大阪アジアン映画祭 『LOVE』を観たよ

大阪アジアン映画祭シリーズも3本目。今日は『LOVE』について書きますよ。『モンガに散る』のニウ・チェンザー監督が『モンガ〜』とはうってかわって恋愛群像劇を撮っております。おおまかには3組の恋愛模様、ともいえますが、3組はそれぞれに三角関係があったりしますので結構入り乱れます。直接には3組は関係ないようにお話が進行しているけれど実は密接に関係があったりする、という人物相関図を書くとおもしろい感じの設定になっています。秀逸な冒頭ワンカット長回し(風)撮影によって、登場人物紹介的になめらかにカメラの視点が移動していく手腕にはおぉっ、と思わされますよ。シャレててスタイリッシュです。
恋だの愛だのは面倒っちゃ面倒ですよね。だって他人って結局自分じゃないから(当たり前)、気持ちはすべてはわからないし、理解できない行動とったりすることもあるし、勝手に行動したり、かまってほしくないのにベタベタ気持ちを寄せられたり、逆にかまってほしいのにそっぽを向いて興味なさそうでやきもきしたり。それでもそんな“他人”だからこそ気持ちを共有できたりすれば有頂天になったり、幸せな気持ちになったりもするわけで。そんなあれこれを描いておる映画な訳です。吃音の男性とセレブリティな女性。シングルマザーと青年実業家な男性。住む世界も異なる共通点の少なそうな“他者”との出会いが世界が違うがゆえの臆病や、いろいろの面倒さ、というある種の躊躇の段階を飛び越えてしまうという恋のありようとそのなりゆきを描く。あと一組は同じ世代の若者カップルなんだけれども、彼女の親友が彼に横恋慕して誘惑して一度の浮気をし、妊娠したことが判明して三角関係になってしまう:つまり自分の思いを貫くことが大切な友達を傷つけてしまう、という三すくみの状態になっているという困難をどう乗り越えるか…。
前二者の恋愛模様はわりとシンプル(とはいっても結構な障害とかあるけど)。ベタながらもすっきりした演出や役者陣の魅力でもってかれる感じでやきもきしながら、あぁ恋はよいねぇ、と思わせてくれますよ。ただし、若者パートの三角関係が結構やっかいでして。これは三方まるく収まる解決はないパターンです。でも、それって現実ではよくあること。誰かの幸せは誰かの不幸や我慢の上で成り立つかもしれない。そんなちょっと苦いワンポイントを包摂した映画でそこがよかったと思いますよ。あまいあまいベタベタだけじゃなくて。それでも人は他人の愛を求めてしまう。いいことばかりじゃないし上手くいかないこともあるし、ふたりだから我慢しなきゃならないこともあるし、人をちょっぴり不幸にしてしまうこともあるかもしれないけれど、一人で楽しいことに従事して時間をいかに送ろうと、得られない瞬間を得られるからついうっかりと恋をしてしまうし、恋をすればいい大人も若者も同じように振り回せれ不安になりみっともないことだってしてしまう、そこがこっぱずかしくもあるけど、人間の可愛さすな。ヴィッキー・チャオがかわらずかわいいし*1スー・チーのスター性はさすがの貫録。あとは若者パートを担うアンバー・クォがめちゃめちゃかわいかったです!あのショートカットはかわいい娘でないと似合わないですよ。『台北の朝、僕は恋をする』という映画にも出てるようなので観てみたいな、と思ったですよ。
よくできた恋愛群像劇。役者陣の演技や台湾のロケーションもステキです。これも日本公開してほしいなぁ。ちゃんと宣伝すれば結構入ると思うのだけどなぁ…。
『LOVE』(2011年/中国・台湾)監督:ニウ・チェンザー 出演: スー・チーヴィッキー・チャオ、イーサン・ルアン、マーク・チャオ、エディ・ポン、アンバー・クォ、アイビー・チェン

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*1:菅野美穂度もアップしてたよ