ガールズムービーの傑作!『サニー 永遠の仲間たち』

きっとほかの人は泣かないだろうと思う箇所*1でもすでに泣きそうになり、おぉぅ…これは、と思うまま、結局最後までダレることなく進む物語に引き込まれ、喉が鳴りそうなほどこみ上げながら観終わって、この幸福感を分かち合いたい!と思いました。観終えると、男は金づるなだけ?とか娘はどうなったん、本当にかわいそうなあの女の子はどうなったんや…とかちょいちょい気になることはあるけど、それを補って余りありすぎるほどの魅力に満ちた映画のマジックにひたひたに浸って幸せな気分。先日某氏が、映画を観終わってハイタッチしたくなる気持ちあるやん!というのに対して「そうかな〜」とあいづち打った自分でしたが、その気持ちわかるわーと手のひら返したように思ったのでした。映画を観ながら拍手してた人いたけど(途中のあるシーンでね)、その気持ちも非常によくわかった。思わず拍手したくなるよな!あれは。
専業主婦で家事を完璧にこなす主人公のナミ、42歳。母の入院している病院に見舞いにいったところ、偶然に高校の頃の友人チュナと再会する。そこでガンで余命わずかの彼女の願い《あの頃の仲間たち、サニーの仲間たちに会いたい》をかなえようとするのをきっかけに、夢や希望、痛さや切なさに満ちた青春時代の頃の気持ちを思い出す日々がはじまる―。
あらすじを読むと、本当になんてことないお話。冒頭の母の病室で流れていた、実はきょうだい、とか、実は余命わずか、とかの要素満載の韓国TVドラマへの登場人物らのつっこみに一緒に笑いつつも、結局は余命わずかの登場人物がいたり、というベタ展開なんだよね。ベタは承知の上だよ、という製作者側の覚悟がわかるよ。そういう意味ではメタっぽい視点がありそうなんだけど、そういう衒いはなくって、とても素直にベタという安定の枠に身を委ねて、その中でのびのびと登場人物が生きてるんだよな。
現代と過去の切り替えシークエンスもベタなんだけど、大変スマートで気持ち良いのですよね。ワクワクする。過去パートのキラキラ感や幸福感はいわずもがな!だけど現代パートもそれに負けてないんですよ。そこが凡百の似たような回顧映画とレベルが違うな、と思わせてくれる。現代の年齢を経た彼女らも過去パートに照らされて輝きだしてとても魅力的。とくに、あのリベンジ場面はたまらなかったなー。ここでトレンチコートや制服のスカートをひるがえして歩く彼女らのかっこいいこと!最高でございました。このリベンジパート以外に過去パートの秀逸な乱闘シーンでもあったのだけど…とにかく韓国映画でドロップキックのある映画に外れなしの法則がここでも確認できましたよ。
サニーのメンバーたちや敵対グループたちも含めて女子高生時代のパートには、変顔とか憑依とか罵り言葉とか嫉妬とか苛立ちとか初恋とかオシャレとか涙とかダンス*2…青春のもろもろが全部詰まってるよ。きっと思い出すと恥ずかしいし、写真だって目をふさぎたくなるような、そんな時代、でもティーンの未熟だからこそ向こう見ずで恥ずかしいことも気にせずできた青い大切な時代……チュナにもらったCD−Rをデッキに入れて、女子高生のころの自分に再会するシーンのすばらしいこと、たまらぬかった。仲間から外れてしまった彼女の痛々しさ、ちょっと手が届かないようなレベルの違う彼女(スジ)の存在感*3、ちょっとダサい靴を恥ずかしがったり、二重まぶたに憧れたり、ミスコリアになれると信じてたり…みんなのキャラが立ってるうえに、各キャラやエピソードのディテールが担保されているから、それだけでこの映画は成功してるのな。いつまでのこの子たちを見ていたい気持ち。
過去も輝いているし、思い出の中でさらに美しくもなる、ケド、今だって輝いているよ。年も取るし、病を得たり、その果てに亡くなったりもする。でも、それが人間で、アンチエイジングもいいけど年を経て、その年齢なりの美しさを得ることもあるわけで。ラストのダンスでも泣けて、エンドロールまで含めて最高の映画。まさにガールズムービーの傑作でありましたよ。韓国でも口コミで広がったっていうのわかるわー、観たら人に言いたくなるし共有したくなるのよな、この幸せ感をね。
『サニー 永遠の仲間たち』(2011/韓国)監督:カン・ヒョンチョル 出演:ユ・ホジョン、シム・ウンギョン、カン・ソラ、コ・スヒ、ホン・ジニほか
http://sunny-movie.com/index.html
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD21052/index.html


自分の青春はサニーみたいにキラキラしてないと思う…けど、なぜこんなに懐かしくなるのかな。人それぞれに様相は違えどサニーな時代があったってことかな。

*1:結構前半のチャンミの家でダンスしてるシーン

*2:それにしても主役の子のダンスはすごかったね!

*3:暴走族のマスコットみたいに、かわいい!が武器というか強さ、なんだよね