読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ホン・サンス恋愛についての4つの考察

観ました。ホン・サンスは好き嫌いがぱっきり分かれると思いました。ある意味雰囲気映画っぽいしな。さて自分の嗜好的にはどうだろう。上映された4作は↓(観た順)
『よく知りもしないくせに』『ハハハ』『教授とわたし、そして映画』『次の朝は他人』
http://www.bitters.co.jp/4kousatsu/
#共通点
とにかく酒飲んで、もの食って、よっぱらって失敗して、女と寝て、酒飲んで、もの食って、失敗して、酒のんで、たまにピアノ弾いて、寝て、酒飲んで、もの食って、女に振られて、また出会って、乾杯して、酒のんで(エンドレスループ
#変な撮り方
カメラワークが独特である。最初、まるで学生の自主映画のようだな、と思った。というのは、一台のカメラしか使ってないように見えるから…一台のカメラが人物をとらえ、彼(彼女)が動くとそれにしたがってカメラも移動し、不自然に、ちょこっとズームアップする。これが、素人がデジカメなりiPhoneのカメラを扱うときに、レンズを被写体に向けたら自動でズームアップしたりしてピントあわせるじゃないですか?なんかあんな風に見えたな。普段の映画では観たことないようなカメラの視点の動きが続く。ひとつのシーンが切れ目なく長回しだったりする…その連続。カメラの枠外で話し声がしたり、話し声がしてから追いかけるようにカメラがそちらに振られたり…それらのシークエンスの連続に段々慣れてくると、最初はデジカメとか携帯のカメラっぽく=素人っぽく思えたカメラワークも、ふと風景の片隅にズームアップしたり、男女をとらえていたカメラが地面の尺取虫にズームアップしたりするその視点の動きが気持ちよくなってくる。自分がそこに居合わせているような気がさせられる。リアルタイムでその現場に立ち会っているような、想いもよらないほどの物語内に自分がとりこまれたような感じ。それは男と女の距離感を測りつづけるようなホン・サンス映画に合っている手法なのでしょう。
#人の気持ちは固定されない
旦那のことが好きなの、といいながら、簡単に昔の男と示し合わせてイチャイチャして寝たり、あっさり別れたり、気まずいなと思ったらスッと離れたり、急に気持ちが盛り上がって口づけしたり。男も女も気持ちはふらふらと揺れ動き、固定されない。そうだよな、ふとした場の空気や流れや視線の合い方や…タイミング!そうタイミング次第で変わったりする。日常的にそれらは生起している。息をするように人との関係も微妙にかわったりする。それらの日常的な描かれ方が、小説でいえば保坂和志の作品をちょっと思い出したな。あとすぐ寝るところは村上春樹
#私映画
私小説のように、これはホン・サンスの私映画のように思ってしまった(彼に関する知識は全然ないのだけど)。というのも、4作みて、あまりに主人公が同じだから。設定も「教授」で「かつて芸術映画のようなものを4本撮った」「そして一部でかなり認められたけど、今は映画を撮れていない」「過去に女性関係でスキャンダルがあったらしい」という点が共通している、というのもある。でも、とにかく似ているのですよね。ここまで直球ストレートな私映画っていうのも新鮮でね。で、演じる役者がみんないいのよな。ちょっとだらしなくて、お酒でタガが外れたり、でもどこかで映画にかかる矜持があって、でもふらふらと揺れ動く彼らは違う俳優なのに、同じ空気を感じさせたのでした。とりわけ『次の朝は他人』の主人公を演じたユ・ジュンサンが好きだな。雰囲気があって、日本でいうと西島くん的なルックスもいい。
#自分的には
結構好き。ダラダラ撮ってるようにみえる『よく知りもしないくせに』が結構好きですよ。夫婦がわーっと泣きながら抱きしめあうところを撮って、そのカメラがそのまま地面にグググとクローズアップしたと思ったら、尺取虫が映る、とか、なんだこれ、と思いつつすごいユーモア感覚がたのしい。そんなコント(フランス語的な意味で)という感じでした。あとは、『次の朝は他人』はかなりスタイリッシュに洗練されて一般的にも受け入れられる映画だと思いました…主人公はかなりだらしないし、話らしい話もそんなに無い*1んだけど、画的にとても魅力的なんですよね。

*1:芥川/谷崎論争みたいな意味で