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彼は桐島の不在など関係なくバットを振るのみである

桐島、部活やめるってよ』もう一回くらいスクリーンで観てみたいと思っていたけれど、ちょっと無理そう。初見でも気にはなったけれど、段々自分の印象のなかで存在感を増していくのがあの、宏樹に「今度の試合にはきてくれよ」と声をかけ、何度も部活へ誘う野球部キャプテンである。名前すら知らない色黒すぎるキャプテン。セリフもたいしてなかったけれど、登場時からブレることなく“高校球児”で、最後に言うセリフ「まだドラフト終わってないだろ」で胸を射ぬかれました。そんなまっすぐの直球純情久々にぶつけられた。メタ視線や空気読んだりふわふわ流動的なものに絡め取られたり、に慣れた自分にとっては痛いとこ突かれた感じ。
リリー・フランキーさんの「オレはオトナになってからも毎年『ドラフトにひっかからないかな』って思ってるよ」ってコトバを思い出した。リリーさんは野球部ですらなかったのに、そんなふうに思ってた:ましてキャプテンみたいに野球が好きで好きでしようがない野球バカならそう思うだろうさ。グランドの影でどこかからかスカウトが偵察にきてるかも。この練習試合を見に来てるかも。彼は怠ることなく練習を続ける。がんばれば、認められるかもしれない。いつか、誰かが声をかけてくれるかもしれない。努力すれば報われる。
キャプテンはきっと、トイレで見かけた日めくりあいだみつおのコトバもたまに「おっ、いい言葉」って思うだろうし、ベースボールマガジン社の雑誌もいくつか購読しているにちがいない(「週刊ベースボール」「ベースボールマガジン」「ベースボール・クリニック」)。高校野球の予選に早々に敗退したら、翌日から来年の予選にむけて練習だ。だから高校野球中継は見ないにちがいない。だって感動してる場合じゃない、自分の野球は終わってないんだから。でも日課の夜のランニング&素振りを終えてクタクタなのに、熱闘甲子園を見始めると、つい涙がこぼれたりもする。
スカウトがあるかも、と思ったけど声がかからず、大学野球のスカウトがあるかも、と待ってたがそれもない。東京六大学野球の大学へ入学したくてギリギリで出願する。野球の練習にあけくれ試験勉強をしていないのに、なぜか心のどこかで「なんだか、受かりそうな気がする(野球の神様が采配してくれるような気がする)」と思ってるがやっぱり落ちる。四国の独立リーグからはじめてみようと思うも、入団できず。あきらめて実家に戻り家業の米屋を手伝いつつも社会人野球を目指して…でもそれもムリで、結局社会人クラブチームに入ってみる。そのうち家業も忙しく、ガチの社会人野球から草野球に…。草野球仲間からの紹介で知り合った女性と結婚し、こどもができたらキャッチボールするのを夢見るも、女の子が生まれ、その夢はかなわず。自分のこどもを少年野球チームに入れる夢はかなわなかったが、せめてもと少年野球チームのお世話をしつつ、高校野球の審判になれないものかと手を尽くしてみるがそれもかなわず。ナイター中継をビール飲みながら観るのが楽しみになっちゃって、引き締まってた腹も今は昔。観たい番組あるのにーと娘にうっとおしがられながらも、ケーブルテレビの野球中継にチャンネル固定。試合見ながら「その継投はないだろ!」とか勝手に監督をはじめて、余計に娘にうっとおしがられる。高校野球観戦もいまは大好きだし、甲子園に中年をすぎて観客としてはじめて訪れてみるも感慨深さあまって観戦中も涙目。どうにかしてあの土を持って帰れないかなあ、と真剣に考えてみたりもする。
そんな人生を歩むのでしょうか。という妄想。