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『わたしたちの宣戦布告』観たよ

いわゆる難病ものなんだけど、ドラマチックにならない点がきわめて非ハリウッドなフランス映画らしいと感じました。それは『最強のふたり』に感じたのと同じようなものかも。おなじみの三幕構成や伏線を張っての回収、葛藤や障害を生じさせてそれを乗り越え達成を得るという起伏が想像したようにドラマチックには生じなくて、そこがいいな、と思った。
とあるパーティで視線の合った男女:ロメオとジュリエットは恋に落ち、こどもアダムが生まれる。しあわせな3人の暮らしがつくづはず、と信じていたが、アダムはなかなか歩けず、飲んだミルクも吐くし、顔面非対称である…アダムは普通の子とは違いすこしおかしいことに気づき病院に連れて行くと、脳に腫瘍があることが判明する…
ロメオとジュリエットふたりが恋に落ちて云々の箇所は大胆に省略したり、アダムの闘病についてお涙頂戴的にいくらでもできるところもわりとあっさり描いてさくさくと進む。これだけさくさくと監督=主演=脚本を手掛けたヴァレリーはどういう点を描きたかったのかがよくわかります。短い尺の中で選択して描写される事柄や語られるセリフ。それは、困難に立ちむかう強さを自分たちの中から湧き起こさせ、言い聞かせ、同志を得ることの重要性。落ち着け、冷静に判断しよう、より良い方向に向かうにはどうすればいい?そのステップの繰り返しなんですよね。それをバックアップする体制やロメオとジュリエットを取り巻くrelationshipも印象深い。ロメオとジュリエットはおそらく正式な夫婦ではないのではないかな(フランスは事実婚が多いと言うし)。それでもアダムの父・母としてアダムのためにできることをすべて力を尽くしてやろうとしている。その両親の思いに応えるべく、フランスの公的医療体制もかなり手厚いのが見て取れる。
病院でどの先生が執刀するかなかなかわからない、とか病院にちゃんと部屋が準備されてない、とか普通の映画の論法に慣れていたら「これ何かのフラグかな」と思うところだけど、それが別にフラグでもなんでもない、ってのが『最強のふたり』とかにも言えるけど、「実人生ってこんなふうだよな」と思わせられる感じなんだよね。ほかにも、ガンのこどもがいるからと同情されたくない、とかそれでも不図、言うに言えない感情が涙になってあふれたりするところのリアリティが、ヴァレリー監督自身の現実のことをモデルにしていることからにじみ出るのかな、と感じる(それにしてもロメオを演じたのも実際にヴァレリーとカップルであった彼、というのもすごいな)。人ひとりの命がかけがえのないものだという実感の核がある。
あと、ロメオとジュリエットのそれぞれの親がアダムの手術の日にはじめて顔合わせしてる点とかもおもしろかったな。日本みたいに家が強いとこんなのあり得ないよね。フランスならでは感だな。
『わたしたちの宣戦布告』(2011/フランス)監督:ヴァレリー・ドンゼッリ  出演:ヴァレリー・ドンゼッリ、ジェレミー・エルカイム 、セザール・デセックス
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