読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

余命の可視化された世界『TIME/タイム』

ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・セイフライド主演の『TIME』を観てきましたよ。観た直後にもツイートしたのですが、自分の中の分類では昨年の『アジャストメント』枠なんですよね。SFと思ってみると、世界観を打ち立てるための設定とかディテールとか雰囲気な感じで結構ぼんやりしていたり(つっこみどころ満載)、SF的設定だけど描いているのはベタな恋愛だったり、全体に甘いな〜、という感じで、うん、まぁ、ちょっとアレだけどどうにも憎みきれないヤツ、という感じ。
遺伝子をどうにかする技術が進歩したとかで、人はみな25歳より歳老いることはないかわりに25歳になると1年分の余命しかなくなってしまう。この世界では時間=通貨となっており、貧しいものは労働により時間をかせぎ、時間で食物を買い、ローンを支払い、24時間を切るような余命でカツカツ生きている。余命は左腕に蛍光緑色のデジタル表示で刻まれている。貧しき者の暮らすスラムゾーンで生きるウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、ある日、一世紀を超える余命を持った者があまりに長い生に倦み、自棄になっているところを時間強奪ギャングから助ける。彼はその余命をウィルにあげて自殺するのだが、ウイルは治安を維持する時間監視局から時間強奪殺人の疑いをかけられて追跡されることとなり、富豪の娘(アマンダ・セイフライド)を人質に逃げるのだが…
設定があまりに雰囲気だったり、ご都合的だったり、ボニー&クライド展開とか…全体に本当に甘いんだけど、治安を乱すウィルらを追いかけつつも、自分たちも1日程度の余命しか日々割り当てられないキリアン・マーフィ演じるタイムキーパーのレオンがずっと気になってました、主役の二人よりもね。レオンは時間の治安維持活動をしつつも彼自身もカツカツのその日暮しの余命の中で、粛々と自分の仕事をこなしていく。自分の職責を引き受けてその任務に忠実に日々過ごしている彼は、百年後もかわらず日々その日暮しで仕事を粛々とこなしていくようにみえた。まさに終わりなき日常を生きる…それに耐える精神の強靭さを持っているように見えるレオンはどうしてそこまで強いのかな?と思ってしまう。富豪からの買収の申し出もにべもなく断る。山がそこにあるから登る、かのように、世界がここにあるから、守る、ということか。レオンのような強靭さは自分にはないので、すごいなと思うけど、結局彼は今既にある世界/システムを支えることしかしてないですよね。そういう意味では、ちょっと(いや大分?)違うんだけど、吸血鬼と似ているような気もする。人の生血を吸って生きながらえる…というシステム自体は変えようがない所与の運命よな、と吸血鬼たちが受け入れているのと同様に、レオンは時間=通貨で富めるものと貧者の格差が厳然として存在している既存の世界=秩序として疑問の余地なく受け入れている。だから、それを乱す者は取り締まらねばならない、と。だからレオンにもどこか諦念から生じる寂しさ*1のようなものがつきまとっていたのかな。
その既存の世界に風穴をあけようとするのがウィルたちなのだけど、結局はほんの針の一刺し、だよね。システムを根幹から動かすものじゃない。そこが物語としてもちょっと弱かったかな、と(自分にとってはですが)。だからシステム側の人間ながら日々を生きる強靭さを持って職責を全うしようとするレオンの方が魅力的に見えたような。既存のシステムに決定的な打撃を与えるにはイーサン・ホーク主演のバンパイア映画『デイブレーカー』なみの荒療治が必要かなー。
人が生きるのに必死なのは自分の余命が分からないから、というのもあると思うのです。あとは好きな人や家族や好きなモノやコトのために生きる、というのもあるか。でも、余命が可視化された世界だとしたら、どうだろ。人はそれでも必死に生きるかな。ちょっと絶望したり落ち込んだりしただけでも、時間の補充をしなきゃすぐ死んじゃうんだから、人口が激減しそうな気がするな。それでもこの世界に生まれたからには生き延びたいと思うだろうかね。美しいものも、そうでないものもひっくるめていろんなものを見たい、聞きたい、愛するものに出会い一緒に時を過ごしたい、という人間を人間たらしめる欲求は人を強靭にするのかもね。
『TIME/タイム』(2011/アメリカ)監督:アンドリュー・ニコル 出演:ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・セイフライドキリアン・マーフィ、オリビア・ワイルド、ヴィンセント・カーシーザー
http://www.foxmovies.jp/time/index.html?top
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20291/index.html

※見た目は25歳なのに実は100才オーバーとか、見た目と実年齢のギャップを生かしたなにかを見たかったような
※アマンダ嬢はナイスバディでしたねぇ。『クロエ』であっさり脱いでたのを思い出したりもした。あと日本人でいえば松雪泰子ぽいな、と思った。(実際には全然似てないけど)
※デジタル表示って酷薄ですよね。デジタルは人に余地を与えないっていうか焦燥を加速させるな。体重計もデジタル表示だとごまかしようがないものな(なにをどう誤魔化すねん、というハナシですが)

*1:吸血鬼にもそれをちょっと感じるのと同様な寂しさみたいなの