『マンディンゴ』と変わらないほどのあからさまな差別の描かれ方なのですが、これがわずか45年ほど前の現実。そしてこのような差別の現状、差別意識の根っこは、今もあまり変わっていないのかもしれない。
理知的なシドニー・ポワチエがひたすらスマートでかっこよく描かれているのですが、差別意識を根底に持ちながらも、ポワチエに接してすこし変化の生じる警察署長がいいですよ。そして原題『In the heat of the night』のとおり南部の夜のじわじわ蒸すような暑さ、壊れた空調、汚い地元のダイナー、ガタのきた施設設備など全体の空気がかもしだす不穏さもよい感じ。印象的だったのは署長がふと孤独な身の上についてつぶやき、ポワチエに「お前も孤独じゃないか?」というような問いかけをしたところ、ポワチエが「あんたほどじゃないよ」という意の返事をした瞬間、ハッと我に返った署長が「同情なんかするな」というところ。肌の色を超えてすこし相手に共感を抱きつつあったのに、でも完全に相手心を開ききれない…完全に胸襟を開くのを咎める思いは何に由来するのか。なかなかに味わい深かったです*1。音楽もレイ・チャールズのソウルフルな声がのっかってとても映画に合ってた。
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18055/index.html

ストリート・オブ・ファイヤー
これは最後にアノ曲(tonight is what it means to be young)が流れるぞ、あの曲、あの曲*2…って感じで待ってました。最初に「これはロックの寓話だよ」とテロップがながれ、時代も不分明な設定(場所はリッチモンドの設定)。まずこの枠組みに乗れればOK。派手なカーチェイスに銃撃、炎、そしてタイマン勝負。ウィレム・デフォーの若いのにすでに老けてる(そしてどうみても魚屋の兄ちゃんみたいなつなぎを着ている)ところに驚きつつ、ノンストップで進みますよ。そして、お約束のラスト。あの曲が流れる!あーこれはアガるわ。完全吹き替えでダイアン・レインは歌ってないけど、映画内リアリティはこれでOK。某邦画でロック映画なのにヴォーカル音が消失しっぱなしだった、というのはやっぱりダメだよね、と改めて思ったりもした。戸田さんの字幕だったんですが、男勝りのマッコイ(エイミー・マディガン)が女性なのに一人称を「オレ」にするっていうのは、なかなかの冒険だな、と思ったけど、こういうノリも80年代っぽさが表れてるよね、と思ったりもしたのですよ。
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18034/index.html
ストリート・オブ・ファイヤー [DVD]

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*1:ウィキによればアドリブとのことですが…

*2:「今夜はAngel」のタイトルで椎名恵によってカバーされ、TVドラマ『ヤヌスの鏡』の主題歌として日本でも大ヒットした:wikiによると