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高潔さ 『ジャンゴ 繋がれざる者』

全編ジェイミー・フォックスがかっこよく、前半はクリストフ・ヴァルツが、中盤はレオが、後半はサミュエル・L・ジャクソンが持っていった映画。
タランティーノの映画のOPだな、と感じさせる曲、キメ画の連続、タイトルロゴなどに既におなかいっぱい。今作はキメ画や役者の配置とそのパシっとした構図、ロケーションなどがとにかく好き。月並みすぎるけど、かっこいいクリストフ・ヴァルツ演じるシュルツ医師の登場シーンが素敵である。あの馬車の屋根の歯のオブジェいいな!そうして登場数分でシュルツの理想的なありえないほどのたましいの高潔さがわかる。『イングロリアス・バスターズ』のランダ大佐役も最高に大好きだけど、今作のシュルツはその役柄の高潔さが最高だしヴァルツのはまりっぷりやオシャレスーツスタイルも最高である。誰しもが息をのんだであろうレオ演じるキャンディとの息詰まる対峙のシーン。その前段のサミュエル・L・ジャクソンが坊ちゃんに告げ口するところからのここらあたりが、自分にとっての今作のクライマックス。思い出しても胸熱だな。シュルツが取った選択は自分の胸に深く刻まれたよ、高潔さ…ただ生きのびるだけが生きることではないんだ、こういう選択をする可能性を秘めているからこそ人間なんだな、と。
サミュエル・L・ジャクソンの演技と容貌と…とにかくトータルですごい存在感!それにしてもあの役。南アフリカでの悪名高い「名誉白人」や「看守と囚人実験」などを思い起こさせるあの召使いの性格。それはまるで自分のことを“人間=白人”だと思い込んでる“飼い犬=黒人”というような…それゆえ黒人への差別意識が壮絶で醜悪…しかしこれもシュルツ医師の理想的高潔さと同じく、人間の秘めた可能性なのよな、と深く深く思う。ディカプリオの大げさに見えかねない演技も当時の南部のプランテーションのバカ当主ならありうるだろうよ、と思わせる。そして黒人をはべらせて、それが“あたりまえ”だと思っている傲慢さ、それもまた人間の持つ可能性…まぁいろいろと暗澹たる気持ちにさせるね。それだけにシュルツ医師とのあの対峙シーンがグッとくるわけで。
ジェイミー・フォックスも登場から並みの男じゃないな、と感じさせる存在感で、だからラストの姫の奪還に神話が重なっていくダイナミズムも説得力がある…冒頭のジャンゴは情熱や妻への思いを滾らせてるけど、それだけじゃどうにもならない。ジャンゴのその思いを成就させるための道筋/教育をするのが、やはりシュルツ医師なのだな。相手を尊びながらも、助産的に字を覚える手助けをし、服のセンスを磨き、それらを自分のものにさせていくことで、力と知が結びつき、ラストにつながる、と。血しぶきも銃撃戦もたっぷり、ロケーションも美しくてすばらしい。壮大な復讐を成し遂げるありさまはある種爽快さと溜飲のさがる感じを覚えさせる、映画/フィクションの持つ効用で、これはタラ映画では重要。でも派手なラストよりもタラが描きたかったのは、かような壮大な復讐もやむなしと思わせる契機となった、シュルツ医師の死のシーンだろうし、やはりあそこが自分にとってのクライマックスだったな、とあらためて思うのでした。
『ジャンゴ 繫がれざる者』(2012/アメリカ)監督:クエンティン・タランティーノ 出演:ジェイミー・フォックスクリストフ・ヴァルツレオナルド・ディカプリオケリー・ワシントンサミュエル・L・ジャクソン
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