2013年に観た映画をすべてふりかえる(前編:1〜30)

昨年観た映画、ふりかえってみます。印象に残った、自分の心に刺さった、そして大好きだと思った順で今日はとりあえず30本。まずどれも甲乙つけがたく大好きな1〜15。
1、毒戦
掛け値なしにおもしろい!アジアン映画祭オープニング上映で観ました。ルイス・クーとスン・ホンレイの存在感と顔芸、大陸のロケーション、いつものトー組俳優たちの安定感、スリリングな銃撃戦やアクションに大満足!観終えてなお興奮、いまも予告を観るだけでわくわくします。映画祭でトー監督の登壇もあって、より印象深い鑑賞体験となったような気がします。

2、GF*BF
こちらもアジアン映画祭にて。台湾のキラキラとした青春映画の切なさ、美しさ、苦さの結晶のようでした。とにかく美しくせつない。グイ・ルンメイがすばらしい。観ながら、観終えてそして今も大好きだと感じています。

3、わたしはロランス
年末にかけこみで観ました。トランスセクシュアルの男性の物語なのだけど、これは特殊な物語ではない。自分を理解してくれる他者=二つに分かたれた魂の片割れを得たと思ったのに、行き違い、思い悩み、しかし激しく互いを求め合うことをを繰り返す生き様が、ロランスという社会的マイノリティで、それだけに強く個を主張せねばならない存在に重なるだけで、ものすごくドラマティックな叙事詩になるという、すごい作品でした。センスの塊り。

4、横道世之介
これも割と長尺なのだけど、この時間がいつまでも続いてほしい、世之介たちのいる世界の時間を自分も共有したいと思わせられました。吉高さんの奇跡的な可愛らしさにヤラれました。なんでもないシーンで後半泣きっぱなしでした。

5、奪命金
再びトー監督。これもびっくりした。こんなにスリリングで面白いものがこの題材で撮れるとは…。ラウ・チンワンが超絶キュートだし、金融業界のえげつない側面、交錯する運命、すばらしいエンターテイメント!観ながら終始ドキドキしてました。

6、ウォールフラワー
学校生活を初日から「あと○日」とカウントダウンするような孤独な少年。彼の孤独を癒すのは、どこか痛みを抱えた友人との出会いだった。人生にポジティブな面を見いだせないながらも、生に意味を見出したい思いでいっぱいの思春期の少年。いびつだし、主人公の在り様のすべてを肯定はできないけれど、そんな矛盾こそがリアルに響く。夜のドライブでの完璧な瞬間の輝きが印象的。ローガン・ラーマン、エズラ・ミラーらキャストの演技もすばらしい。

7、クロニクル
AKIRA』を彷彿とさせる設定で、実写化不可能と思われるあのマンガの映像化がこういうふう形なら可能になるかも、とかPOVのあらたな可能性…など、手法や映像もよかったけれど、なにより傷つきやすいアンドリューの繊細さがデイン・デハーンにより生きたキャラクターとなっていたのに引きつけられました。最後はアンドリューがかわいそうで、かわいそうで。

8、ジャンゴ 繋がれざる者
とにかくクリストフ・ヴァルツに尽きる。シュルツ医師のことを思い出すだけで胸熱。歯の模型ののったあの馬車もいいよね。デカプの熱演もすばらしかった。

9、ばしゃ馬さんとビッグマウス
これも演じるキャストがちゃんと映画内で現実を生きていて、彼らの時間をずっと見守っていたいような気持だった。痛くて切ない、でも夢をあきらめざるを得ない者らへもやさしい眼差しが満ちた映画だった。前半でキャラへの思い入れが積み重ねられたため、後半はなんでもないシーンですらぼろぼろ泣いてしまいました。

10、フライト
これ、思い出すたびじわじわ来る映画で、観た直後よりいまのほうが自分内の評価があがってる。ダメな男がダメなままなんだけど、や、ちょこっとだけ変わる映画。音楽も編集も演技もすばらしい。ダメ人間を演じるデンゼルのノリノリっぷりよ。冷蔵庫の上においたミニボトルを取る瞬間のカットが忘れられない。

11、嘆きのピエタ
怖ろしい映画。クセが強いけど、観たくないけど、観てしまう。うなぎの扱いとか肉体への痛めつけっぷりとか、不快なんだけどそれも必然と思わせられる演出。ラストは昨年みた映画のなかでは一番印象的かも。

12、愛、アムール
ミヒャエル・ハネケの描く愛の物語。静謐さとその中に響く音と円熟したキャストの演技のリアリティ。空間の使い方が絶妙。ベスト鳩映画でもあります。

13、殺人の告白
これはトンデモ展開ながら、ものっすごい面白かったなぁ。韓国エンターテイメント映画の楽しさ成分が詰まってました。今作のカーチェイスシーンは観た人誰でも言及したくなるポイント!

14、マジック・マイク
チャニング・テイタムをようやっと認識し、こいついいヤツ、と自分内評価急上昇となった映画。ダンスシーンもすばらしいしマコノヒーが最後おいしいところかっさらうのもよかったです。最高。

15、もらとりあむタマ子
ダメ人間タマ子の成長しないけど、よーくみるとちょっとだけ成長したのかも映画(『フライト』の感想でも同じことを書いたような…)。タマ子&中学生、そしてお父さんのキャストが最高。映画内のメシが美味そうっていうのもポイント高し!邦画のいいとこがつまってる(セリフのニュアンス、そのキャラ付の機微)

続いて16〜30まだまだ大好き。
16、イノセント・ガーデン
映像美、ミアちゃん、ピアノの連弾シーンのエロティックさ、いいよいいよ、大好き。

17、ゼロ・ダーク・サーティ
この映画、やっぱりいいと思う。緊迫した瞬間の連続。冒頭の拷問シーンは特に忘れがたい。国家が一人の人間を殺すまでの経過を見せつけられる。

18、はじまりのみち
映像がすばらしい。ロケハンを丹念にやったんだろうなぁ。ただただ老いた病身の母を運ぶだけ、という物語がこれほど感動的だとは。加瀬くん、ユースケ、濱田岳の演技もすばらしかったし、木下監督の作品とのコラボレーションっぷりが感動をさらに増す相乗効果がすごかった。

19、ハナ〜奇跡の46日間
ベタのつるべ打ちもここまでやられると参ったとしか。ペ・ドゥナがやっぱり最高。 

20、ライフ・オブ・パイ(3D)
小説でこそなしえたであろう手法をみごとに映像化したアン・リーの手腕。そして映像美。いやぁ、すごかった。ドパルデューもちょこっと出演ながらさすがの存在感。

21、ウィ・アンド・アイ
とある一日のうち数時間のなかに詰め込まれた人間ひとりひとりの包摂するドラマの多様な事ったら。しかもそれが多感な思春期の若者たちならなおさら。そのリアリティやダイナミズムを映し出すあざやかな手法にもやられました。

22、ザ・ウォーター・ウォー
これは拾いものというか、上映画質はまさかのDVDでしたが内容の重厚さに感服。自分の知らない世界をこんなにも鮮烈にみせてくれるのも、映画の効用と強く感じた作品。

23、セデック・バレ〜太陽旗、虹の橋
2本でひとまとまり、ということで。これも自分が全く知らなかった歴史を観られたという意味で大きかった。演技の熱量もすごい。

24、10人の泥棒たち
とにかく飽きずに観られました。わくわくしながらスカッと爽快、あーたのしかった、と素直に思えた作品。アジアのスターたちの共演も楽しかった。

25、3人のアンヌ
ホン・サンス監督作。彼の作品は好き嫌いが分かれそうだけど自分は好きなんですよねぇ。不思議な時間の流れ方、そこに身においてみたい。ライフガード役の彼が素敵です。

26、オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライブ
退屈なんだけど目が離せない、うつらうつらしながら気持ちよくその映画世界に浸りたい、ユーモアたっぷりに気怠いヴァンパイアカップルの生活をのぞき見するような。ものすごいセンスが高い音楽や美術、だけど敷居は高くはない。トム・ヒドルストンティルダ・スウィントンがヴァンパイアにはまり役でした。夜の情景の撮影も大変美しい。

27、恋するリベラーチェ
恋と嫉妬と老いとショウマンシップの映画。メイクやファッションもすばらしい。とりわけマイケル・ダグラスの整形シーンは忘れがたいな。

28、偽りなき者
観るのが怖いような気がしてた映画。観たらやっぱり直視するのもつらくて、でも観てよかったと思う。ラストもとても印象的。人を追い詰めるのは人。やはり人間が一番こわいし、人だけが人を癒せもするんだよね。

29、鑑定士と顔のない依頼人
わりと最近観たので印象があざやかゆえこのあたりに入れたいな。ジェフリー・ラッシュが完璧です。豪華な美術も眼福眼福。切ないなぁ。

30、危険なプロット
フランソワ・オゾン監督。これもさみしい人間がうまくコミュニケートできないゆえに、自分の得意なものをつかって世界にアクセスしようとする物語。作文を通じて教師とコミュニケートするあたり『ウォールフラワー』もちょっと思い起こした。ラストも秀逸。虚実の境界が揺らぐよう語りのスタイルも好みでした。

以上かなり好きな30本でした。とりあえず今日はここまで。続きは次の日記で。