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今日観た旧作2本『十二人の怒れる男』『ブエノスアイレス』

今日観た映画についてさくっと書きます。観たからには書きたい、という気持ちを覚えさせてくれた2本の映画。まずは言わずもがなの名作から
十二人の怒れる男』(1957/アメリカ)監督:シドニー・ルメット
録画したままになっている映画がたくさんあるのですが、なぜか今日はこれを選択。多分数日前に話題になった状況証拠のみで陪審員が死刑を判決とした事件のことがアタマにあったからかもしれない。その事件がどうこう、というわけではなく人が人を裁くことのむずかしさをもやもやと思っていたから。
検察の主張は、目撃者や状況証拠、証拠品等をつみあげてある種「ストーリー」を構成しているわけです。伏線があって動機があって事件に至る、というストーリーは日々三面記事でも消費されているとおり、人はストーリーが好きだし、ストーリーを求めてしまう生き物ですよな。その一見揺るぎない、起伏に富んで必然としか思えない「ストーリー」を一度偏見をとりのぞき白紙にして疑ってみる…なぜなら「人が人を裁くこと」は「人の人生を左右し、ひいては生死をも決めてしまうから」。この態度を最初から誠実に貫こうとするヘンリー・フォンダに感銘を受けつつも、自分はヘンリー・フォンダのようにふるまえるのかな?と考え、いや、きっと12人の陪審員が議論を経て過半数弱が無実に翻ったところで無実派に同調するような人間な気がしてしまって…そんなシミュレーションをしてなんだか自分にがっかりしつつも、いや、すこしでも小さいヘンリー・フォンダを自分のなかに住まわせるようにしたい、と思ったのです。劇中の時計職人が言うように、民主主義的市民社会はそれぞれに社会的責任を負わねば維持できないのだからな。

日本最終上映『ブエノスアイレス』(1997/香港)監督:ウォン・カーウァイ
観てきました日本最終上映(いやBDもう出てるけど)。昔観て以来、ゆうに10年以上経ってるのか…レスリー・チャンが亡くなったのは2003年で、それからももう9年も経つのか…と、過ぎた年月に思いをはせつつも、イグアスの滝の圧倒的なビジュアルとクリストファー・ドイルの美しい撮影、色あせることないトニーとレスリーの二人の痴話喧嘩とか嫉妬とか痴話喧嘩とか…そしてアルゼンチン・タンゴの音楽にラストのHAPPY TOGETHER!トニーは今も変わらずカッコいいけれど、当時の若さあふれるトニーも大層ステキです。レスリーもハマリ役ですね。チャラいヒモ男。レスリー演じるウィンを観ながら超ヒモ理論(意味が違うね)だな!とその手練手管に感心した。natural bornヒモ素質。ふわっふわした洋服着たり、甘えにいったり…トニーはそんなレスリーに振り回されっぱなし(思わず場内から笑いが漏れるほどね)。寒いのに散歩につき合わされたり、それで病気になってもご飯つくって?と頼まれると作っちゃったり、ベタだけど好きになってしまっている者の弱み?…あぁきっとそんなもんだな、と思う。
傷つけあってそれでも好きで離れられない、という二人。二人いっしょだと幸せだけど、ダメになってしまう。トニーの決意…アルゼンチンを発つ前にひとりイグアスの滝に行く、だけれども、本当はココに一緒にいるはずの“彼”がいないことがとてもさみしくてたまらない…でも決意して前を向くトニーは最後に希望のようなものを見出すんですよね。会いたいと思う人には、きっといつか逢えるよ、そこで流れるHAPPY TOGETHER!邦題はちょっとセンチメンタルでドラマテックさを強調しているけど、英題の感じがなんだか好きです、今では。昔はセンチメンタルなほうが好きだったような気もするけど…それはトニーも年をとれば、自分も年をとるってことだな。レスリーは命を絶ってしまったけれど、トニーのようにステキに年を取っている人を見ると、なんだかうれしくなる。いろいろ思いつつ…いや、本当に久々観てよかった。
ブエノスアイレス Blu-ray 愛蔵版

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