大阪ヨーロッパ映画祭で観た2本・映画愛のかたまり『ファイナル・カット』、最高のレア・セドゥ映画『シスター』

大阪ヨーロッパ映画祭。いつもみたいなと思いつつ、いつのまにやら終わってしまっていた…今年は初参加がかないました。
『ファイナル・カット』(2012/ハンガリー監督:ジョルジュ・パールフィ
これは、映画のサンプリング映画。ストーリーはシンプル。男と女の運命の出会い。すれ違い、誤解、引き裂かれる運命、そして…というね。そんな定番ストーリーを構成するカットカットカットの連続。まるで気分を高揚させ続けるドラッグムーヴィーのようでもあった。古今東西の名作意欲作B級作品傑作アクション犯罪サスペンスコメディ怪奇恋愛ドラマアニメのカットカットカット。ただ、男が朝目覚めるだけ、ふと振り返るだけ、女が目を見上げるだけ、それらのシークエンスがあらゆる映画のフラグメンツでつながれていくことで、映画のマジックや奇跡も感じさせる。お祭り企画映画。映画好きならたまらないと思いますよ。若い頃のイケメンなミッキー・ロークと現在のミッキー・ロークが同じ映画内に現れたり、デ・ニーロがいろんな映画から引っ張り出されたり、デップもデカプもトニー・レオンもニコケイもドニー・イェンヨーダもハン=ソロもインディ・ジョーンズも同じ映画内に現れる。『ワイルド・アット・ハート』での“ラブ・ミー・テンダー”歌い上げ場面も印象的。『ブルー・ベルベット』や『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『サウンド・オブ・ミュージック』…あぁきりがない。権利関係の問題できっとソフト化不可能だろう実験作を観られるのも映画祭ならでは。たのしかった。
『シスター』(2012/スイス)監督:ウルスラ・メイヤー 出演:レア・セドゥ、ケイシー・モテ・クライン
『M:I/GP』で観た瞬間恋におち『ルルドの泉で』その想いが深まったレアちゃんの主演とあらば、観なければなりません。スイスの高級リゾート地。世界各国から集うスキーリゾートを楽しむ客らが無防備においているスキー板やグッズ、リュックなどをさくさくと盗んでいく少年。見るからに貧しく、盗むことは生きるための手段であるために、罪悪感などはない。これをせねば、「食う」ことすらできないんだからな。「姉」であるレアちゃんに盗んだ食糧をあたえ、盗品を売った金で小遣いをやる。いかにもダメ男搾取男にくっつくレアちゃんの帰る場所がこの少年なんだろう(普通は逆だろうに)。概してひどい「姉」なのに、少年は彼女に献身的、というかすごい許しの気持ちを持ってて、でも少年だから姉ちゃんには甘えたくって…いったい二人はどういう関係性なのか?…観客は結構予想できたんじゃないかな、自分でも結構最初の段階から二人の関係性について予想してたから。うん。そう考えることが自然なほど、キャスティングが超はまっていました。演技といい。やさぐれ、ダメンズにくっついてしまう、スイス地方都市のダメ女子…日本でも地方にいけばたくさんいそうな感じ。『夢売るふたり』でデリヘル嬢が出てきたじゃん、ああいうのと共通する感じがちょっとある女性だ*1。レアちゃんはまってました、最高。重くて、苦くて、しんどいけど、こういう映画好きだな、と感じた。ベルリンで特別銀熊をとったようなので、ぜひ三大映画祭週間で拾ってほしい!

*1:『夢売る』の方はレアちゃんよりももっと器がデカい女性だったけど