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チェックのシャツ+カーディガン男の夢想『ルビー・スパークス』

若くして書いたデビュー作が絶賛をもって世間に迎え入れられるも、それ以後作品が書けなくなっている神経症的非コミュ人間であるのが、ポール・ダノ演じるカルヴィン。人とうまく関われず、世話の焼ける犬(スコッティ)だけがともだち。カルヴィンとは正反対のマッチョでコミュ力もある“まっとうな社会人”である兄はなにかと弟を励まし、家から引っ張り出そうとするも、カルヴィンは変わらない。カウンセリングに通い、処女作をテーマにしたイベントに引っ張り出されるくらいの日々。しかしある日カルヴィンの夢に女の子があらわれる。二度も夢に現れたとき、彼はすっかり彼女にひきこまれ、彼女をモデルに恋愛小説を書き始め、寝ても覚めても彼女を文字であらわそうと、全身全霊でタイピングしていたところ、小説の彼女に命を吹き込まれ、現実の女性の体をもってカルヴィンの前に現れる…
えっと、“電影少女”でしょうか、“マネキン”でしょうか、“空気人形”でしょうか。それは男にとって思い通りの自分の理想の女の子。…のはずが、予想通り、自分の都合のいい女の子像から逸脱していく。だってそれは彼女が生きて血の通った女の子だから。カルヴィンは自分に自信がないから、彼女がふわふわと自分を置き去りにしてしまうような、捨てられてしまうような気がしてしようがない。それで、「ルビーはカルヴィンなくして生きていけない」とか書いちゃって拘束束縛してしまう、まったくもって、しようもない男なのだ。でも人間そんな面を持ってしまってるものじゃない?他人のことはどうやっても分からないからさ、不安だからさ。そうなると、こうなると、もうイケナイよ。ほら、前髪ちょっと切ろうかな。あれ、ちょっとゆがんだよ、ほらこっちを切って、あれ、ちょっと切りすぎた、ほら反対側を切って、あれあれまたバランスが悪くなった…。自分の手でなんとでもなると思ってると、こうだ。
画のオシャレ感やふたりの佇まいの感じや全体の雰囲気で『(500)日のサマー』はどうしても思い起こしました。アレもどうにも苦しい恋愛映画であった。でもサマーちゃんは最初から最後までトムの思い通りになる女の子ではなかったよね。それでトムはもがきくるしみ、文字通りどん底まで落ちて泥の中転げまわるような経験をして、そこから、一皮むける契機をつかむわけだ。そんで夏の次に待機していた秋に出会う、と。
一方の『ルビー・スパークス』。カルヴィンはそんなトムみたいな苦しみを経験したのかなぁ。苦しんで苦しんで苦しんだのはルビーちゃんだけじゃない?あとはカルヴィンの元カノも苦しんだよね。カルヴィンは理想の彼女が自分の手からすりぬけていく苦しみは味わったかもしれないけど…なにかを失って、それで創作ができた。小説は書けた。でも彼は成長したのかな?ラスト、ふたたびルビーに出会った彼は同じこと繰り返しそうに見えちゃったなぁ、自分は。だいじょうぶ?今度こそ、自分の思い通りにならない人間としてのルビーに出会ったから、きっとイチから恋愛をはじめられるのかな、ようやっと彼はスタート地点に立てたのかな…?(カルヴィン、同じこと繰り返すなよな、と危惧する思いはぬぐいきれぬが…なぜ元カノじゃなく、ルビーとの再会になるのかな、というのもちょっと思ったな、でもそれはこの映画がリアル志向じゃなくファンタジーだからか)。
一番のツボだったのは、アントニオ・バンデラスがやる犬のスコッティの顔マネでした。あれは似てた!ポール・ダノとゾーイの実際にもカップルという絵になるふたりのたたずまいもよかった、あのふたりが同じ画面にいると、すごいキュートでハッピーな雰囲気に満たされてたな。
ルビー・スパークス』(2012/アメリカ)監督:ジョナサン・デイトン、ヴァレリー・ファリス 出演:ポール・ダノ、ゾーイ・カザン、アントニオ・バンデラスアネット・ベニング
http://movies.foxjapan.com/rubysparks/
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD23045/index.html