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若くなくなるということ『フランシス・ハ』

日々の生活で時間は経っていき、映画感想もなかなか文章にできずそのままに現在にいたっていて。とりあえず忘れないうちに観たばかりの映画の感想を。
映画タイトルを見た瞬間、不思議なそのタイトルにインパクトがあったのでずっと気にかかっていた『フランシス・ハ』は例のごとく東京から遅れての公開ということで、大阪での公開初週に観に行きました。中途半端女子(アラサー)の若くなくなりつつあることについてのもがき/あがきとみっともないジタバタからの、そんな自分を認め、オトナになる、的お話かとぼんやりイメージしつつのぞみました。画面は白黒、NYが舞台で、途中パリにも(後先考えず弾丸勢いツアーで)行ったりするし、ボウイの『モダン・ラブ』がかかって疾走するというカラックスなシークエンスもあって、オシャレ映画であるのは間違いなく。『IN RED』の後ろのほうのモノクロのカルチャー的ページの今月おすすめ映画コーナーで取り上げられるのがぴったりはまりそう*1。さて、観てからの印象は、画面を埋め尽くす景色や部屋の感じもおしゃれだしお話も一見ハッピーエンド。でもこれは痛い、痛いとこ突く、だから単純なオシャレ映画に終わってない、そこがいい、そこが自分は好きだと思った。
若い頃“若さ”はそれだけで価値があると思ってた。そしてそれは永遠とはいわずとも、“自分のばあい”は結構長く続くと思ってた。自由も友人との気ままな暮らしも夢を自分のキャリアにしたいと思うことも、若さの特権。歳をとったおじさんおばんさんたちと自分は違う。自分のほうが優れてるし、体力もあるし、最新の知識などにも知見があるんだ、って思えることは若さの特権。でもなー、当たり前だけど歳は平等に取るのな。たとえば交通事故のニュースなど見ても「でも自分は事故にはあわない、大丈夫」と思う。あらゆる災厄から自分は除かれてるような気分。自分は自分にとって特別だし、自分の人生の主人公だからな、あたりまえだけど「自分が主役の映画=人生なんだから自分はジョン・マクレーン*2ばりにサバイブできるんだ」と思わなきゃやってられん。でも、ふと気づくと高校球児より全然年上で、コンビニのレジでも「あの人20代後半か30代だな」と客層分析でレジに打ち込まれてたりね。自分はまだ全然若いつもりで服もアクセサリーも同じもの着け続けてるんだけど、相貌的には、取った歳の分だけ変化が生じてるんだよ、ということに気付けないし、認められないのな。認めたくない、じゃなくて、あくまで認められないだけ。だって肉体的には歳をとっても、精神的にはかわってない(つもり)なんだものな。フランシスも映画の中で、「あなたって、ソフィー(フランシスの親友で同い年)より外見的には歳上みたいなのに、なんだか中身はそうじゃないみたい」と言われてて、これってまさにそういうことかと。
フランシスはダンサーと名乗りつつ、現実にはモダンダンスのカンパニーの正規のメンバーではない*3時点で、もう27歳なのに大丈夫?…と客観的には思われるのに、「や、自分は大成するのに時間がかかるタイプかも」と本人は真剣に信じているのだと思うよ(だって自分は自分という人生の主役だもの、特別ななにかがあるはず)。でも、もう彼女は若くなくなりつつある。それだけで価値があると思ってた“若さ”という特権を失いつつある。それを、親友の変化(フランシスとのルームシェアより自分の住みたい部屋の空きができたのを優先してフランシスを残して転居することや、恋人と結婚することを選択するところ。友達より家庭を優先なんて、まるで親みたいな価値観!なんだろうな、フランシスにとっては)や、カンパニーからのダンサーとしては無理だよ宣告で、否応なしにオトナにならざるをえなくなっていくのな。それは若さゆえの向こう見ずや不遜さを失ってしまうことを意味してる。自分にはダンサーより向いてるかもしれないコレオグラフィーでがんばるとか、親友との絆を取り戻すとか、ハッピーエンド風だけど、歳をとって、夢をあきらめて現実を受け入れざるを得なくなった、と捉えれば結構苦い結末かも。でも、歳をとって変わりゆく自分を受け入れることができるようになっていける、という意味で、自分を含めた周辺全体への視野が広がり、人生が豊かになる契機、かもしれないということなんだよな。とそんなふうに捉えれば、やはりこれはある意味、次へと開かれた終わり方だよね。あいかわらずちょっと不器用なんだけど、フランシスがちゃんと自分で自分の住むための部屋を借り、郵便受けに不器用なりに自分の名札を入れるラストはそういうふうに思えたな。自分も歳を重ねてきて思うに、歳をとるっていいことたくさんあると思う。若かった頃の自分にそんなこと言っても、意味わかんないだろうけどね、うん、まぁそういうもんだろうな。
『フランシス・ハ』
http://francesha-movie.net/index.html

*1:実際取り上げられたかどうかは知らない

*2:ダイ・ハード

*3:練習生なのだ