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第8回大阪アジアン映画祭:drug war!!『毒戦』

ジョニー・トー監督も今回の上映のためだけに来日した、ということで華々しく開幕した大阪アジアン映画祭オープニングの日本プレミア上映『毒戦』を見ましたよ。
スン・ホンレイ演じる捜査官!ポーカーフェイスで非情なまでにおのれの任務を全うすることにかけている。淡々と、粛々と事務的に進めるようにみえるのだけどその内容は“えげつない”。ドラッグにかかわるものはすべてひっとらえることが仕事。そして中国大陸において、ドラッグにより捕まることは重罪で、重罪ゆえに死刑に直結する。死刑執行人(直接的にはではないけど)にふさわしい無常さでドラッグに関わる者らを追い詰めていくその有様は、安易な感情移入などさせないキャラ。正義の執行人というよりは、こやつも骨の髄まで「悪人を追い詰める」という任務にとりつかれてるだけのようにすら見える。だから、手段を選ばず、ときにキャラを演じ、ときに上質のコカインを鼻からおもっきり吸い込み、軽薄な作り笑いも厭わない。コカインやったあとの氷風呂とか…あのくだりもすごいね。それらのディテールが最高!緊張感…張りつめたまますごいテンションでもっていきますよ。これが途切れないところがすごい…(とくにラストのあの執着心たるや!)
さ、そんなスン・ホンレイに追い詰められるのがルイス・クー演じるクスリの密造をやってる男。これまたすごい。スン・ホンレイに負けない執着心の持ち主であったのです。仲間を売りまくり、情報を出しまくり、そうかと思えば裏を掻いて狡猾に立ち回りまくり、なんとか逃げまくり、名付け親であろうが容赦せず…“自分が生き延びるためには手段を厭わない”。そういう意味ではスン・ホンレイとは正反対ながら骨の髄まである執着にとりつかれた男ということでは似ておるかもしれない――片やある種の人間を死刑執行台に送ること、片や死刑執行台から逃げまくること――。そして二人ともに、どうしてそこまで執着するかというバックグラウンドや“理由”が描かれてないからこそ、不気味さがあるのよな。
ルイス・クーは途中で弟子のろうあ兄弟(この二人のキャラがまた最高)のところに行ったくだりで、密造工場の爆発事故で失った妻や義兄への思いをふと漏らして涙をこらえきれず、ついに弟子らから紙銭がないからと差し出された、本当の紙幣を惜しげもなく、というかどこか気力もなさげに燃やすところで、あぁ、本当に大事な存在を失ったがゆえの執着なのかも、とおもわせるくだりはあるのだけど。や、でもその後の展開を見ると、この恐ろしいまでの生への執着は「亡くなった人の分まで生きる」みたいな甘っちょろいものじゃないな、と思う。ただただ生に執着してるだけなんだろう…この“もっともらしい説明のない”生への執着心の凄まじさが作品にみなぎるテンションにつながってると思う。
忘れてならないトー組おなじみのラム・シューは登場した瞬間会場が“どよどよ”と反応…これは映画祭らしい反応でたのしい。ラム・シューのダブルピース、「ハイリスク・ハイリターン」(またしても会場が反応)。すくないセリフで痕跡残しすぎ(いい意味で)。ラム・カートンも久々観られてうれしかった。
銃撃戦もすごい。『ダーティ・ハリー』オマージュのようなシーンもワクワクさせられたし、とりわけろうあ兄弟の二丁拳銃は最高!!!ラストの衝撃までダレずにもってく作品。トーさん初の大陸でのアクション映画!すばらしい傑作でした。切に願う、日本公開されますように…
『毒戦』(2013/中国・香港)監督:ジョニー・トー 出演:ルイス・クー、スン・ホンレイ、ホァン・イー、ミシェル・イェ、ラム・シュー
http://www.oaff.jp/2013/program/compe/05.html