香港ノワール祭り『やがて哀しき復讐者』『強奪のトライアングル』『コンシェンス/裏切りの炎』

観てきました。
『やがて哀しき復讐者』(2011/香港=中国)監督:ロー・ウィンチョン 出演:アンソニー・ウォンリッチー・レン、キャンディ・ロー
アンソニー・ウォン×リッチー・レンの作品。邦題の『やがて〜』よりも、英題の『punished』のほうが、より内容をシンプルに表している。アンソニー・ウォンは金儲けに腐心していて他人の気持ちを忖度できない最低野郎のようだが、別に人が悪いわけじゃないのだよな。親として子を思う心は当然あったりして、でもそれを表現する方法がうまくない。つまりは人それぞれの“幸せ”をすべて自分のメジャーで測ろうとするから、意見も会わないし反目もするわけで。月並みだけど、“失って初めて気付くことがある”。後悔しても失ったものは戻らないから、こんな結果を招いてしまった自分を罰するように復讐をする。その復讐劇の実行部隊となるリッチー・レンがどうしてそこまで人間性がアレなアンソニー・ウォンに忠実やねん、と思ったりもしましたが…。何も生み出さず、悲しみの連鎖が深まっていく一方の復讐劇が最後まで来ると、センチメンタルな邦題もフィットしてくる。ついには「やがて哀しき」境地に達するわけで。CG感バリバリの塩の湖の絶景でむせび泣く親父、アンソニー・ウォンに感情移入してください(世の素直になれないお父さん方は感情移入してしまうのでは)。
『強奪のトライアングル』(2007/香港=中国)監督: ツイ・ハーク、リンゴ・ラム、ジョニー・トー 出演:サイモン・ヤム、ルイス・クー、スン・ホンレイ、ケリー・リン、ラム・カートン、ラム・シュー
変わった映画と前情報がありましたが、たしかにヘンテコ。やたら豪華なキャストと不可思議でちょっと惹きつけられるミステリアスな要素。笑うセールスマンみたいな黒づくめの男から古銭を渡されたことから、人生崖っぷち男どもの運命の歯車が思わぬ方向にまわり始める。ルイス・クー、サイモン・ヤム、スン・ホンレイが雰囲気たっぷり。ラム・カートンが出てるの知らなくて、しかも結構な活躍でうれしかったな。しかしツイ・ハーク→リンゴ・ラムときてからの、ジョニー・トーのパートの狂いっぷり。暗闇→電気が点いて明るくなったり、という変わりゆくシチュエーションでの銃撃戦や草っぱらでの錯綜する逃走と銃撃戦。きわめつけはクスリで飛びまくりのラム・シューの「オハヨーーー!」。ラム・シュー出したいだけやろ、銃撃シーン撮りたいだけやろ、と突っ込みたいけど、だって、前ふたつのパートのカタを付けるって、もう、ムリやん!とやりたいことやったトーさんの開き直りに観てるこちらも、フハハァ、と笑ってしまうくらいの境地に達した作品。おもしろかったよ。
『コンシェンス/裏切りの炎』(2010/香港=中国)監督:ダンテ・ラム 出演:レオン・ライリッチー・レン、リウ・カイチー、ミシェル・イエ、ビビアン・スー
これは正統派香港ノワールでした。香港の混沌とした土地:黒社会と犯罪の入り乱れる街で、妻を通り魔的な事件で失った刑事が、とある事件に絡んでいくことで、周囲の人間も死ぬ、因果の糸が絡みつく、そして彼の孤独は癒えるのか…というよくある形式なのだけど(同監督の『密告・者』もそんな感じっちゃそうか)、ぐいぐい引っ張っていくストーリーテリングで飽きない。レオン・ライリッチー・レンもやはりかっこいいね。理解力の不足しておる自分には「娼婦殺しって結局関係薄いよな」とか「リッチー・レンの舎弟はなんで悪徳刑事の補佐してんの?」とか「リッチー・レンが最後にひっぱってたハコって何なん」とかちょっと分からぬところもありましたし、香港映画らしいやりすぎ過剰なところ(ラストの炎の中のあれとか)もありましたがそれもこれも含めて香港映画らしさ満点。香港の街を駆け巡り、爆発し、逃走からの銃撃戦、せまいアパートの階段を使う銃撃戦、ビルからの落下など見どころ満載。とにかく香港の街並みが堪能できるだけでもすばらしい。いつか行ってみたいものですよ。それにしてもレオン・ライが死なない丈夫な男だったなぁ、そしてビビアン・スーかわいい。