邪悪(だけどちょっと手ぬるい)“歯の妖精”軍団『ダーク・フェアリー』

監督の名前より製作者の名前の方が大きく出ることがありますね。今作も監督ではなく製作者のデル・トロの名前の方が大きく出てます。たしかにそのほうが引きが強いよなぁ。というわけで観に行ってきましたギレルモ・デル・トロ製作・脚本『ダーク・フェアリー』。予告を観て大いに期待したのは、デル・トロの傑作『パンズ・ラビリンス』と共通する要素があるから…少女が古い洋館で別次元のなにかと遭遇/コンタクトするらしいよ、と。ちなみに『地下室の魔物』のリメイクとのことですが、オリジナルは未見。
結論からいうと、あれこれ辻褄が合ってない細部を忘れさせるほど入り込むことはできなかったなぁ、という感じでした。ダークファンタジー/ホラーだから、サバイブする者もあれば、犠牲になる者もあるだろう、とか、ご都合主義や不自然なまでに危機察知能力の低いお気楽な俗人が紛れ込んでいたりするんだろうな、というのも予測の範囲内なのだけど、主人公の少女サリーの父親アレックス(ガイ・ピアース)の造形が甘すぎて、ちょっと気になっちゃいました。金策がどうの、借金がどうの、ローンがどうの、という小者っぷりを発揮するアレックス。でもそんなのんきな父さんが最後の最後、「やっぱりこの屋敷ヤバい!オレは娘を愛してる!娘を守りたい!」って、方針を急転回しすぎじゃん。お前は最後まで暢気でいてヤラれちゃう役なのではないの?と思いきや……というラスト。不自然なまでに父親に対しての妖精たちの攻撃が甘いのな…最初の使用人のおじさんへのアタックで見せたあのキレはどうした!と邪悪な妖精軍団を問いただしたくなりました。
ケイティ・ホームズ演じるガイ・ピアースの恋人:キムは義理の娘になるかもしれないサリーと仲良くなれるよう努力したり、サリーがみたモノの正体に迫ろうとしたり、と一生懸命なのにひきかえ実の父と母のつめたさ、自分勝手さが目立ってイラっとしましたね。この悲劇の元凶はお前らいい加減な(元)夫婦じゃん。キムはアレックスに「自分もようやっと子ども時代の葛藤を通り越したばかりなのに(自分に養母はムリ…)」と言いつつも、必死に少女を守ろうとする。このあたりのキム自身の抱えるトラウマ的な何か、みたいなバックグランドと少女の持つ痛みの共有と共感みたいのをもっと掘って描いてくれてたならよかったな、とか。
結局、実の両親が一番邪悪だから、(ちょっとぬるい)邪悪な妖精軍団があばれまわっても、あいつらに対する恐怖とか腹立ちとかがわかなくて。実の親の邪悪さは、ラストでアレックスがしれっと家を競売にかけるところからも明らかですよ。邪悪な妖精軍団は、光に弱いっていいながら、結構明るいパーティ会場に潜入したりして、ちょっと設定がぼんやりしていたのと、CGで作られたキャラ感も最後までとれなくて、なかなかノレなかったかな。あと、少女とケイティ・ホームズが微妙に似ていたため、予告を観ただけではてっきり実の母子設定だと思ってました。なんだか不思議な相似で、それもちょっとしたノイズだったのかもな。
でもお話の入りは雰囲気たっぷりだし、この現実世界に生き辛いがゆえにお絵かきの世界に没頭したりしている少女だからこそ邪悪な妖精軍団を自ら招き入れてしまうことになるくだり、とか、親の都合で郊外の家へと連れられてくる少女*1、事情を知っていそうな召使、等いい要素そろってるのに…とちょっと惜しい感じがしたのでした。あ、でも100分のサイズはよかったですね、うん。
ダーク・フェアリー(2010/アメリカ=オーストラリア=メキシコ)監督:トロイ・ニクシー 出演:ベイリー・マディソン、ケイティ・ホームズガイ・ピアース、ジャック・トンプソン
http://darkfairy.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20152/index.html