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女王の帰還『ヤング≒アダルト』

映画

『JUNO』の脚本&監督のコンビということで期待して出かけました。観てすぐに思い出したのは同監督の前作『マイレージ・マイライフ』。あのラストのなんともいえない複雑な気分…寂しさやほろ苦さと同じ感覚を味わいました。きっと同じように『マイレージ〜』を思い出した人は多かったんじゃないかな。
ミニアップルことミネアポリスに住むメイビスは美人だけど、恋も仕事もうまくいかなくなってきた37歳の女性。ドンづまり感を覚えている彼女にかつてのBFバディとベスの夫婦から赤ちゃん誕生のお知らせがやってくる。その知らせに現況の閉塞感のおもいがけない突破口*1が現れたかのように感じた彼女は、BFとの思い出のカセットテープでTFCの『ザ・コンセプト』をカーステレオでかけながらひた走る。帰還した彼女を待っていたのは、田舎でしあわせそうに暮らすバディらや、高校時代にゲイだとでっちあげられて暴行され大ケガを負ったオタクなマットだった。マットに「彼はいま幸せなんだから…」と諭されるも、メイビスは「田舎で赤ちゃんの世話にあけくれて不幸な状況にあるバディを今のヨメから奪ってふたりで幸せになるのよ!」とネイルもメイクもバッチリ決めて、あれこれ策略するのだが・・・
かつて高校で“クイーン”だったメイビスはこんな田舎はイヤだと脱出し、ティーンエイジャーの頃と同じようにキラキラした都会で颯爽と仕事をし生活する幸福像に憧れ続けている。TV*2をつけっぱなし、イライラしたときに髪を引き抜くクセも抜けない、愛玩のためだけの犬を飼い、自分がステキだと知ってることを知ってるんだという自負があるメイビス。…人は自分が“特別な何者か”ではないのだ、と知ることで、オトナになるんだ、という説があるとして、メイビスは完全に自意識過剰状態で、つまり未成熟。自分も他人とかわらぬ、ひとしなみな存在である、ということを一度認めたうえでスタートすることがオトナになる過程で重要なポイントなんじゃないか、と思うところがちょっとあるので*3、あまりにコドモすぎるメイビスを見ていてちょっとしんどくなってきたりもした。
鬱陶しい実家も避け、自分が見たいものだけ見て、聞きたい言葉だけ聞き、自分の都合のよいように解釈ばかりするメイビス。ティーンの頃と変わらずクイーンである彼女は、田舎くさい人々を見下したかのようにふるまい、自分の都会的な洗練されたルックスを見せつけようとするのだけど、結局彼女こそが「かわいそうな人」と思われていたのですよね。その逆転の場面の痛々しさ。自分が見下していた、自分が捨てたと思ってたダサくて、向上心もない連中こそが彼女を同情してた。下だと思ってた田舎者らのほうが幸せそうなのはなんで?納得できない、納得したくない、認めたくない。でも地元で現実を突きつけられて、いやでも現在の自分のドンづまり状況を認めなきゃしようがないコトになるわけで。とことん落ちて、落ちた先にいたマットにすがりついて*4自分を保とうとするわけだけど、ここから先が予想外だったな。(以下ラストのネタばれます)。
高校生の頃からメイビスに憧れていたマットの妹に「あなたは都会でライターもして美人で最高よ!」と持ち上げられて、メイビスはふたたび振出しに戻ったかのようなラストを迎えます。結構びっくりした。映画を観た直後は「そうよね、やっぱ田舎はダメだわ、わたしのいるべき場所はやっぱココじゃない!」というラストは、メイビスが見たくないもの*5にフタをしてしまったように思えた…いったんは(本当は幸せじゃない自分に)気づいたけど、意志をもってそれらは見ないことにした!無いことにする!というような。人ってなかなか変わらない。メイビスあんたおかしいよ!と言われても、本人は自分がおかしいなんて思ってるハズないじゃん。自分で気づいて、それを認めないかぎり変わらないでしょ。だからあのラスト、メイビスは意識的にフタをして自分のダメなところを認めないことにしちゃったように見えて、もやもやとしてしまった。でも、ラストのとらえ方はもう一説あるかな、と時間が経つと思い始めて。それは『マイレージ・マイライフ』のラストのように“結局そこにしか戻れないんだから、戻ってやってくしかないよな”ということ。現状を認めたうえで、元の戦場(?)でステップをあがるために気合をいれたのかも等々…うーん、観る人やタイミングによって感じ方が違いそうだな、なんて思っているのです。そんなふうに、ある種完結しないで人の心にひっかかって現在進行形でありつづけるような映画っていい映画だよな、と思いましたよ。
ヤング≒アダルト (2011/アメリカ)監督:ジェイソン・ライトマン 出演:シャーリーズ・セロン、パットン・オズワルド、パトリック・ウィルソン、J・K・シモンズ、エリザベス・リーサー
http://www.young-adult.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20389/index.html

※『ピラニア3D』でもあったと思うけど、オタク=ピクシーズTシャツの法則が今作でも見受けられました。
※TFCの『ザ・コンセプト』の使い方が最高でした。ママさんバンドのキャストがばっちりでしたよ。マット役のパットン・オズワルドもよかったですよ
※メイビスの書いてるティーン小説『花のハイスクール』てシリーズ名、いくらなんでもダサくね…と思ったら字幕翻訳者が…

*1:バディこそが運命の相手だったこと思い出した!

*2:ティーン向けドラマかリアリティショー?

*3:とくにちょっと“自意識こじらせた”感じの人にとっては

*4:藁をもすがるような、傷をなめあうような

*5:ほかと比べて不幸せ?な自分の現実