立ち上がれ、猿『猿の惑星 創世記』

旧シリーズは超有名な第1作目しか観たことはなかったのですが、特に予習もせず観に行きました『Rise of the Planet of the Apes』こと『猿の惑星 創世記』(やっぱり原題のがかっこいいな)。どうして『猿の惑星』状態になってしまったのか、というその起源を描くこの物語。観客はどういうゴールに向かうかは分かってますし、シーザーが出てきた瞬間から彼が猿軍団のリーダー的な存在になるんだろうな、と分かってしまう。や、だからこそ、如何にして猿が人間より勝った存在となり、地球を制覇するのか?というストーリーの“如何にして”の部分の描写に全力を傾注することができるのだな。あらすじ部分は観る側にも大体共有されている予備知識があるから、スタートラインで既にある種のアドバンテージもらってるわけで。その利点を生かして脚本を練り上げてあったし、映像的にもかなりすごいクオリティの作品になってましたね。
・赤ちゃんのシーザーが超かわいい  かわいいのです。映画を観ながら口パクで「かわいい…」と何度もつぶやく。そう、CGは期待どおりのすばらしいクオリティ。赤ちゃんのシーザーは当然かわいいのですが、幼いこどものやんちゃシーザーも大層かわいいし、育ちきったシーザー、事件を起こしシーザーが収監(?)された先にいた多様な猿たちの描きこみもすばらしく、まさにそこに実在しているかのように見えますわな。特に気に入ったのは口。シーザーの口がアヒル口みたいに開いてるのがかわいいのだ…そこらの女子たちのアヒル口なんか上回っちゃうんじゃ…?
・自由への意志  元々賢いシーザーは、収容先にいた同じくちょっと賢い猿と手話で会話します。そこで、まずはstupid monkiesたちを自分のレベルに引き上げる、そのためには自分がリーダーの座に就かねばならぬ、ということになる。うむむ、組織論、リーダー論の原型がここにある!まさかの毛利元就理論に思わず声が漏れること必至。下手なビジネス書読むより参考になるやもしれませぬよ!さて、元飼い主(ウィル:ジェームズ・フランコ)宅へ行き更なる賢さを得るクスリをゲット。更に賢くなったシーザーは、人間に虐げられ、鬱屈した思いが蓄積し、臨界点に達してそのリミッターが外れた瞬間叫ぶ。シーザーの“Nooooooo!!!”という雄たけびには虚を衝かれて胸に響きました。抑圧をはねのけ、自由意志に基づき生きるんだ、という宣言。それ以降は猿の身体能力の高さに人間の知恵(それも通常より増し増しの)がつくと最強、というのが描かれます。すっくと立ち上がり斜めをむいてジロリ、と見つめるシーザーのまなざしよ。猿にも立たねばならぬときがある。負けるかもしれない闘いであろうとも、自分の精神を縛り付ける鎖から解放するためには、全力を尽くす!という決意。うぅ、あの目には映画の中の人類は負けてるよ、よって人類は負けてしまうのは(今作において)当然の理なのです。
・蜂起した猿たち  シーザーは命を殺めることは避けてきたけれど、真の自由を得るために人間を殺めてしまう。これは一つの通過ポイントで、自分たちの解放のためにはそのジャマをする人間は殺さざるを得ないときは殺す、しかし“猿は猿を殺さない”という原則がここに確立してるような。ここからは圧倒的な画づくりのうまさに見入ってました。猿たちが集団脱走し、動物園などの“人間に飼い慣らされた猿:仲間たち”を解放していく。街の中を駆け抜け、樹から樹へ渡っていく彼らの美しい力強さ。あと、動物園の檻の柵を引きちぎって、槍のように持ち、また、大破した車のパーツを楯のように構えている彼らをみて、ぼんやりと『300』を思い出してた*1。少数で蜂起してマジョリティに挑む…飛び道具なしの古典的戦闘スタイルのかっこよさ*2と、仲間を大事にし“お前の死、ムダにはしねぇ”*3という精神といい、スパルタの戦士がぼんやりと重なる(ただし結果は違うけれどね)。
・丁寧すぎるぞ伏線  人類を滅ぼすことになるウィルスの爆発的な伝染の伏線が、映画の前半からきちんとすこしずつ布石されているのです。なるほど、これは、と思わず膝を打ちました。エンドロールも丁寧な仕事でしたね。あと時折挟まれるニュース映像や新聞の見出しなどにも旧シリーズへの目配せがあったような。
・人間だってよかったよ  ジェームズ・フランコもよかったけど、彼の父を演じるジョン・リスゴーがよかったな。病が進んでいるところ、クスリが効いているところのコントラストもだけど、クスリが効く前に、意識がきちんとしているかと思えば、病が顔を出すときもあり、という不安定な状態をうまく演じてるなぁ、と思いました。息子やシーザーへの愛情の心をあらわすやさしさ演技にしんみりしました。そりゃ、あの父のためになら息子もリスクを承知でムチャして新薬を作ろうとするよな・・・という説得力。
泣きはしなかったけど、とにかくエキサイティングで時間も忘れて画面に集中できるというよい映画でした。いろんな猿の表情や動きを見るだけでも楽しい。ジェームズ・フランコフリーダ・ピントーはいかにも美男美女カップルすぎたけど(本当に本当にフリーダさんは美しすぎる)、それはかっこよくて賢くてしかも強いシーザーに対して人類だってこんなステキカップルいるんだから!と対をなすために最後の砦なのかもね。それに対してサイテー人類代表のマルフォイことトム・フェルトンもすばらしい悪役っぷりでございました。あいつならシーザーに殺られてもしようがないや…

猿の惑星 創世記』(2011/アメリカ) 監督:ルパート・ワイアット 出演:ジェームズ:フランコアンディ・サーキス(シーザー)、フリーダ・ピントー、ジョン・リスゴーブライアン・コックストム・フェルトン
http://www.foxmovies.jp/saruwaku/#
http://movie.goo.ne.jp/contents/movies/MOVCSTD18592/

《おまけ》『猿の惑星 創世記』鑑賞後に待っていたものは…
くわしくはこちらへ、という感じですが、この映画を観るのがゼロ次会、ということで、映画好きの集う会が引き続き開催されたのに行ってきました。とにかく人が多くてわぁわぁなってました。わぁわぁという中で、フト「あれ、自分なんでここにおるねん」と我に返るような瞬間があったりもした…。世代もいろいろの人がいてそれは本当にいいよな、と思いましたよ。収拾をつけるとか隈なく全員とお知り合いに、とか、全員の名前覚える、とかはムリなサイズ感になっていましたが、ムリせず流れでやればいいのかな。まぁ、みんなもう大人だしな。大人最高じゃ。

*1:CG全開というところも共通してるからかな

*2:騎馬シーンも!

*3:と、心の声が聞こえたような気がした