三部作の終焉『ダークナイト・ライジング』

完結しました三部作。観る人によっていろいろ思うだろうけど、とにかく三部作のラストを飾るには、すわりの良い作品でよかったなぁ、というのが感想。これで収まった、という感じ。前作の『ダークナイト』が異色の傑作という感じで、あれを通過してどうなるのか?と思ってたら、娯楽作品としてきっちり楽しませて、映像もがっつり高いクオリティのものつくりあげて、気持ちいいラストに収束した。
ダークナイト』みたいに単体の作品として傑作とは言い難いと思うし、辻褄がどう、とか、ラストのあのあたりは、二時間ドラマの最後のガケに追い詰められた犯人なみに全部解説するんかい、とかもう、それは突っ込みどころはキリがないほどあげられるよ。でも、これでもか、というほど身ぐるみ剥がれて、絶望のどん底に落ちて、そこから這い上がる(rise)ところに気持ち良さを感じるし、エンターテインメントとしてよく出来てるな、と思う。
辻褄云々はあるかもしれないけど、冒頭の飛行機のシーンはワクワクするし、JGLがゴードンに見込まれてルーキーとして活躍するところもきもちいい。失墜したヒーローが立ち上がり悪者を倒していくところは王道のヒーローものに還ってきてるのだな。前作では悩みまくり、ジョーカーという怪物に揺さぶられ続け、自分の立ち位置について結論もだせなかったブルース・ウェインが、すべてを失ってもなおゴッサムのため=ゴッサムに住む人々のために行動しようとする。無敵でなにも恐れるものがない、迷いのないヒーローなんてありえない。痛みを知り、普通の人と同じように死を恐れ、大切にしたい存在がある一個の魂こそが強くなれるのだ、と。つまりバットマン資金あっての目立つヒーローだけど、ゴードンも同じようにヒーローなのよな、と。
それで重要なのは悪役ですよね。今回のトム・ハーディ演じるベインはその肉体もすばらしいし、目の演技もよかったし、声もよかった。そしてラストまで観た今となってはこいつ、ピュアだな!と。前作のヒースをどうしても引き合いに出されるだろうに、トム・ハーディは十分魅力的に演じきってましたね。そのベインもたらす混乱…市民の手にゴッサムを取り戻すのだ、っていって核爆弾のボタン云々、というのはジョーカーがもたらした混沌と似てるよね。でもジョーカーは“fair”であることを重視して運や偶然という要素を取り入れることで、人の悪意や疑心暗鬼を引きずりだしては混乱を引き起こした。ジョーカーは計画やスキームを軽視し、嘲笑った。それに対してベイン*1はめちゃめちゃプランナーなんですよね。そこからして『ビギンズ』直系のお話だな、と思う。リーアム・ニーソン超計画練ってたものな。あと、街全体、人々全体を傷つけようとするとどうしても計画が必要だし。ゴッサムを究極の混乱に陥れるにはプラン*2が必要で、そのプランナーを倒すには、アイテムや力だけじゃなく、人々が希望を持つということを信じることが必要で…。そうしてあの大団円に向かい、お話としては大変すわりがよくなる。ビギンズ同様今作はブルース・ウェインの物語になってた。
そう考えると、前作のジョーカーってきわめて特異だな。前作が傑出しえたのはジョーカーの特異性ゆえだし、あの特異な作品があったらこのノーラン版バットマンシリーズがフックアップされた感はすごいある。
だけれども、結局JGL演じたブレイクくん*3にせよ、ゴードンにせよ、熱くて愚直で人を信じる気持ちがある者らの気持ちの集積が街を救うことにつながる、という結構ストレートなメッセージだし、悪役が大暴れして、鍛え上げた肉体を見せて、楽しいかっこいいアイテム*4を見せて不二子ちゃん張りの魅力的でセクシーな女性が出てくれば、満足。
ラストも気持ちよかったな、あれは夢想じゃないと思ったよ。アルフレッドの笑顔ステキであったな。あんなベタなエモーショナルな感じをノーランが撮ってるってのがちょっと意外でうれしかったな。
言わずもがなですが、ハンス・ジマーのスコアがすばらしかった、映画の格をグッとあげてたな。そしてキリアン・マーフィはやっぱり最高であった。彼が出てきた瞬間ニヤニヤがとまらなかった。
ダークナイト・ライジング』(2012/アメリカ)監督:クリストファー・ノーラン 出演:クリスチャン・ベールゲイリー・オールドマンアン・ハサウェイトム・ハーディマイケル・ケイン
http://wwws.warnerbros.co.jp/batman3/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD19464/index.html

※初IMAXでしたが、とにかく音響がすばらしかったので、それでさらに印象がよかったやもしれぬ。
※今作でも、お父さんは心配性キャラだったリーアム…

*1:というかラスボスはマリオン・コティヤールですが

*2:ただしベインのプランはその目的と手段がいまいちはっきりリンクしていないという感はあり、そこは弱みかも

*3:ロビン!

*4:バット・ポッドが大好き。あのスピード感とタイヤのごっつい感じがたまらぬ