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いつの世も変わらぬよ『声をかくす人』

映画

ロバート・レッドフォード監督。マカヴォイ主演だし!観に行ってきました。ロビン・ライトとの共演です。
アメリカでの苛烈な南北戦争の終わりの頃が舞台。北軍の勝利とはなったものの南部の残党もたくさんおり、政情不安なわけです。そんな混迷の時代において強烈なカリスマ性を持ったリンカーン大統領が暗殺される。シンボルでもあったろう存在を失った空白。これはピンチであり、チャンスでもありましょう。南軍にとっては、これを一発逆転の機縁としたい。北軍にとっては、偉大なる指導者を失った現在こそ、一致団結し、この政情不安を乗り越えて確実な勝利を得られれば、その地盤はより一層堅いものとなりましょう_ある絶頂でスター/カリスマが不在となると、その一番輝かしい頃でイメージでみんなの頭のなかに残り続けるからね、ある意味最強かもしれないのです(宗教しかり)。
そんな「オトナの事情」での駆け引きの道具にされてしまう、ある意味時代や政治の犠牲となってしまうのが本作のヒロイン、メアリー・サラットです。彼女の経営していた下宿に暗殺を企てた首謀者らが集っていたため、彼女もその共謀罪に問われる。実際は彼女の息子こそが共謀罪に問われるべきなのに、息子は逃げちゃったものだから、彼女が身代わりに処せられる。
何人も平等な裁判を受ける権利があるはずだ、と弁護を引き受けることとなる弁護士フレデリック(=マカヴォイ)。フレデリックは自身も南北戦争で北軍に従事して過酷な経験をしており、いわば敵側ともいえる女性の弁護とあって、最初はイヤイヤながら引き受けるも段々のめりこんでいく。時代の大いなる空気や「オトナの事情」は世論を《偉大なる指導者の暗殺にかかわったとおぼしき連中は皆殺し=報復して、幕を引いて世間のもやっとした気持ちを納めちゃおう》という方向に誘導するために、メアリー・サラットを死刑とする方向で決定してしまう。その“個”の力ではどうしようもない時代の空気。……いや、こういうのって、現代でも全然あるよな。変わってないよね、とつくづく感じながら観ました。フレデリックは法や国家や人権の「あるべき姿」を守ることの困難さの前に屈することなく、抗していく。
メアリー・サラットは明らかに無罪であるのに、結局死刑に処せられる。彼女の首をつるすための処刑台の建設風景やら、暗い暗い刑務所等々、19世紀アメリカの再現度合も気合がはいっていた。当時ってやっぱり全体に暗いのだよな。その薄暗く、空気も悪そうな刑務所において、喪服を着たメアリーのか弱げながらも芯の強い母としての生き様に触れ、しだいに入れ込んでいくフレデリックの気持ちもわかるな、と。マカヴォイはさわやかさと強さ、正義感など、ぴたりとはまったキャスティングでステキだった。ロビン・ライトの演技もよいし、娘役のエヴァン・レイチェル・ウッドもよかったよ。そしてなにより、ロバート・レッドフォードの気骨を感じた映画だったな。
『声をかくす人』(2011/アメリカ)監督:ロバート・レッドフォード 出演:ジェームズ・マカヴォイロビン・ライトケヴィン・クライントム・ウィルキンソンエヴァン・レイチェル・ウッドジャスティン・ロング
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