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人生は一度きり 『ウルフ・オブ・ウォールストリート』『ダラス・バイヤーズクラブ』

映画

今年になってから観た映画で印象的な『ウルフ・オブ・ウォールストリート』と『ダラス・バイヤーズクラブ』、ふたつ全然違う内容だけど、観た後、強烈に感じた印象は共通していて、それは「人生は一度きり」ということ。
『ウルフ・オブ・ウォールウトリート』は株売買のグレー(というか思いっきりクロか)な領域で、ハデに金儲けして、享楽の限りを尽くし、ついには友人・仲間まで売って自分だけを守り抜き、生き抜く、というまったくもって最低な奴=ジョーダン・ベルフォートの物語。モラルなんてまったく気にしない。最低かつ最悪かつドラッグでヘロヘロだけど、人は彼の話術に取り込まれ、ノセられ、アッパーになって、彼に心酔し、仲間は彼をかばってみたりもしたあげく、彼に売られる。デカプ演じるベルフォートはよく知っている、分かっている――この俺様=ベルフォートが自分の人生の主役でいられる、この最高のライフは一度きり!ってこと。だから彼は利用できるものは利用し、享楽の限りをつくし、楽しみ、ヤバくなっても何をしてでも絶対に生き抜く。騙される周囲がバカなんだ。彼は利己的な生を生きる。自分が大切。自分がこの生の/この世界の王様。周囲はそれにかしずき、自分に尽くすべき存在なんだ。この利己的で自分勝手で最低で、どこかしら胡散臭いのに周囲を巻き込んでしまうある種のカリスマ性をまとった役を演じきったデカプは本当に素晴らしく、お腹いっぱい大満足!スコセッシの演出や音楽も最高で、間違いなく自分の今年のベスト級に入ってくるな、と思った。
ダラス・バイヤーズクラブ』は、先のこととか考えずとも、人生その場その場で楽しんでいけばいいじゃん、と刹那に生きてきたカウボーイが自分の病を知り、生命には「限りがある」ってことを知った瞬間から、「限りある命を生きぬく」ことを意識し、自分の人生をきっちり全うしようと病と対峙することが、「他者」とつながり始める契機となる、という物語。病を背負わされたのはマコノヒー演じるロン。病との闘いは孤独だ。病による身体的/精神的苦痛は自分ひとりで引き受けざるをえない。しかし、エイズという病を通じて彼はそれまで知らなかった、知ろうともしなかった世界の人々を知る契機になるわけで、それはロンが病に屈服するのではなく、あがいてもがいて病と対峙する覚悟を決めたからこそ得られた機会。ジャレッド・レト*1が演じたゲイの人々の世界など、偏見や差別意識しかなかった彼ら一人一人の人生を知ることで、ロンは、月並みな言い方だけど人間的に深みを増すんだよね。マコノヒーの演技の凄味、レトの体・表情の説得力に茫然とする。とくに序盤からの演技や物語の積み重ねがあったうえで、最後の最後に見せられるレトのガリガリに痩せた身体の存在感に圧倒されてしまった。マコノヒーが途中の薬品買付けのため日本に来るくだりの合成感はすごかったけど、ま、それも愛嬌。こうやって絶対にあきらめないで生き抜く壮絶な在り様に感じ入った作品で、これも間違いなく自分の今年のベスト級だなと思った。
この2本、全然違うベクトルだけど共に大好きだ。「人生は一度きり」ということを、こうも違って描いて観る者を夢中にさせるとは、このバラエティがたまらぬね、映画は。

*1:今作の演技は本当に素晴らしい!