『カエル少年失踪殺人事件』

韓国の3大未解決事件のひとつを映画化したという『カエル少年失踪殺人事件』を観ましたよ。
大邱近郊でカエルを捕まえに行く、と出かけた少年5人。田舎の牧歌的な風景の中へ遊びに出かけた彼らの姿は杳として消えてしまう。必死の捜索のかいもなく彼らは見つからない。そんな事件もニュースで取り上げられなくなった頃、TV局の演出家がドキュメンタリーのヤラセが発覚して大邱に左遷されてくる。終わったと思っていた失踪事件が現地では終わっていないことを知り、再び事件を追いかけはじめ、ある教授と出会うことで事件は意外な展開をみせていく…
TV局員であるカン・ジスンを狂言回しに据えようとしたために、物語の構造にすこしムリが生じてしまっているように感じました。関係者以外は接触不可能だろう!という情報をご都合主義的に簡単にゲットできたり、真犯人らしきサイコ野郎に警察をさしおいて*1肉薄できたり、登場人物を生かし切れなかったり…このあたりは正直どうかと思った。あと音楽の使い方が一本調子でクラシック調の音楽をいかにもドラマティック!という感じにババーンと鳴らしたり(結構ワンパターン…)。
でも、とてもいいところがあって、それゆえばっさり切って捨てるにはもったいないし、おしいなぁ、と思ったのでした。冒頭の赤いマントを羽織った少年が走っているところ。これがいいのですよね、彼はマントが地面につかないように一生懸命走ってる。あぁあぁ、こどもってそういうとこある!とすごくノスタルジーを感じる。そんなこどもの素直でいとおしいような一面を見せられてるから、その後の親の悲しみが響く。マントの少年の父母のエピソードがとてもよいのですよね。子を失った親はこうも憔悴し、遺体が見つからないかぎり、きっと生きている、と信じ続けるのだな、と。人々がこどもを“死んでしまった”かのように扱うのが悲しくて悲しくてしようがない、という彼らの痛切な思いにハッとさせられました。
あと、マスコミの“ネタ”に走る傾向をここまで見せつけられると…わかっているけど、本当に残酷だな、と。事件を利用して名をあげようとするオトナたち。あの教授もうさんくさいんだけど、彼の主観がフィーチャーされて進むパートは、彼の説が結構信憑性があるように思えちゃうのですよね。それが単なる妄想、思い込み、陰謀論とわかったところの茶番感やら、彼の自分勝手な妄想の暴力性やら…。ちなみにポスターに映ってる教授と映画内の教授では髪型が大分ちがいますよ(どうでもいい情報)。劇中の教授のちょっと長めの髪型のほうがうさんくさい度合が高くてよかったな。
『カエル少年失踪殺人事件』(2011/韓国)監督:イ・ギュマン 出演:パク・ヨンウ、リュ・スンリョン、ソン・ドンイル、ソン・ジル、キム・ヨジン
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD21021/index.html

*1:韓国映画おなじみの警察の無能っぷり描写