かわいそうな女王セロン様のビューティ『スノーホワイト』

スノーホワイト*1はユニバーサル映画なので、上映前の予告で『アヴェンジャーズ』『ダークナイト・ライジング』『アメージング・スパーダーマン』が流れたのです。『アヴェンジャーズ』はともかく、とてもとてもシリアスで眉間に皺な感じの悩みや苦悩を抱えたヒーローの成長譚や苦闘のお話がこの夏続くなぁ、と思い、これから観る『スノーホワイト』もこんな流れに連なっているような気がしました。コンテンツ不足?なのかもしれないけれど、おとぎ話やヒーロー物もリアルにシリアスに描くんじゃなくって、現実世界は苦しいことだらけなのだから、『アヴェンジャーズ』的に頭つかわなくていい(誉めてます)ようなものが欲しいような気もするけれど、と思いつつ観始めたのです*2
女ゆえに利用され、蔑まれるような扱いを受けてきた女性:ラヴェンナシャーリーズ・セロン)がその鬱屈を晴らすべく代償をはらって魔法を使う力を得、その力によりスノーホワイトの父が統治していた王国を乗っ取る。女王となったラヴェンナスノーホワイトクリステン・スチュワート)を幽閉していたが、成長した彼女が、なんと自分の美を追い越すときがやってくる。もっとも美しくあらねば魔力は失われてしまうという設定なのに!でもピンチはチャンス。スノーホワイトは脅威だけど、彼女の心臓を食べれば永遠の若さと命が約束されるのだ。しかし、女王の人の心臓を食らわねば保てないような不自然な美は、自然かつ崇高でピュアな美に打ち負かされる運命にあるわけで。ナチュラルボーン美しく、かつその美しさを自覚せず、天然に人を惹きつけるカリスマ的な存在であるスノーホワイトこそが最強というわけだ。
今作はスノーホワイトを応援したくなるように作られている、はず、なんだけど、どう見ても女王ラヴェンナがかわいそうすぎた。彼女の苦しみや踏みにじられた歴史がラヴェンナというキャラに奥行きを与えていて、どうしたって白雪のキャラが弱いんだよね。で、また、こういうラヴェンナが味わったであろう苦しみって今も厳然とあるしな。女性も同等ですよ、自分は差別意識なんてないし、という人が気づかないほど自然に(あたりまえだけど無自覚に)女性蔑視していることなんて偏在しております。ものすごくふつうに今もある。それも男性→女性はともかく女性→女性でもそういう意識あるしね。ふはぁ………。
でも肩肘はってがんばってきた魔法使いの女王も、自然のビューティで人を膝まづかせる力をもつ女子に葬られて、やっと平穏を得られたのやもしれぬね。クリステンよりセロン様のほうがどうみてもビューティ度では格が違うよ。でも、「ココロ」の美しさが外見より勝るのよな、というメッセージのためのこのキャスィテングかもしれませんね(え、ちがう?)。…とかいろいろ言いましたが、でも、肩肘張ってがんばる人が報われる社会でもあってほしいと強く思ったりもするのです(ますますちがう)
クリス・ヘムズワースはどうみても「お前、神失格のハンマー使いの男=ソーだろ」という感じでしたね。あとはラヴェンナのおかっぱ頭のシスコンな弟もゲスなキャラでよかった(あっさり退場したけど)。個人的には7人の小人にニック・フロストと『ミスト』の射撃の名手のおっさん(トビー・ジョーンズ)が出ていたのがうれしかったな。CGでの登場人物では、この物語の数百年のちにハンターに狩られそうなトロール、最近『孤島の王』とか『判事ディー』でもお見かけしたラスボス=鹿*3。コケ亀とか…とにかくハッピーな場はエコ(イメージ)っぽいね。鹿とかコケとか妖精とか…ジブリテイストな“もののけ”っぽい。
そして最後にやっぱりシャーリーズ・セロンが美しい。今作の主役は間違いなく彼女。あんなセロンやこんなセロンを堪能できました、重ねて言いますが、本当にうつくしい。セロンの美を愛でる映画でありましょう。しかし、もうこんなおとぎ話の暗い画調のシリアス映画化はもうしばしいいかなぁ…
スノーホワイト』(2012/アメリカ)監督:ルパート・サンダース 出演:クリステン・スチュワートクリス・ヘムズワースシャーリーズ・セロン
http://snowwhite-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD20260/index.html

りんごのくだりはどうするかと思っていたが、まぁ、なるほどちょっと苦しいけど、なんとかちゃんと登場しましたよ。
あと王子はあまりにキャラが弱すぎてヘムズワースの引き立て役にしかなってなかったような…しようがいないケド。

*1:ナカグロなし

*2:これは今の自分の現状がしんどくて現実逃避を求めているからか…

*3:鹿=王というイメージがあるんですかね?