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『孤島の王』

ステラン・スカルスガルド主演のノルウェイ映画の『孤島の王』を観ましたよ。
恐るべき子供たち」の系譜映画といえましょうか。ステラン氏は安定の裏側ありそう(しかもかなり黒そう)な役を十全に演じておられました。不良少年を収容する施設で院長として権勢をふるい、しかもお金をちょいちょいと自分の私腹を肥やすのに回している、わけありっぽい若いヨメ…とかって、完璧すぎるほどのお膳立てで有り勝ちともいえるかもしれませぬ。でも、現実そんなもんだろうな、と思いますね。(実話をベースにしているそうだし)。
素晴らしいのはノルウェーのバストイ島という舞台。北欧の孤島の寒々しい景色、海岸縁、森、雪。そんな厳しい自然の中に人為的に建てられたものはすべて“非行少年”を収容するためのものであります。海の際にたつ便所小屋、ずらりと並んだベッド…。そこで“いい顔”をもった少年たちが出てきますよ。反骨心のある強き者、逆境に対したとき生命力が絶えそうな弱き者、スマートに振舞うことで自分の活路を切り開こうとする者、自分を持て余している者、こどもらしく自分を抑えられなくなったり他人へちょっかいをかけずにおれない者、もうなにかをあきらめてしまったかのような者。少年らのその年代ゆえに持つ“どこか不安定な危うさ”は、あるきっかけがあれば、暴発しかねない。“弱き者”がそのストーリーの急転回の要因となる、というのもよくある展開といわばそう。
優等生的にふるまって、バストイを出ようとした少年すら抑えられなかったふつふつと煮えたぎる怒りは、“薄汚い大人ども”のあまりの “薄汚さ”ゆえ暴発してしまう。そして少年たちの王国に…しかしそんな存在は認められるはずもなく、放置されるはずもない。
圧倒的な大人の力のまえに屈していくこどもたち。そこからあくまですり抜けて、逃避し続けようとする少年たちの姿がたまらなくよかった。ここは今作の出色なところだと思いました。白い雪の積もる森をぬけて、本土から氷原をとおってわたってきた雄々しくどこか荘厳な鹿との出会い。そして少年たちの内包する危うさが景色のカタチをとったらこうであろう、というような氷原をゆく少年たち。なんという繊細さ。そうして迎える一つの帰結*1。ラストシーンでバストイを見つめる“かつての少年”のたたずまいの美しさと、思いの深さを感じさせる眼差しも印象的でした。
『孤島の王』(ノルウェー=フランス=スウェーデン= ポーランド/2010) 監督:マリウス・ホルスト 出演:ステラン・スカルスガルド、クリストッフェル・ヨーネル、ベンヤミン・ヘールスター、トロン・ニルセン
http://www.alcine-terran.com/kotou/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20728/index.html

※デジタル上映だったのですが、白とのコントラストで重要な深い黒の発色が悪くてそれはちょっと残念でした。ブロックノイズ状のところもしばしば…

*1:タイニタニックな感も