ボディライン、太もも、そしてヒップ『クレイジーホース・パリ』

フレデリック・ワイズマン監督が撮ったドキュメンタリー映画です。パリにある最も有名で前衛的なナイトショー「クレイジーホース」をショー、その裏側、練習風景から描き出す、とはいってもワイズマンですからエモーショナルな演出も音楽もナレーションも無し。見慣れたドキュメンタリーなら、ダンサーの女性の私生活なり生い立ちなり思いをインタビューするなりして感動的にすら盛り上げたり、困難を乗り越えるという一種の成長譚みたいなつくりにしたりするでしょうけどね。でもあるものを観察するように撮る、というワイズマンのスタイルは、恣意的になにかを切り取ってストーリーに仕立て上げようとするドキュメンタリーより自分の好み、と思う*1。ま、でも本当に“淡々”なので、ところどころスヤスヤしちゃうのですがね。
ダンサーの女性たちの肉体に目を見張ります。そしてヌードショーなんだけど、胸よりも尻!尻こそが命!という感じ。ボディラインと尻が命なのだ。女性らしさのイメージといえばそのボディラインの曲線っぷりでしょうよ。マン・レイの有名なポートレイトみたいな曲線。腰、お腹から下半身にかけての曲線とおしりの丸さこそがポイントのようであります。すっごい筋肉なんだけど、ちゃあんと丸いのです。衣装デザイナーも「おしりが丸く出ないからこの素材はダメ」とか言ってましたよ。演出で印象的なのは影絵をうまくつかうところ。これなんてボディライン命の演出ですからね。筋肉の素晴らしさはふとももに顕著でありますよ。見惚れました。
経営者側と演出(アーティスト)側の対立とか予想の範囲内だけどやっぱり予想したとおりのことでモメてる。なにかを創り出す作業において余裕なんてないのよな。金、パトロン、演者もろもろ軋轢や足枷があるからこそ創作が冴えるところもあるわけで。ただ間違いなく言えるのは、皆が『クレイジーホース』を誇りに思っている、ということ。そのために全力を傾けるし、オーディションにやってきた人たちも夢見てるわけで、この舞台に立つことを。
さて、クレイジーホース、ググってみますとドリンクショーで125ユーロから、とのことでお安くても12000円くらいから、かな。日本でも演劇だとそれくらいするし、旅行ということなら行っちゃうかもな。でもフランスまでの旅程と飛行機代もろもろ考えるといくことも無かろうか…というわけでワイズマン先生の成果物でせめても気分に浸りましょうか。
『クレイジーホース・パリ』(2011/アメリカ=フランス)監督:フレデリック・ワイズマン
http://crazyhorse-movie.jp/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD21210/index.html

※歌がヘタウマなところも好感でありましたよ。あと照明の使い方がすごいな!と思った。
※衣装デザイナーの人が結構な年齢だと思うけどステキにセーラー服っぽい襟のお洋服を着こなしてはりました。で、雰囲気がYOUっぽかった。

*1:とはいってもドキュメンタリーってほとんど見ないけど