歌の力ってすごいなマジで、そしてタオルは清潔な方がいいね『ジャージー・ボーイズ』

アホみたいな感想ですが、本当にそう思った。「歌の力ってすごいな!」。これに尽きる。
元が舞台だから、そのライブ感を大事にしつつ、きちんと映画にしてる。演劇のいいとこと映画のいいとこをミックスアップしてる。それはイーストウッドが音楽好きである、ということも寄与しているだろうし、舞台の主要キャストを映画にも起用したということがいい相乗効果をもたらした感じ。
キャストは歌がうまい人たち、っていうのは分かってる。でも、その飛び切りの声も曲あってこそ、生きるわけで。だから『Short Shorts』を作曲したボブ・ゴーディオが加入することが決まるとき。

ジョー・ペシに連れてこられたボブがフランキーら3人の前でオリジナル曲をピアノで弾きはじめると、フランキーも加わり、次第に声が増えていき、重なっていき、ついには4人の完璧なハーモニーが一つの曲を奏でる瞬間の奇跡にゾクゾクしてしまう。

同じ奇跡は『シェリー』

を電話口で歌いだす瞬間も、また、TVで映画(ドラマ?)を観ているときにトミーがふと発したフレーズからボブが発想を得た曲『Big Girls Don't Cry』

が流れ出す瞬間、etc...etc劇中にちりばめられている。その極みは、人生の厳しさ、そしてこれ以上ない苦難を乗り越えてフランキーが歌いだす『君の瞳に恋してる』だな。

否応なしに胸が熱くなる瞬間。これは歌の力の大きさ、そして確かな演出力の賜物でしょう。
いいテンポでざっくり時間もジャンプしてさくさく進み、かつ、まったくもって良い按配で曲が配置され、2時間超の上映時間もあっという間。お金にルーズで借金まみれのリーダーのトミーがホテルのタオルを不潔に使い倒すエピソードが印象的で。ホテルのタオルを鼻をかんだりするのに他人の分まで使う。それで、タオルが無くて困るといえば、その辺に自分が使い捨ててあるのをあるのを使えという、そういう不潔さが耐え難いんだ!ってずっとトミーとホテルで同室だったメンバーがキレて「グループを抜ける!」ってシーンは、そんなささいなことで辞めるって、というのと、いや、そういう一見ささいなことって積もり積もると耐え難いし、そういう点が気になるか気を遣えるか、って人間性の決定的な違いを認識するレベルで重要なポイントだよな!と分かる感じがしておかしいやら、哀れやら、なんともおもしろかったな。や、このタオルのエピソードは重要だよ、うん。こういうところ抜からずに、かつ、ガチガチじゃなくて俳優を信じて自由にやらせているイーストウッドの余裕のある演出がすばらしい。そりゃあ役者もノって演技ができるよなぁ、と。
ジョー・ペシのエピソードも知らない自分には意外だし、おもしろかったな。イタリア系移民のジャージー・スタイルは『ゴッド・ファーザー』みたいな世界と通じてるなぁ、と思ったり(シビアなマフィアの抗争は描かれてないけど、ファミリー感を大切にするところとかね。あんなリーダーでも見捨てないものなぁ)。そして幸福感いっぱいのエンドクレジット!ここ最近観たもののなかでは突出してすばらしいな。クリストファー・ウォーケンのダンスもちょこっと観られて最高でした。イーストウッド作品はやっぱ、見逃せないなあ。

『ジャージー・ボーイズ』
http://wwws.warnerbros.co.jp/jerseyboys/