カナザワ映画祭2013に参加した旅日記(2日目)

さて昨日に引き続きカナザワ映画祭2日目も参加しましたよ。『スター・ファイター』『吐きだめの悪魔』はスルーして14時からの『ハッピー・アイランド』から参加です。
9/15(日)
『ハッピー・アイランド』(2013/日本)監督:清川隆 一般公募枠で飛び抜けてた、ということで選ばれたものだそうです。福島*1に興味本位に撮影するために入った雑誌取材班がキチガイに捕らわれて…というもの。正直77分は長かったなぁ。残酷描写とかグロとか拷問描写が怖いっていうよりも、とにかくグロ残酷グロ…と延々と続くのが長く感じてしまった。こういうジャンルを自分はよく知らないからだと思いますが…ただ、『ムカデ人間』は偉大だったなぁ、とおもいました。役者さん(チャラい二人組とキチガイおじさん*2)の演技はすごくよかったです。ちなみに途中退出が2〜3名いたり、気分が悪くなって休んでる方もいたようですよ。
『獣人島』(1932/アメリカ)監督:アール・C・ケントン  稲生平太郎氏と高橋洋氏によるセレクションでの上映。第二次大戦前の作品でスタンダードの画面でクラシックなのですが、おもしろかったです。日本ではソフト化されてないので稲生氏により字幕がつけられた今回の上映は超貴重。ウェルズの『モロー博士の島』の映画化なのですが、博士を演じるチャールズ・ロートンの悪い/狂人の域に近づいている演技が出色。豹ムスメがかわいそうでしたね…。あと獣人役でひとり日本人役者が出ているのですが、それが本能を呼び覚まされて博士に反旗を翻す獣人集団に対してひとり博士を守り通そうとする「忠実な犬」であった(そのため文字通り犬死するわけで)、というのもなんとも皮肉。

《トーク》奇想天外・新映画理論講座 稲生平太郎横山茂雄)×高橋洋  これめっちゃおもしろかったです。稲生氏は奈良女子大の教授だそうですが、先生の授業は超おもしろいだろうな、と思いました。色々のサイレント映画からのフッテージなども流しながらのレクチャーは、新映画理論:映画の中に現れる「手術台」要素に注目せよ!ということ。この理論を聞いてしまったので、自分は今後観る映画内に現れる“手術台”あるいは“手術台類似物件”につい着目してしまうに違いない。古今東西、映画に頻出する“手術台”。それは映画の製作現場*3取り込んでしまっている、自己言及的な振る舞いかもしれない。しかも手術台は垂直ではなく段々寝ていって、床と並行に、横になっていくにつれ、狂っていく、というか、もう映画は大変なことになっていくのだ、とのこと。『蠅男』もシリーズが進むにつれ、転送装置が段々横になっていくんですよ…、そんな奇想天外・新映画理論。あとは「放電」要素にも着目せよ!というのもおもしろかったです。「放電」て視覚効果としてメチャかっこいいものな。…結局両氏のこうしたエキセントリックともいえる映画批評は、硬直化した映画理論について、一度フラットにして違うモノの観方をする自由度を導入することによる映画をたのしむ、というか批評や理論の枠をズラしたりする効果を生もう、というか…そんな感じなのです。お二人の対談集が出るようなので、それもちょっと読みたいなと思いました。そう、カナザワ映画祭で両氏がセレクトした『獣人島』『アルタード・ステーツ』ともに手術台映画なのですよ。
『ティングラー』(1959/アメリカ)監督:ウィリアム・キャッスル  パーセプトゥ上映方式!ギミック上映の極み。今年のカナザワ映画祭のひとつのクライマックス!これも日本初上映という超貴重上映。ヴィンセント・プライスが一人重厚感を放つ今作。ほかの俳優はたいしたことないし、そりゃ全体に安っぽいよ。脚本もご都合。背骨にとりつく人の骨をも砕くというムカデっぽいティングラーはあきらかに作り物。動かす糸も丸見え。しかもそんな恐ろしげなティングラーは悲鳴であっけなく弱っちゃうという。さぁ、映画館にティングラーが現れました、ほら!映写室にしのびこみ、いまみてるスクリーンをティングラーが横切る!!さぁ、みなさん叫んで!のナレーションで館内は絶叫につつまれる!こんな絶叫まみれの映画鑑賞体験はきっと最初で最後!揺れるイスに座れなかったのは残念だったけど(ランダムに揺らす装置がついてたよう)、もうこれだけで十分。ひとり家でDVDで観ても…だけど、こんなギミック上映なら本当に最高だ!


※ショックにより失神者対応のために看護師が…!(ミーハーにもいっしょに写真も撮ってもらいましたがとりあえずセクシー看護師さんたちだけのお姿を)
午後十時の爆音映画祭は『スカーフェイス』『時計じかけのオレンジ』『ファイトクラブ』という最高なラインナップだったのですが、旅の疲れもあるし翌日の予定もあるし、で会場を後にしたのでした。

*1:だからタイトルがハッピー・アイランドなんですね

*2:東大卒の医者だそうで…!

*3:強烈な照明を炊き、対象物=患者=俳優を囲んで皆が何かに必死に取り組んでる様…