冬の香港映画祭り『大魔術師Xのダブル・トリック』『狼たちのノクターン』

これを観なければ冬は越せない!ということで行ってきましたよ。3本中2本の鑑賞です(今回は『最愛』はスルーいたしました、気にはなりましたが…)。客層はいかにも香港映画ファン、といういい感じです。
http://www.cinemart.co.jp/theater/special/hongkong-winter/
『大魔術師Xのダブル・トリック』(2012/香港)監督:イー・トンシン 出演:トニー・レオン、ラウ・チンワン、ジョウ・シュン
http://eiga.com/movie/77727/
トニー・レオンとラウ・チンワンというスターの共演。中国では昨年1月下旬に上映されてたようで、ということは旧正月とかの時期かな。たしかにそう考えるとお正月興行にぴったりですよ。サーカス、奇術、若干の武侠的アクション、派手な特殊効果、そしてスター共演。見た目も豪華だし、ストーリーもハッタリがきいてるし、マジックということで不思議なファンタジックな映像も堪能できるおせち料理のような映画。のっけから、ダニエル・ウーのちょこっと客演や、ラム・シューもちょこちょこ出てくるし、もうもうお腹いっぱい!ヒロインのジョウ・シュン*1も美しくて、動きのキレもいいし、低い声も魅力的。ジョウ・シュンは38歳とは見えぬなぁ。まぁ、トニーも50歳に見えないけどね!38歳と50歳で処女と若々しい弟子の役を演じているのであります。ストーリーはトンデモなんだけど、アホのフリをしているチンワンがアホにしか見えないというキュートさ。かわいい。そして、トニーとジョウのラブストーリーのパートでの、大っぴらに愛を伝え合うことができないけれど、視線や奇術を通じてその変わらぬ思いを伝えようとする静かな演出がすごくよかったのですよ。奇術で絵をどんどん変えていくくだりも美しかった。最後のお約束感といい、コミカルなところといい、楽しい!映画でした。トニーやチンワンのファンは必見でしょう。それにしてもトニーの立居振舞や構えたときの凛とした姿は本当に美しい。ウォン・カーウァイが彼をイップ師匠役とした映画が楽しみでたまりません。
『狼たちのノクターン』(2012/香港)監督:ロイ・チョウ 出演:ニック・チョン、サイモン・ヤム、ジャニス・マン、マイケル・ウォン
http://eiga.com/movie/77728/
ニック・チョンのニック・チョンらしい魅力で一本の映画を撮りたい!という欲求に突き動かされて撮られた作品だと思う。それほどニック・チョンがすごかった。とくに『大魔術師』を観たあとだったので、冒頭の壮絶バイオレンス描写のつるべうちにおぉぅ、となりましたよ、まさにギャップ効果。ニック・チョンはミスリードのために、やりすぎと思えるほどのサイコ野郎演技を見せる…そう、ストーリー的にはすごいムリがあるのですよのな。つっこみどころはたくさん。ニック・チョン演じる主人公の行動がムチャクチャ。それに冒頭の暴力描写とかもムリクリねじ込んだような…ストーリー上の必要はないしな。ある「秘密」「意外な真相」があって、それを軸にするためにすごいムリが生じてる。ニック・チョンを追うサイモン・ヤム演じる刑事の妻が自殺してる必然性もいまいち感じられぬしなぁ。でも、こんなニック・チョンが観たい!という力の入りまくったニック・チョン節を堪能できて、それだけでお腹いっぱい。さすがのサイモン・ヤムも霞みそうでした。肉体を鍛えまくるニック・チョン、自殺を図り、えんぴつを首に刺した傷が残るニック・チョン、そしてそのため口がきけなくなったニック・チョン、ニヤリと不気味に笑うニック・チョン(顔芸の域に達していた)をぜひ観てみてください。あとサイテーロリコン野郎の義父のヒステリック演技もやりすぎで笑えてくるほどでありました。
ストーリーにあまりにムリがあると思ったのかして、エンドロールで2時間ドラマばりに状況説明セリフをサイモン・ヤムにしゃべらせてたのがおもしろかったな。

*1:クラウド・アトラスにも出てるみたいですね